2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における低たんぱく食への分岐鎖アミノ酸添加と運動による筋代謝改善効果
Project/Area Number |
24700839
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉田 卓矢 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80622448)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 運動 / 分岐鎖アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究は、低たんぱく食療法を行っている慢性腎臓病(CKD)患者の筋萎縮を抑制し、筋肉量を保持する方法を検討する基礎的研究である。平成24年度はCKDモデルラットを作成し、筋タンパク代謝を促進する因子として知られる運動と分岐鎖アミノ酸(BCAA)がCKDにおける筋タンパク代謝に及ぼす影響を検討した。 CKDモデルラットに軽度の運動(ウォーキング)を週5日間、1時間継続的に負荷して筋タンパク代謝における運動負荷の影響を検討した。また、低たんぱく食(6%たんぱく食)に3%のBCAAを添加した餌を投与してBCAAがCKDモデルラットの筋タンパク代謝に与える影響を検討した。さらに、運動とBCAAが相乗的に作用し、CKDモデルラットの筋タンパク代謝に有効か検討するため、BCAA添加食を与えたCKDモデルラットに継続的な運動を負荷して筋タンパク代謝への影響を検討した。 これらの検討から以下の成果が得られた。①CKDモデルラットに軽度の運動であっても継続的に負荷することで筋肉量を増加させ、筋タンパク代謝を活性化する傾向があった。②食餌にBCAAを添加してもCKDモデルラットにおける筋肉量の増加、および筋タンパク代謝にはほとんど影響を与えなかった。また、3%のBCAA添加は腎機能を著しく悪化させた。③CKDモデルラットにおける運動とBCAAの負荷は相乗的に筋タンパク代謝を活性化したが、筋肉量は運動のみ負荷したCKDモデルラットと有意な差がみられなかった。また、BCAAの添加により腎機能が悪化した。以上の結果より、CKDモデルラットにおいて筋肉量の保持には軽度の運動であっても継続的に行うことが有効であった。一方、3%のBCAA添加は運動と相乗的に筋タンパク代謝を活性化させたが、腎機能を悪化させてしまう危険性があるため、CKDでは必要以上にBCAAを摂取することは注意が必要だと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は低たんぱく食療法を行っているCKD患者にみられる筋萎縮の進行を運動とBCAAの負荷により抑制できるか明らかにする基礎的研究である。平成24年度はCKDモデルラットを作成し、BCAAの添加と軽度の運動による筋タンパク代謝への影響を検討することを計画しており、計画していた研究はほぼ終了した。予測していた結果と異なり、食餌へ3%のBCAAを添加して飼育したラットは腎機能が悪化していたため、今後は腎機能を悪化させないで筋タンパク代謝を活性化させるBCAAの投与量と投与のタイミングを検討する実験が必要となった。しかし、予定していた実験はほぼ終了しているため、本研究の達成度はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにCKDモデルラットを作成し、低たんぱく食へのBCAA添加と運動負荷による筋タンパク代謝の影響を検討した。CKDモデルラットにおいてBCAAの添加と運動負荷は相乗的に蛋白合成のマーカーであるリン酸化p70s6Kinaseを増加させたが、筋肉量には影響しなかった。その原因として、運動をしていないラットと運動をしたラットのエネルギー摂取量をペアフィードにより同量としたため、運動を負荷したラットでエネルギー不足が起こり、筋肉量が増加しなかったことが考えられる。この問題を解決するため、今後は体重を観察しながら食餌中の窒素含量が同量になるように、エネルギーの不足分は窒素源を含まない食餌を調製して与え、運動を負荷したラットでエネルギー不足にならないようにする。これによりエネルギーが十分ある状態で、運動とBCAAが相乗的に筋タンパク代謝を活性化し、筋肉量を増加させることが可能か検討する予定である。また、3%のBCAA添加はCKDモデルラットの腎機能を悪化させてしまったため、投与量や投与のタイミングを検討する必要がある。次年度は糖尿病性腎症モデルにおいて運動負荷とBCAA添加の影響を検討する予定であったが、研究計画を変更し、CKDモデルラットを用いて腎機能を悪化させないBCAAの投与量とタイミングを検討し、その後糖尿病性腎症モデルの筋タンパク代謝に対する効果を検討したいと計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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