2012 Fiscal Year Research-status Report
超音波画像解析による高齢者の大腿四頭筋の形態的特徴の分類と新たな筋評価指標の開発
Project/Area Number |
24700774
|
Research Institution | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
Principal Investigator |
河合 恒 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 技術員 (50339727)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 加齢・老化 / 介護予防 |
Research Abstract |
本研究では、超音波画像計測によって得ることができる筋厚(筋量)や筋の繊維化の状態(筋の質)の情報によって、高齢者の介護予防やサルコペニアの評価に用いることのできる、新たな筋機能評価指標を検討することを目的としている。このために、平成24年度は、1) 地域在住高齢者の大腿前面の超音波画像データの収集、2) 超音波画像から大腿前面筋厚(大腿筋厚)、筋の線維化の状態を表す筋エコー強度(大腿EI)の測定、3) 大腿筋厚や大腿EIなどの指標と運動器リスクとの関係の横断的な検討などを行った。 1) 超音波画像データの収集:超音波画像データは、前年度に実施した包括的な生活機能検査「お達者健診2011」受診者の超音波画像とした。受診者は、東京都板橋区のうちの9地区に在住する65歳~84歳の男女全員に対して案内状を発送して募集し、分析対象者は913名の健診受診者のうち研究へのデータ使用に同意した898名であった(ベースライン調査)。平成24年度は、これらの対象について、追跡のための健診(追跡調査)を実施し、基本チェックリストを聴取した。追跡調査は追跡対象者のうち516名が受診した。 2) 大腿筋厚、大腿EIの測定:大腿筋厚は、超音波画像から測定者が皮下脂肪、筋膜、大腿骨を同定して筋厚を測定した。大腿EIは、超音波画像を画像解析ソフトウェア(Adobe Photoshop Element 7.0)のグレースケール画像解析のヒストグラム機能を用い、大腿四頭筋部の平均輝度を大腿EIとして測定した。 3) 大腿筋厚、大腿EIと運動器リスクとの関係の横断的な検討:大腿EIが高いほど運動器リスクの発生率が有意に高く、大腿EIが最も高い区分の者では、最も低い区分の者に比べて2.5倍、運動器リスク発生の確率が高くなることが示され、大腿EIは運動器リスクの予測に有用である可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、地域在住高齢者の大規模集団における超音波画像データを収集することが必要であるが、所属研究機関の長期縦断研究プロジェクトと連携して、既に約900名のベースラインデータを収集することができている。また、大腿筋厚、大腿EIともに画像データをもとにそれぞれの指標を測定する必要があるが、既にこれらの測定も完了している。したがって、既にこれらの超音波画像によって得られる指標と、運動器リスクなどの他の指標との横断的な関係の分析に一部着手することができている。 しかし、平成24年度は超音波画像からの各指標の測定や、追跡調査の実施のため、研究計画立案時に予定していた皮下脂肪、筋厚、線維化の状態によるパターン分類の視点での解析や、その他のアウトカム指標との横断的な関係の解析を十分行うことができなかった。 また、追跡調査による追跡率は898名中516名(57.5%)と、縦断的な分析によってスクリーニングや診断のためのカットオフ値や、感度や特異度を男女別に求めることができるほどのデータを収集することができていない。追跡調査を予備的に行うことができたことは成果でもあったが、追跡率を高めることが平成25年度へ向けた課題と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
ベースライン時の大腿筋厚や大腿EIが、将来的な運動器リスクの予測にどのくらい寄与するか検討することが必要であり、縦断的な分析結果を踏まえて、男女別のカットオフ値や、感度や特異度を求めて、実用的な指標として提案することが今後の目標である。このために、平成25年度は引き続き追跡調査を実施し、新規の運動器リスク発生などのアウトカム指標を収集する。 平成24年度における追跡率が低かったことの理由として、追跡期間が1年と短かったこと、ベースライン時の調査項目が膨大で、受診者が負担と感じたことなどが考えられる。そこで、調査項目の精査や、案内時にそれを明記する、2年目未受診者に対して特別に案内状を送付するなどの工夫を行い、追跡率を高める。 また、大腿EIの解析にあたっては、解析を自動化するコンピュータプログラムを作成し、解析の効率化を図る。これにより、現在の平均輝度以外の筋の繊維化の状態を表すパラメータにも注目することができ、他の指標との関係の解析をより詳細に行うことができる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追跡調査を行うための測定補助、大腿EI解析の自動化のためのプログラミング作成補助、統計分析用データセット作成補助のために人件費を使う。 追跡調査の追跡率を高めるために、案内状や結果フィードバック資料を作成、印刷するため、印刷費を使う。 大腿EI解析の自動化のためのプログラミングソフトウェア、コンピュータ消耗品の購入に消耗品費を使い、このシステム実装のためのノート型パーソナルコンピュータをの購入のため設備備品費を使う。 成果を国内外の学会や学術誌へ公表するために、旅費、印刷費を使用する。
|
Research Products
(2 results)