2012 Fiscal Year Research-status Report
氷温熟成処理による食肉の脂肪融点低下作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
24700815
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Research Institution | Tottori College |
Principal Investigator |
細見 亮太 鳥取短期大学, その他部局等, 助教 (20620090)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 氷温 / 熟成 / 脂質 / 脂肪融点 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
動物性食品の摂取割合が高い食生活が構築され、心疾患・脳血管疾患による死亡率が増加した。死亡率増加の原因の一つとして考えられている脂肪酸を改善するために、品種改良技術や餌料に植物性油脂やn-3系脂肪酸を添加する方法が試みられている。これまでに豚肉を約-1℃の未凍結温度域で熟成(氷温熟成)すると脂肪融点が低下することが報告されており、このことは脂肪酸の変化に起因すると推測されるが、そのメカニズムに関する研究は行われていない。そこで本研究では、屠殺直後の豚肉をチルド熟成(4 ± 0.5℃)もしくは氷温熟成(-0.5 ± 0.5℃)で処理し、熟成期間毎の脂質の性状を評価した。 豚肉の氷結点は、-1.1℃であった。脂肪融点の測定結果において、チルド熟成処理と比較し、氷温熟成処理による脂質融点の低下が確認された。脂肪融点の低下は、熟成1日後からみられ、熟成14日後でも維持されていた。熟成7日後にはチルド熟成処理と比較し約4℃の差がみられた。脂肪融点の低下の原因を解明するために、脂肪酸組成と脂質分子種の測定をおこなった。しかし、氷温処理とチルド処理による熟成過程の違いによる脂質分子種と脂肪酸組成の変化は見られなかった。遊離脂肪酸量の増大が脂肪融点に影響を与えているのではないかと考えたが、氷温熟成とチルド熟成で大きな変化はなかった。以上のことから、氷温熟成処理によって脂肪融点の低下が起きることは確認されたが、その原因は解明することができなかった。今後さらに原因を解明するために研究を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、研究目的に掲げていた「氷温熟成による脂肪融点低下作用メカニズムの解明」には脂質中の脂肪酸組成や脂質分子種などが作用している可能性が低いことがわかった。しかし、まだ脂肪融点低下の原因を突き止めるには至っていない。この理由として、当初は脂肪融点に関与しているのは脂質成分の変化であると考えていたが、脂質成分ではなく、他の成分が関与していることが予測された。この他の成分が何であるかを同定することが難しく、研究がやや遅れている。今後、脂肪融点に影響を与えている成分の検討を続け、目的を達成できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、この熟成温度の違いによる脂肪融点の低下効果が、生物的であるのか、もしくは非生物的であるのかを確認する。そのために、精製ラードをチルド熟成および氷温熟成処理し、脂肪融点の変化を測定する。また、平成24年度の研究結果から脂肪融点低下の原因として、脂質の性状に大きな変化がないことから、脂質以外の微量成分が影響を与えていることも考えられる。そのため脂質抽出の方法としてクロロホルム/メタノール混液を用いていたが、他の方法による脂質抽出を行い、脂肪融点の比較を行う。さらに、脂質抽出の際に、一緒に抽出される可能性の高い疎水性成分などの混入を確認し、脂肪融点に影響を与えていないか検討する。 氷温熟成処理した食肉も、消費者が購入する小売店では、ほとんどが冷蔵(+4℃)で保管、陳列、販売されるので、再び脂肪融点の変化が起きることが推測される。そのため、氷温熟成処理した食肉を冷蔵に移し、脂肪融点、脂肪酸組成、脂質分子種の変化について経時的に評価し、氷温熟成による脂肪融点低下効果の持続期間を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)