2012 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮の予防・治療法の新規標的分子となるmicroRNAの同定
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24700772
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Research Institution | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
Principal Investigator |
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | microRNA / 骨格筋 / 筋萎縮 |
Research Abstract |
骨格筋の萎縮は老化や疾患など様々な原因で引き起こされ、高齢者・患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる。筋萎縮に対する新たな予防、治療法の開発には新たな標的分子の同定が重要である。本研究は、筋萎縮の新規標的分子となるmicroRNAの探索を目的としている。 筋細胞におけるmicroRNAの機能解析:筋萎縮の培養細胞モデルにおいて発現が増加するmicroRNA(miR-X)と筋萎縮の関係を明らかにするために、miR-Xの阻害剤を用いて機能解析を行った。培養細胞にmiR-Xの阻害剤を処理するとmiR-Xの発現がおよそ20 %まで低下することが分かった。また、筋萎縮関連遺伝子であるAtrogin-1の発現が若干低下することを見出した。このことから、miR-Xは筋萎縮によって発現誘導されるAtrogin-1の発現制御に関与している可能性が考えられた。今後、さらに表現型への影響を調べることによって筋萎縮との関係を明らかにし、新規標的分子としての可能性を検証する。 筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析:実験動物の筋萎縮モデルにおいて発現変動が認められるmicroRNAは、筋萎縮の標的分子になる可能性がより高いものと考えられる。そこで、マイクロアレイを用いて老齢ラットおよび若齢ラット骨格筋(長指伸筋、ヒラメ筋)のmicroRNAの発現を網羅的に調べた。その結果、老齢ラットの長指伸筋とヒラメ筋において発現増加が認められるmicroRNAをそれぞれ8種類、3種類同定した。また、発現低下が認められるものをそれぞれ1種類同定した。今後、これらmicroRNAの発現を定量RT-PCR実験で検証した後、培養細胞を用いて機能解析を行い、筋萎縮における役割を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画では、「筋細胞におけるmicroRNAの機能解析」と「筋萎縮関連microRNA のターゲット遺伝子の同定」を実施する予定であった。 筋細胞におけるmicroRNAの機能解析:培養細胞の筋萎縮モデルおいて発現が増加するmiR-Xの機能解析を実施し、miR-Xが筋萎縮によって誘導されるAtrogin-1の発現制御に関与している可能性を見出すことができた。筋細胞の形態的変化や筋タンパク分解に関する解析は現在実施している。 筋萎縮関連microRNA のターゲット遺伝子の同定:「筋細胞におけるmicroRNAの機能解析」および、平成25年度に計画していた「筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析」を優先的に実施するために、ターゲット遺伝子の同定に関する研究は延期した。 筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析:当初の予定では、平成25年度に実施する予定であったが、優先的に実験を行うことにした。また、定量RT-PCR実験で限られた数のmicroRNAについて発現解析を実施する予定であったが、マイクロアレイによる網羅的発現解析を実施した。その結果、老齢ラット骨格筋において発現が変動しているmicroRNAを複数同定することができた。 以上のように、研究の延期・前倒しなど計画に変更はあったが、全体的にはおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、「筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析」、「筋細胞におけるmicroRNAの機能解析」、「ターゲット遺伝子の同定」の3つについて研究を実施する。 筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析:昨年度の研究成果により、筋萎縮が認められる老齢ラットの骨格筋で発現が変動しているmicroRNAをマイクロアレイ解析によって同定することができた。今後、これらの発現変動を定量RT-PCR実験によって検証し、筋萎縮に関係する可能性があるmicroRNAを選抜する。その後、培養細胞での機能解析とターゲット遺伝子の同定へと進展させる。 筋細胞におけるmicroRNAの機能解析:筋萎縮関連遺伝子Atrogin-1の発現制御に関与している可能性が考えられるmiR-Xの機能解析を引き続き実施する。具体的に、C2C12細胞にmiR-Xの前駆体または阻害剤を導入し、筋細胞の形態的変化や筋タンパクレベルを、蛍光免疫染色法およびWestern blot法を用いて調べる。また、定量RT-PCR実験によって老齢ラット骨格筋での発現変化が認められたmicroRNAについても同様の解析を実施し、その機能を明らかにする。 ターゲット遺伝子の同定:筋萎縮との関連が認められたmicroRNAについては、そのターゲット遺伝子の同定を試みる。過去の報告や標的遺伝子予測アルゴリズムを元に、ターゲット遺伝子の候補を選抜し、筋萎縮モデルにおけるタンパクレベルを調べることによってターゲット遺伝子としての可能性を検証する。 以上の方策のもと、引き続き研究を推進させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施を予定していた「筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析」を優先的に行うために、研究実施計画を変更した。それによって生じた平成24年度未使用の助成金については、平成25年度に実施する「ターゲット遺伝子の同定」に必要な物品購入費として使用する予定である。 筋萎縮の動物モデルにおけるmicroRNA発現解析:マイクロアレイ解析で発現変化が認められたmicroRNAの定量RT-PCR実験を行う予定である。それに必要な試薬・キット類の購入費用として約600,000円を使用する予定である。 筋細胞におけるmicroRNAの機能解析: 培養細胞を用いてmicroRNAの機能解析を実施する予定である。それに必要な細胞培養製品、miRNAの前駆体および阻害剤、その他解析に必要な試薬・キット類の購入費用として約700,000円を使用する予定である。 ターゲット遺伝子の同定:筋萎縮との関係が認められたmicroRNAについては、その標的遺伝子の同定を行う予定である。タンパク発現解析、ルシフェラーゼレポーターアッセイに必要な試薬・キットなどの購入費用として約640,000円使用する予定である。 また、本研究の成果を発表する学会の旅費として約100,000円を使用する予定である。 以上の通り、平成25年度請求の1,400,000円と平成24年度未使用の約640,000円を有効に使用し、本研究を実施する予定である。
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