2012 Fiscal Year Research-status Report
無機ホストとの複合化による天然色素の安定化と安全な色材への応用
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24700787
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河野 芳海 静岡大学, 工学部, 助教 (50334959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 天然色素 / ホストゲスト相互作用 / 複合体 |
Research Abstract |
実施計画に従い,種々の天然色素と無機ホストとの複合化を検討し,最適な組み合わせや必要なホストの修飾処理を見出した。 アントシアニン系では,天然色素アントシアニンとメソポーラスシリカとの複合体の調製条件を検討した。十分な量の色素を複合化するには,メソ細孔体への3価金属イオンの導入や,細孔内壁をアルキル鎖で修飾し,細孔内環境を疎水化する等の対策が効果を示すことが解明された。ただし,複合化による色素の可視光照射下での安定性の向上は,十分ではなかった。 アニオン系天然色素の複合化については,ハイドロタルサイト層間の炭酸イオンを,色素と交換しやすいものに予め交換しておいた上で,アニオン性天然色素とイオン交換し,複合体を調整することを予定している。これまでに,層間アニオンの簡便な交換方法を検討し,メタノールを溶媒に用いるアニオン交換反応が有効であることを確認した。 疎水性天然色素については,粘土層間の交換性イオンを界面活性剤分子に交換して層間を有機修飾したうえで,構造が似通った種々の疎水性天然色素を導入し複合化を試みた。色素の疎水性の度合いに応じて複合化が進行し,また疎水性の強い色素において安定性が向上するという結果が得られた。これより,粘土層間と色素分子との疎水性相互作用により安定性の向上がなされたことが確認された。また,メソ細孔体の細孔内環境を制御し,βカロテン分身の複合化を検討した。細孔内をアルキル基で修飾すると,βカロテンの複合化および可視光に対する耐光性が向上することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アントシアニン系色素の複合化に関しては,合成フラビリウム色素を用いた際の実験結果を踏まえた上でメソポーラスシリカとの複合化の可否を検討した結果,メソポーラスシリカ細孔内への天然アントシアニン色素の導入に成功し,また色素を吸着させる際の最適な吸着条件の決定に至った。 アニオン性天然色素の複合体については,従来,ハイドロタルサイト層間の炭酸イオンはイオン交換が容易でないとされており,通常,複合体を調製するには再構築法や共沈法といった,やや特殊で手間のかかる製法を必要としていた。しかし,適切な溶媒を選択することで,単純なイオン交換法で複合体を調製できる可能性があるという指針が得られた。 疎水性天然色素に関しては,粘土やメソポーラスシリカを無機ホストとして使用し,粘土層間やメソポーラスシリカ細孔内を有機修飾することで,当初の狙い通り,βカロテンをはじめとする疎水性天然色素を非極性環境の空間に導入することに成功した。また,このようにして得られた複合体において,色素の安定性は向上することを確認した。 以上のとおり,3種の天然色素に関する進捗度は,いずれもおおむね当初計画に従ったものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
アントシアニン系色素については,メソポーラスシリカとの複合体の調製は可能となったが,得られた複合体で色素の耐光性の向上が見られない問題が残っている。従って本年度は,複合化により色素安定性が向上する条件の探索を主眼として検討を進める。 アニオン性天然色素については,簡便な方法でハイドロタルサイト層間に複合化できる見込みが立ってきたので,本年度は実際に複合化を試み,得られた複合体の安定性評価を行う。 疎水性天然色素については,メソポーラスシリカに複合化した際の,色素の色調等の特性変化について,詳しく検討する。 上記で得られた各複合体を,ポリマー等の媒体に加えた際の影響を調べる。この目的に備え,複合体を有機溶剤中に分散させて色素分子の溶出や劣化がどの程度見られるかを調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要な試薬等,消耗品を中心に研究費を使用する。成果発表や共同研究打合せ等の目的で旅費を使用する。 大型設備設置のために研究費を使用することは予定していない。
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