2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700780
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku Seikatsu Bunka College |
Principal Investigator |
川又 勝子 東北生活文化大学, 家政学部, 講師 (50347910)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 型染め / 染型紙 / 工芸染色 / デジタル化処理 |
Research Abstract |
明治期から昭和40年代にかけて栄えた仙台地方の染色特産品に常盤紺形染と、当時の大量染色法で染められた浴衣・手拭がある。これら仙台地方に特徴的な型染めについて調査を行い、染色に用いられた型紙の整理と電子保存を行うとともに、資料のデータベース化と型紙や染物の復刻再生を目的とした。 平成24年度は、名取屋染工場(仙台市青葉区)が所蔵する型紙のうち、第4~5型入れ箱の型紙254枚について計測と保存状態等の調査を試み、そのうち221枚の型紙については、フェイスアップスキャナを用いて文様の電子的保存を行った。電子化した型紙文様のうち、破損・欠損箇所のある型紙については、フォトレタッチソフトを用いて電子的文様補修を試みた。一方で、破損・欠損の程度が高くスキャンできなかった33枚の型紙については、型紙そのものの補修が不可欠であった。亀裂が見られる型紙については裏面からの補強を試みたが、概ね良好な結果が得られた。また、クリンプの激しい物については加湿と加圧を施したが、非効率であったために化学処理を施すために、和紙や渋紙に対しての予備実験を行った。 一方で、電子保存した型紙文様の活用法についても検討した。本年度は、大型インクジェットプリンタを用いて型地紙に出力した文様を手彫りすることで、注染型紙と常盤紺型とを作成した。なお、常盤紺型は著しく破損していたため、加湿した後に加圧することで型紙を平板化し、部分的に裏打ち補強を試みた後に文様の電子保存と電子的文様補修を行った。 さらに、型紙データベースの続刊である『仙台型染資料集VII』(全93頁、資料掲載数221枚)を印刷製本する事ができた。仙台地方の注染型染めの特徴である、漁業関連の名入れ文様に割付文様を組み合わせた浴衣型紙が多数見られるなど、仙台地方の染色業における地域性が示されたが、手拭染色に用いられた型紙は15%程度と僅かであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
注染型紙文様の調査と電子保存については、概ね計画通りに進められた。フェイスアップスキャナを導入したことで、効率のよいスキャニングと画像加工が可能になったためと思われる。また、型紙データベース・資料集作成も行うことができた。一方で、今後調査と電子保存を予定している資料の中には、破損が著しい型紙があり、電子保存を完了させるまでに時間を要することが予測される。これら破損型紙の効率的な補修方法について、今後も引き続き検討を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き、注染型紙文様の電子保存を試みる。現在調査と電子保存を行っている注染型紙は、劣化している物が約半数を占めている。今後、さらなる劣化が想定されるため、できるだけ早い段階で型紙文様の電子保存を完了させることを当面の第一目標とする。昨年度新たにフェイスアップスキャナを導入したことで、型紙文様を効率的に収録する事が可能となった。しかし、スキャン画像のデータ容量が増したために、現在使用しているパソコン(平成18年度及び平成21年度科学研究費補助金にて購入)では、スキャニング・画像加工ともに処理能力が低下しており、支障をきたすこともある。そのために、今後はハイスペックパソコン機材の導入について検討したい。 一方で、破損度合いの大きい型紙については、スキャニング前に型紙そのものの補修を試みる。加湿・加圧による平板化の他、クリンプや折れ曲がりの著しい型紙については、現在も検討している化学的な平板化方法の実用化を目指す。 さらに、常盤紺形染に関する資料についても、未調査の資料があるため、調査と資料補修、型紙文様の電子保存や電子データの活用についても検討する。 これら仙台地方に特有な型染め資料についての調査結果と、収録した型紙文様や関連資料について、データベース化と資料集作成については今年度も継続する。 また近年、地域文化や地場産業の振興も求められ、小学校から高等学校までの学校教育においても、学習者の身近な地域が授業に取り上げられたり、日本の伝統文化について学ぶ項目が設けられたりしている。そこで、仙台地方の型染めを取り上げることで地域の服飾文化について学ぶことができる学習教材の開発についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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