2012 Fiscal Year Research-status Report
高圧力・加熱処理により調製した柑橘マーマレードの品質比較
Project/Area Number |
24700812
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
桑田 寛子 福山大学, 生命工学部, 助手 (20509252)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | マーマレード / 柑橘類 / 高圧力 / 加熱 / ペクチン / テクスチャー / 組織 |
Research Abstract |
通常マーマレードは、加熱によりペクチンを抽出し、果汁(酸)と蔗糖を添加しゼリー化することにより調製されるが、加熱により生果実の風味は失われる。本研究の目的は、高圧力で処理することにより、生の果実に近い風味を持つマーマレードを調製することである。既に高圧ジャムが明治屋より市販されているが、この商品には全てペクチンが添加されている。しかし、柑橘類はマーマレード製造に必要かつ十分なペクチンを含有している。加熱しないでペクチンを溶出し、果皮を軟化させる方法を考案し、果実由来のペクチンのみで高圧マーマレードを調製する方法を検討した。 1.外果皮を軟化させる方法についての検討 マーマレード調製のために、前処理として外果皮をクエン酸溶液に浸漬すると、pHが低いほど軟化が促進し、破断応力は低下して細胞壁にゆるみが生じた。細胞壁は生、クエン酸処理、加熱処理ではゆるみが見られたが、高圧力処理ではあまりゆるみが生じなかった。ペクチン質は中果皮と内果皮に多く、どの部位でも水溶性ペクチンは少なく、塩酸抽出区分が最も多かった。 2.マーマレード製造のための最適条件の検討 柑橘類を用いて高圧マーマレードを調製し、従来の加熱マーマレードと比較した。これまでの研究でユズを用いて、外果皮が軟化しやすいpH2.0、2.5、ゲル化に最適であるpH2.7のクエン酸に浸漬する方法でマーマレードを調製した。この方法を日向夏、ブンタン、グレープフルーツなどの他の柑橘類を用いてマーマレードの調製法を検討し、柑橘に合ったマーマレードを作製した。どの柑橘類においても、マーマレードの粘弾性は処理方法により大差なかった。高圧力処理したほうが加熱処理したものよりゼリー部分のナリンギン量が少なかった。官能評価において、総合評価は高圧力処理の方が高い傾向を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、高圧力処理によるマーマレードの調製法の検討を主に行った。pHの異なるクエン酸溶液に浸漬して、外果皮の軟化と、ゲル化に最適なペクチン量を溶出できる条件を模索した。また、高圧力処理によってマーマレードを調製し、加熱法と比較した。さらに、ペクチン質が高圧力処理、加熱処理によりどう変化するか、組織、物性への影響についても検討した。クエン酸に浸漬すると軟化が促進し、破断応力は低下して細胞壁にゆるみが生じていた。ペクチン質は中果皮と内果皮に多く、どの部位でも水溶性ペクチンは少なく、塩酸抽出区分が最も多いことを明らかにした。マーマレードの粘弾性は処理方法により大差なかった。官能評価において、全体的に高圧力処理の方が評価が高かった。検討した方法を用いて、品質の良い高圧力マーマレードを調製できた。今後、今回使用したユズ以外の香酸柑橘や、ミカンなどの柑橘類についても確立した方法を応用して研究を進展させていくことができると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に検討した柑橘類以外について、平成24年度と同様の方法を用いて実験を行う。それぞれの柑橘に合ったマーマレードの調整法について検討する。検討項目は以下の3点である。 [I] 各種柑橘類の外果皮を軟化させる方法 [II] 高圧力処理、加熱処理による数種類の柑橘類の軟化とペクチン質の関係 [III] 高圧力処理による数種類の柑橘類のマーマレードの調製方法の検討
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、電子顕微鏡観察を行うための液体窒素、食品高圧力処理装置交換部品(ピストンパッキン等)などの消耗品の交換、必要な各種試薬と器具の購入を予定している。 研究の成果発表を行うための国内旅費、外国旅費、電子顕微鏡を利用するための出張旅費、また論文の英文校閲料や投稿・別冊料に使用する予定である。
|