2012 Fiscal Year Research-status Report
ソトロンおよびホモフラネオールによる発酵食品オフフレーバーのマスキング効果の解明
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24700808
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大畑 素子 北里大学, 獣医学部, 助教 (60453510)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 香気 / マスキング / GC-匂い嗅ぎ |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画は、(1)魚醤のオフフレーバーの検出方法の確立とオフフレーバーの特定、(2)ソトロンとホモフラネオールによるマスキング効果の機器分析での評価方法の確立、(3)ヒトによる官能評価でのマスキング効果の評価である。(1)については、入手した様々な種類の魚醤から香気成分を調製した後、Aroma Extract Dilution Analysis法を適用し、順次段階希釈した香気濃縮物をGC-匂い嗅ぎ分析により香気寄与度の高い香気成分を特定するものである。本年度は、タイの魚醤(nam pulaa)1種、ベトナムの魚醤(nuoc mam)2種、日本の各種魚醤(しょっつる、ふぐ醤油)2種に加えて、魚醤以外で日本製のくじら醤油、鶏醤の香気寄与成分を検索した。同時に、ソトロンおよびホモフラネオールの存在の有無も検証した。その結果、分析した全ての試料からソトロンとホモフラネオールの検出はなかった。寄与度の高いオフフレーバーの特定は現在検討最中である。(2)については、GC-匂い嗅ぎ分析装置の匂い嗅ぎポートの直前に設置してあるガスサンプラーからソトロンとホモフラネオールを匂い嗅ぎポートに導入するが、そのタイミングはオフフレーバーの検出保持時間となる。オフフレーバーと導入されたソロトンあるいはフラネオールを同時に匂い嗅ぎ分析し、インタラクションからマスキングされたか否かを評価するものであるが、オフフレーバーの特定と保持時間の決定により随時評価する予定である。(3)については、官能評価に用いる手法として定量的記述分析法により鼻先で匂いを嗅いだ時(オルトナーサル)に感じる匂いについて評価用語を決定する。これまでに予備的実験により9語の評価用語を選出しており今後本研究において有効かを検証する。また、有効な各用語において定量的に強度を求め、後鼻腔的(レトロナーサル)評価も今後行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各試料から調製した香気濃縮物のAroma Extract Dilution Analysis法を用いたGC-匂い嗅ぎ分析は、1回の分析に約90分かかるため、全試料の全ての希釈段階における検証には莫大な時間を要する。当初の予定ではこの分析によりオフフレーバーを同定あるいは定量するところまでを目指したが、もう少し時間的余裕を考慮した方がよいだろう。それを考慮しても初年度としては十分な実験データを蓄積することができたと評価している。また、定量的記述分析法を用いた官能評価においても、パネリストのトレーニングや評価用語の選出・決定等多くの時間を費やした。結果的にほぼ評価用語の選出およびパネリストの選出は終了しており、官能評価本番を残すのみとなっているため、本研究テーマにおける初年度としての達成度はおおむね満足であると考えている。一方で、研究遂行に対する時間的余裕に関して多少考慮するべきであったこと、初年度でありチャンピオンデータが予定よりも少ないことなどが、来年度以降の課題であると考えている。以下に初年度の成果を挙げる。 学会発表(2件):黒井、大畑、有原、日本畜産学会第116回大会、p206(2013.3)、宮下、大畑、有原、日本畜産学会第116回大会、p206(2013.3) シンポジウム(1件):大畑、菅原、日本農芸化学会2013年度大会(2013.3) 投稿論文(1件):Ohata, Arihara, J. Agric. Food Chem.(投稿準備中)
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成24年度未実施項目の検討・・・主に、オフフレーバーの特定、ソトロンあるいはホモフラネオール添加によるマスキングの評価、官能評価を実施し、再現性を見る。GC-匂い嗅ぎ分析を行いながら匂い嗅ぎポートへのソトロンあるいはホモフラネオールの導入が困難である場合には、各マスキング剤を添加した各魚醤の定量的記述分析法を用いた官能評価により、マスキング効果を評価し明らかにすることとする。 (2)酵母を添加した魚醤の試験的調製・・・従来の魚醤の製造には、酵母による発酵工程はなかった。本研究は新たな試みとして耐塩性酵母を魚醤に添加し試験的調製を行う。添加する酵母は、Zygosaccharomyces属の酵母であり、すでに大豆が主原料の醤油や味噌で利用されている酵母である。前培養して、集菌・洗浄した大量(10の8乗セルレベル)の酵母を一度に魚醤の製造工程で添加する。このレベルで一度に添加された酵母は、定常期にあるためほとんど増殖することなく、代わりに酵母によるソトロンとホモフラネオールの生成が急速に行われると予測している。27℃で6ヶ月間インキュベートする。 (3)試験的調製魚醤のオフフレーバーのモニタリングとマスキング効果の検証・・・試験的に調製した魚醤は、随時サンプリングを行い、オフフレーバー成分、ソトロンおよびホモフラネオールの3成分の濃度を定量し、それらの濃度変化をモニタリングする。最終的に、魚醤だけでなく、動物性発酵食品のオフフレーバーを押さえる製造方法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)