2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700824
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
池亀 由香 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50402201)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レスベラトロール / 腫瘍抑制効果 / 腫瘍幹細胞 / 分化誘導 |
Research Abstract |
本研究では、食品に含まれるポリフェノール化合物、特にサーチュイン遺伝子活性化物質であるレスベラトロール(RSV)を用いた腫瘍幹細胞制御機構の解明を目的とする。RSVが血液脳関門を通過できる特性を持つことから、最も悪性度の高い脳腫瘍である膠芽腫を対象とする。膠芽腫は、治療抵抗性の根源である脳腫瘍幹細胞を多く持つと言われ、その制御は最難関の課題である。本研究によりRSVが脳腫瘍幹細胞に与える抗腫瘍効果及びその機序を分子レベルで明らかにし、食品由来物質による、副作用の少ない新たな治療戦略を提示する。 平成24年度までの研究では以下の結果が得られた。 1)RSV添加による抗腫瘍効果の評価:RSV添加によりU87細胞の増殖抑制及び細胞数の減少がみられた。また、その効果は通常の接着培養と無血清培養の双方に認められた。 2)腫瘍幹細胞に関連した腫瘍の性質へのRSVの影響:脳腫瘍では腫瘍幹細胞としてCD133陽性細胞が候補となっている。RSVは、U87でのCD133及びNestinの発現量(未分化マーカー発現量)を減少させることができた。 3)抗腫瘍効果とSirtuin ( SIRT )タンパク群との関連:RSVにより、SIRT1はU87で濃度依存性に発現量低下、SIRT2は変化を見せず、SIRT3は発現量が増加した。 SIRTタンパクのうち、悪性脳腫瘍においてはSIRT1抑制が抗腫瘍効果を高めるといわれる。SIRT3は他癌腫において腫瘍抑制に働くとされる。SIRT2は細胞周期制御に関与する。ここまでの本研究の結果より、RSVによる抗腫瘍効果はU87及びCD133陽性細胞に対してはSIRT1,3を介して作用している可能性が考えられた。更に、正常神経幹細胞でのSIRT1発現が強くみられるという報告も考慮すると、悪性脳腫瘍に対しRSVが腫瘍幹細胞を標的とできる可能性を示唆すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度までの実験結果より、レスベラトロールが脳腫瘍幹細胞に対して分化誘導を行うことが出来る可能性があることが分かった。分化誘導が可能であれば、腫瘍の悪性度や治療抵抗性を下げ、現行の治療の効果をより上げることが期待できる。これまでの文献で使用されていた、細胞培養時に添加するレスベラトロールの濃度よりも少量、すなわち、他国で健常者に対するサプリメントとしての臨床試験の結果得られた、通常使用量内服時の血中濃度を模した濃度でも分化誘導効果を確認できたことは、今後この治療が実現する為に大いに有意義であると思われる。 研究の初期段階においてこのような有意義な結果が得られたことで、機序の更なる解明や、治療効果を向上するための詳細な条件の検討など、次のステップとなる諸検討を着実に進められることとなった。計画当初は動物実験も行う予定であったが、分化誘導という、予想以上に有意義な効果が培養細胞実験で得られたため、次年度はこの重要な作用の解明に努めることとした。従って、研究計画に変更は生じたが、研究自体はおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの結果より、レスベラトロールがサーチュインを介した機構も作用させつつ、腫瘍幹細胞の分化誘導を行って、脳腫瘍の悪性度を低下させる可能性を提示した。本研究費の申請時は平成25年度に動物実験も行う予定であったが、培養細胞実験により、レスベラトロールに腫瘍幹細胞の分化誘導作用という重要な機能があることが分かったため、これを中心に更に検証すべく、平成25年度も培養細胞実験を継続することとした。 また、分化誘導効果だけでなく、レスベラトロールの抗腫瘍効果の機序として、細胞死の種類 (apotpsis やautophasy) も腫瘍株によって異なる傾向がある他、SIRTの血管新生への影響も指摘されていることから、これらに関連する解析も可能な限り展開する。SIRTを介して、どこまでの腫瘍制御が可能であるのか、特に腫瘍幹細胞群への効果がどこまであるのか、in vitroの解析へ重点を移して検証を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)