2012 Fiscal Year Research-status Report
Cyp7a1遺伝子発現を促進する乳酸発酵豆乳中の作用因子と促進メカニズム
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24700811
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
小林 麻貴 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助手 (70550789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脂質 / 発酵 / 栄養学 / 遺伝子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
先進国では脂質異常症が増加傾向にあり、その予防に効果的な大豆食品に期待が寄せられている。大豆には機能性因子である大豆タンパク質、イソフラボンが豊富に含まれ、脂質代謝改善作用が既に報告されている。そのため、申請者らは摂取容易な豆乳、特に乳酸発酵豆乳の新規生理作用に注目し、普通食(AIN-93G)摂取ラットを用いてコレステロール濃度上昇抑制作用の一因としてコレステロール異化経路のCytochrome p450 family 7 subfamily a polypeptide 1 (CYP7a1)の遺伝子発現促進作用を認めたので、当該作用を誘導する作用因子とメカニズムを検討した。申請者らは豆乳の乳酸発酵処理によりイソフラボンのアグリコン割合が増加し、腸管吸収率が向上することでCYP7a1遺伝子の発現量が増加すると考えた。そのため、本研究ではイソフラボンがCYP7a1遺伝子発現を促進するメカニズムの解明を行った。 まず、イソフラボンのアグリコン割合の増加がCYP7a1遺伝子発現に及ぼす影響を検討するため、豆乳及び乳酸発酵豆乳から70%エタノールを用いてイソフラボンを含む抽出物を作製した。イソフラボンの脂質代謝改善効果は飼料中の大豆タンパク質の有無で変動する可能性が高いため、①大豆タンパク質共存下でのイソフラボンを含む抽出物の脂質代謝に及ぼす影響、②大豆タンパク質非存在下でのイソフラボンを含む抽出物の脂質代謝に及ぼす影響をそれぞれ検討した。各実験は一次予防作用の観点から普通食(AIN-93G)摂取ラットを用いた。 また、通常の食事中にはコレステロールが含まれているため、高コレステロール食摂取ラットにおいて乳酸発酵豆乳の脂質代謝に及ぼす影響を検討した。 さらにイソフラボンのCyp7a1遺伝子発現メカニズムを詳細に調べるため、ヒト肝がん由来HepG2細胞を用いて実験系の検討を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通り、大豆タンパク質存在時、非存在時のイソフラボンのアグリコン割合の増加が、普通食摂取時のラットの脂質代謝に及ぼす影響を調べた。実験①では大豆タンパク質存在時の影響を検討するため大豆タンパク質源として豆乳を用いた。SD系雄性ラットに基準飼料(AIN-93G)を与え1週間予備飼育をした後、引き続きAIN-93Gで飼育したコントロール群、コントロール群飼料の一部を脂質代謝改善効果の少ない濃度の豆乳で置換した群、同様に豆乳と豆乳抽出物で置換した群、同様に豆乳と乳酸発酵豆乳抽出物で置換した群にわけ5週間飼育した。実験②では大豆タンパク質非共存下の影響を検討するため、コントロール群、コントロール群飼料の一部を豆乳抽出物で置換した群、同様に乳酸発酵豆乳抽出物で置換した群にわけ5週間飼育した。豆乳抽出物及び乳酸発酵豆乳抽出物は大豆タンパク質が存在時に脂質代謝改善効果を示した。また、実験①、②とも豆乳抽出物群と比較して乳酸発酵豆乳抽出群でCYP7a1遺伝子の発現量が増加した。 次に次年度実施予定であった、高コレステロール食摂取ラットにおいて乳酸発酵豆乳の脂質代謝に及ぼす影響を検討した。SD系雄性ラットに基準飼料(AIN-93G)を与え1週間予備飼育をした後、1%コレステロール食群、1%コレステロール食に大豆タンパク質濃度5%となるように乾燥発酵豆乳で置換した群、同様に大豆タンパク質濃度10%となるように乾燥発酵豆乳で置換した群の3群にわけ5週間飼育した。その結果、乳酸発酵豆乳摂取によりコレステロール代謝系の遺伝子発現量の変化を伴った脂質代謝改善効果が見られた。 さらにHepG2細胞へのイソフラボンの影響を検討したところ、イソフラボン濃度20 μM でCYP7a1の発現を増加することが示唆された。豆乳抽出物及び発酵豆乳抽出物の影響については次年度検討予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは乳酸発酵豆乳の脂質代謝改善効果の促進には豆乳の乳酸発酵処理によるイソフラボンのアグリコン割合増加が関係すると推測して、豆乳及び乳酸発酵豆乳の70%エタノールで抽出物を作製し、大豆タンパク質存在時にイソフラボンを含む抽出物の脂質代謝改善作用を確認した。そのため、本年度は従来から使用しているイソフラボンのアグリコン化変換力の高いLactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4408L株と同じ乳酸菌株でイソフラボンをアグリコン化変換力の低いLactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4404L株を使用して乳酸発酵豆乳を作製し、イソフラボンのアグリコン割合の違いが脂質代謝に及ぼす影響を比較する。 また、前年度に引き続き、ヒト肝がん由来HepG2細胞でイソフラボンの脂質代謝改善作用を調べる。HepG2細胞に(1)イソフラボン単独、(2)豆乳または発酵豆乳抽出物を添加しCyp7a1を含む脂質代謝関連遺伝子発現への影響を比較検討する。さらにイソフラボンによる細胞内シグナル伝達メカニズムの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)