2012 Fiscal Year Research-status Report
妊娠糖尿病の母児の予後と植物ポリフェノールによる保護効果
Project/Area Number |
24700836
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
向井 友花 青森県立保健大学, 健康科学部, 助教 (60331211)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 妊娠期 / フルクトース / 糖代謝 / 脂質代謝 / 母児 / 植物ポリフェノール / サーチュイン / 妊娠糖尿病 |
Research Abstract |
近年増加しつつある妊娠糖尿病は、母親自身や児の将来の2型糖尿病発症のリスクを高める。長寿遺伝子として注目されているサーチュインは、インスリンシグナル伝達系を制御して糖尿病に対して予防的に働くことが知られている。一方、サーチュイン活性化物質である植物ポリフェノールは、2型糖尿病の予防改善における有効性は知られているが、妊娠期の生体における効果は分かっていない。そこで本研究は、妊娠糖尿病の母児の予後に及ぼすサーチュインを介した植物ポリフェノールの影響を明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、妊娠ラットにフルクトースを過剰摂取させて妊娠糖尿病モデルラットを作製し、母ラットおよび仔ラットの各発育段階における肝臓のサーチュイン遺伝子発現と糖代謝関連因子の発現や活性を調べた。 妊娠ラットに出産までの3週間、10%(w/v)D-フルクトース溶液を自由摂取させ、自然分娩後は蒸留水を与え3週間授乳させた。妊娠末期のフルクトース摂取母ラットは高血糖および高インスリン値を示し、肝Sirt1(サーチュインファミリーの一つ)発現は有意に減少していた。胎児の血糖値も有意に高値であった。出生した仔ラットの体重は雌雄とも母ラットのフルクトース摂取による増加は認められなかったものの、雌性仔ラットは3週齢時に血糖値およびインスリン値の有意な上昇を示した。肝臓でのSirt1発現および、糖・脂質代謝のキーとなるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)のリン酸化は有意に減少していた。肝糖新生の律速酵素であるグルコース-6-フォスファターゼ活性は有意に高かった。一方、雄性仔ラットにおいてはこれらの変化は認められなかった。 以上のことから、妊娠糖尿病の母体は肝Sirt1発現が減少しており、仔においても、3週齢の雌性仔で、肝Sirt1-AMPKシグナル経路を介した糖代謝異常が生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、妊娠糖尿病の母児の予後に及ぼすサーチュインを介した植物ポリフェノールの影響を明らかにすることである。初年度の平成24年度はまず、妊娠糖尿病モデルラットを用いて妊娠糖尿病の母体および出生後の雌性仔において肝Sirt1発現が有意に減少し、糖新生が促進していることを明らかにした。このことからサーチュイン活性化物質として知られる植物ポリフェノール(レスベラトロールなど)が、母児の糖代謝改善に有効である可能性を見いだすことができた。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠糖尿病の母ラットから出生した仔ラットは肝Sirt1-AMPKシグナル経路を介した糖代謝異常を示すという知見をベースに、平成25年度は、サーチュイン活性化物質として知られる植物ポリフェノール(レスベラトロールなど)投与により仔の糖代謝を改善できるか、を検討する。平成24年度と同様に、10%(w/v)D-フルクトース溶液の自由摂取により作製した妊娠糖尿病モデルラットに、レスベラトロール含有飼料を摂取させる。自然分娩および授乳哺育させ、仔ラットの離乳直後および成長後の各段階において血漿および肝臓、脂肪組織、骨格筋、視床下部といったインスリン標的臓器をサンプリングしてSirt1の発現と活性、および糖代謝の解析を行う。 さらに、妊娠期に摂取する植物ポリフェノールが糖代謝異常を改善する分子機構を明らかにするため、女性ホルモンの妊娠時の濃度曝露下の培養細胞を用い、サーチュインとインスリンシグナル伝達系に関与する因子の発現、および糖代謝の変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、妊娠糖尿病モデルラットおよびその仔ラットの飼育に必要な物品や飼料、投与するレスベラトロールの購入に充てる。また各臓器でのSirt1や糖代謝関連因子の遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRおよびウエスタンブロット法により解析するため、ターゲットごとに異なるプライマー、プローブ、酵素類、抗体類の購入が必要不可欠である。 さらに、培養細胞を用いた植物ポリフェノールの糖代謝異常改善メカニズムの解析のために、細胞培養に必要な器具類、培地や試薬類の購入に研究費を充当する。
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Research Products
(8 results)