2012 Fiscal Year Research-status Report
関節トルクによる寝返り動作の解析とその応用に関する研究
Project/Area Number |
24700786
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
堀場 洋輔 信州大学, 繊維学部, 助教 (00345761)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 寝心地 / 寝返り / 回旋トルク / 寝具 / 快適性 / 睡眠 |
Research Abstract |
現在,寝具設計あるいは介護分野において,寝返りのしやすさに関する研究が進められている.その中で,骨盤の回旋が寝返りのしやすさを最も左右する要因との報告がある.したがって,骨盤回旋のしやすい寝具を設計することは,寝心地を向上させる上で非常に重要と考えられる.しかし,骨盤回旋のしやすさを定量的に評価する方法は確立されておらず,また感性評価の代表的手法である官能検査も睡眠中であるため実施することは難しい. 寝返りに影響する寝具の特性として,寝具の柔らかさ,寝具と着衣の間の摩擦が考えられる.そこで本研究では,柔らかさの異なる寝具および寝具との間の摩擦状態が異なる衣服において,それぞれ寝返りにおける官能検査と骨盤回旋のための回転トルクを計測することにより,寝返りのしやすさと回旋トルクの関係,及び寝返りをしやすい寝具の諸条件を明らかにする. 24年度は主に,2つの実験を行なった.1つ目は柔らかさの異なる寝具に関する研究,2つ目は寝具と衣服の間の摩擦に関する研究である.それぞれ寝返りにおいての官能検査と骨盤回転トルクを計測し,寝返りのしやすさと回旋トルクの関係について検討を行なった.柔らかさの異なる寝具に関する実験においては,腰部に加速度センサを装着し,柔らかさの異なる寝具において,骨盤回旋のための回転トルクを算出した.また同時に,「寝返りのしやすさ」「柔らかさ」「痛み」の項目について官能検査を行なった.その結果,寝具が柔らかいほど平均嗜好度が高く,回転トルクの小さい寝具が寝返りしやすいと評価された.寝具と着衣の摩擦に関する実験では,素材の異なる4種類の着衣においての骨盤回転トルクを算出し,「寝返りのしやすさ」についての官能検査を行なった.その結果,摩擦が小さく,動作に対する拘束性が低い着衣が,寝返りしやすい傾向が見られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は,初年度の主な目的である寝返りの際の腰部回転トルクを推定するアルゴリズム,および計測システムを,(プロトタイプではあるが)構築することができた.また,構築したシステムを用い,特性の異なる寝具における寝返り動作と感性評価を実施し,腰部回転トルクと寝返りのしやすさの間に相関がある可能性を確認することもできた.以上の理由から,おおむね順調に進展していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究により,寝返りの際の骨盤の回転トルクを推定するアルゴリズム,およびシステムについて構築を行なった.しかしながら,基本的に加速度センサから得られた角速度を用いているため,座標変換や角加速度の算出等における微分・積分演算により誤差が蓄積しやすく,結果的に推定された回転トルクにも少なからず誤差が含まれていることが考えられる. そこで,25年度はまず,回転トルクの推定に加速度センサを用いる代わりに,モーションキャプチャシステムを用いることを検討する.モーションキャプチャシステムは,ワールド座標系で身体セグメントの座標時系列が得られるため,加速度センサで必要であった座標変換やノイズ除去等の処理が不要になるため,推定した回転トルクに含まれる誤差を低減できるものと考えられる.そして,モーションキャプチャシステムによる計測システムの妥当性を確認でき次第,本年度の目的である寝返り動作のしやすさに影響する寝具特性の解明する予定である.具体的には,寝具の硬さとその分布を段階的に変化させ,各条件における回転トルクの仕事を求めることにより,寝返りのしやすい寝具の条件を解明する予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず当該研究費が生じた理由であるが,24年度に構築した寝返りの際の腰部回転トルク計測システムの主要部分が,研究を進める過程で研究室の現有設備により構成できる可能性が確認されたため,当初予定していた機器の購入を延期し,現有設備によるシステム構築を行なったためである. しかしながら,既述のように24年度に構築したシステムには精度の面で改善の余地があることが示唆されたため,次年度の研究費は,主に設備備品費としてモーションキャプチャシステムの購入(あるいはリース)と,成果発表に関する旅費への支出を予定している.モーションキャプチャシステムについては,寝返り動作を対象としているため従来のマーカー・光学方式では計測が困難であることが予想されるため,慣性センサ等を用いたマーカーレス方式の購入(あるいはリース)を予定している.成果発表については,24年度の研究成果を6月に学会で発表することが確定しており,さらに25年度の成果と合わせて,26年3月に学会で発表する予定である.また,海外の英文誌への投稿も予定しているため,英文翻訳・校正に関する支出も計画している.
|