2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700834
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮良 恵美 琉球大学, 医学部, 助教 (50457686)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アラビノガラクタンプロテイン / 免疫調節作用 / 生活習慣病予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は1.細胞培養株を用いた免疫調節機能の検討ならびに2.腸内細菌増殖試験を行った。 1. 免疫調節機能の検討:田芋アラビノガラクタンプロテインを作用させたマウスのマクロファージ細胞株(RAW264.7)の遺伝子発現量をリアルタイムPCRで測定した結果、本物質を作用させていないコントロールと比較して、抗ウイルス因子であるIFN-λ3および2’-5’オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)遺伝子発現量が有意に増大した。培養上清のIFN-λ3タンパク質量はELISAキットの検出限界以下であったため本物質の作用を確認できなかったが、OASタンパク質はアラビノガラクタンプロテイン添加により増加する傾向がみられた。 2. 腸内細菌増殖試験:田芋アラビノガラクタンプロテインを唯一の糖質源として1.0%添加したGAM半流動培地を作成し、代表的な腸内細菌9株を接種して37℃、7日間嫌気的に培養した。糖質源のコントロールとして3種類の単糖(グルコース、ガラクトース、アラビノース)を各々添加した培地にも同様に腸内細菌を接種して増殖を確認した。比較対照物質として市販のカラマツ由来アラビノガラクタンを添加した培地についても増殖試験を行った。菌の増殖は培地上清の660 nmにおける吸光度により測定し、糖質分解は培地のpH変動と乳酸定量により評価した。本物質はカラマツ由来アラビノガラクタンと異なり、いわゆる悪玉菌といわれるClostridium butyricumやC. sporogenesにより分解されたが、カラマツ由来アラビノガラクタンと同様にいわゆる善玉菌と呼ばれる乳酸菌Bifidobacterium longumおよびB. pseudocatenulatumにも利用されることが明らかとなり、プレバイオティクスとして腸内環境を改善することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的は1.AGPの精製と加工特性の検討、2.AGPの免疫調節作用と腸内環境改善作用の検討、3.AGPの生活習慣病予防効果の検討の3項目であるが、今年度は目的2.までを終了して全体の2/3を達成しており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として「研究目的3.生活習慣病予防効果の検討」が残っているが、当初予定していた食事性肥満モデルマウスへの投与試験には精製した田芋アラビノガラクタンプロテインでは量が不足しており、原材料大量入手の困難さから追加の精製も難しい。保存している精製アラビノガラクタンプロテインを最大限に生かす研究の推進方策として、以下の二つの試験に計画を変更する。 1. 腸内環境改善作用の検討:今年度行った腸内細菌増殖試験において、田芋アラビノガラクタンプロテインは乳酸菌類にも利用され、プレバイオティクスとしての有用性が示唆された。今回は菌の増殖と乳酸を定量するスクリーニング的な検査であったが、さらに培地中の乳酸以外の短鎖脂肪酸類(酪酸や酢酸、プロピオン酸等)を測定して、より詳細な作用を検討する。短鎖脂肪酸類はヒトの腸管上皮細胞の増殖促進やミネラルの吸収促進といった腸管への作用のほか、肝臓での脂質代謝促進作用等も知られている。 2. 血糖値上昇抑制作用の検討:主要な生活習慣病のうち、糖尿病に対する田芋アラビノガラクタンプロテインの予防的効果を調べるため、マウスを用いた糖負荷試験を行う。本物質を投与しないコントロールマウスと投与するマウスに対して、糖質(可溶性デンプンやマルトース、スクロース等)を経口投与し、血糖値の経時的変化を比較検討する。単回のスクリーニング検査であるが、長期摂取による生活習慣病予防効果の検討に繋がる試験である。
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Causes of Carryover |
細胞培養株を用いた免疫調節機能の検討において、抗ウイルス因子であるIFN-λ3の培養上精中濃度は測定キットの検出限界以下であった。培養上精を濃縮してIFN-λ3の再測定を行い、田芋アラビノガラクタンプロテインの抗ウイルス作用を確認する予定であったが、試薬メーカーのトラブルからキットの納入が遅れて再試験できていないため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
田芋アラビノガラクタンプロテインの抗ウイルス作用を確認するため、試薬メーカーの準備が整い次第、IFN-λ3測定キットを購入して再測定を行う計画である。
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