2012 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪肝発症におけるPEX11alpha遺伝子の機能解析
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24700776
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
翁 華春 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (80598053)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / 脂肪酸酸化 / 脂質蓄積 / 非アルコール性脂肪肝 |
Research Abstract |
Pex11a欠損(KO)マウスは肥満や脂肪肝になりやすいことを予備実験で確認した。そこで、この発症におけるペルオキシソームの脂肪酸代謝及び増殖能におけるPex11a遺伝子の役割を明らかにし、非アルコール性脂肪肝の治療ターゲットとしてのペルオキシソームの可能性を分子レベルで探索することを目的とし、以下の検討を行った。 1.Pex11aKOマウスの肥満や脂肪肝の発症:5週齢の野生型(WT)とKOマウスに普通食と高脂肪食を12週間与えたところ、KOマウスの体重はWTマウスより高いことが分かった。Oil Red O染色及び生化学的手法で調べた、KOマウスの肝臓の中性脂肪量は、WTマウスより高かった。また、KOマウスの肝臓トリグリセリドの排出能はWTマウスより低かった。2. インスリン抵抗性:8週齢のWTとKOマウスを18時間絶食後、グルコースを腹腔内に投与し、血糖値を測定した。インスリン抵抗性には差が認められなかった。また、絶食後の血糖値の差も認められなかった。3.ペルオキシソーム増殖能:ペルオキシソームの表面タンパク質(PMP70)及び内在性タンパク質(Catalase)抗体を用いて肝臓のペルオキシソームを免疫染色し、ペルオキシソームの数や形状を評価した。KOマウスのペルオキシソーム数はWTマウスより少なかった。また、KOマウスでは、小さくて真丸いペルオキシソームがWTマウスより多いことが分かった。4.ペルオキシソームの脂肪酸代謝関連遺伝子の解析:KOマウスのペルオキシソームのAbcd2とAcot3のmRNAの発現量がWTマウスより低かった。 以上の結果から、Pex11a欠損により、ペルオキシソーム増殖能及び脂肪酸代謝関連遺伝子の発現が低下し、脂肪酸代謝能の低下によって肝臓に中性脂肪が蓄積しやすくなると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・Pex11aKOマウスは肥満や脂肪肝になりやすいことが再確認できた。 ・肝臓のペルオキシソームの免疫染色は、4%ホルマリンで固定切片では鮮明に染色することができなかったが、4%ホルマリンの代わりにブアン固定液を用いることにより染色可能となった。 ・共焦点顕微鏡及び免疫電子顕微鏡を用いることによってペルオキシソームの数と形状を正確に評価できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
・ペルオキシソームの脂肪酸代謝関連酵素を測定したが、有意差が認められなかった。この原因となる可能性の一つは、KOマウスのペルオキシソームの脂肪酸代謝関連酵素が細胞質に大量に存在するが、うまくペルオキシソーム内に取り込まれなかったのかどうか調べることが今後の課題である。実験では、肝臓からペルオキシソームを分離し、ペルオキシソーム内の脂肪酸代謝関連酵素を測定する予定である。 ・日本には非アルコール性脂肪肝疾患は推定1000万人以上いるとされ、効果的な治療法の開発は急務である。Pex11aをターゲットとして非アルコール性脂肪肝の候補治療薬を見出すことが次年度の目標である。ペルオキシソーム生成促進物質にはフィブレート系薬物と酪酸が存在するが、前者の腎臓に対する有効性は、ラットでは確認されたが、ヒトでは効果が弱いということが明らかになっている。従って、本研究では後者の酪酸またはそのプロドラッグのトリブチリンを用いて検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
端数として生じた残額と合わせ、次年度の研究費として使用する。 動物、抗体、試薬などの購入費は60万程度となる。研究成果を国内外に広く発信するため、2013年のイギリス・バミンガームに開催する予定の国際生理学会及び日本分子生物学会へ参加する費用は約40万である。その他は20万程度となる。
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