2012 Fiscal Year Research-status Report
ユリネの腸内環境改善と生活習慣病予防作用に関する研究
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24700845
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
岡崎 由佳子 藤女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80433415)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ユリネ / 高脂肪食 / 腸内環境 / ラット |
Research Abstract |
1.我が国の伝統的食材であるユリネが高脂肪食摂取ラットの腸内環境に及ぼす影響について検討した。4週齢のSD系雄ラットに,高脂肪食(30%牛脂)を基本食として,生のユリネ凍結乾燥粉末を5%あるいは10%添加した飼料を与え,21日間飼育した。その結果,飼料摂取量および体重増加量は5%ユリネ添加群では影響がなく,10%ユリネ添加群で低下していた。糞中IgA(腸管免疫の指標)は,5%及び10%ユリネ添加食群で顕著に増加した。糞および盲腸内容物中のムチン(腸管バリア機能の指標)については,ユリネ添加量の増加に伴い有意に増加した。盲腸内容物の重量は5%ユリネ添加群で増加傾向を示し,10%ユリネ添加群で有意に増加した。盲腸内容物のpHは5%及び10%ユリネ添加食において有意な低下が認められた。 ユリネ摂取により,腸内発酵産物である盲腸内容物中の酢酸,プロピオン酸,酪酸は増加しており,特に乳酸については,10%ユリネ添加群で顕著な増加がみられた。また,盲腸内容物中のBifidobacteriumはユリネ添加群で顕著に増加し,Lactobacillalesは5%および10%ユリネ添加群で用量依存的に有意に増加することが見出された。これらの結果より,ユリネは高脂肪食を摂取したラットの腸内環境を改善する可能性が示唆された。 2.腸内環境の改善は肝機能障害の予防に関与する可能性が考えられることから,ユリネが高脂肪食摂取ラットの肝障害に及ぼす影響を検討した。5週齢のSD系雄ラットに高脂肪食(30%牛脂)を基本食として,生のユリネ凍結乾燥粉末を7%添加した飼料を与え,10日間飼育した。飼育後,D-ガラクトサミン溶液を腹腔内に投与し,肝障害を誘発させた。その結果,ガラクトサミン投与により肝障害の指標である血清ALTおよびASTは有意に増加したが,ユリネの摂取によりこの上昇は抑制される傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画に沿って,ユリネの腸内環境と肝障害への影響について検討することができたため。当該年度の研究結果において,ユリネの腸管免疫賦活作用や腸管バリア機能改善作用,腸内発酵作用および腸内細菌叢改善作用が新たに見出され,ユリネが腸内環境を改善する可能性が示された。また,ユリネがラットのガラクトサミン肝障害を抑制する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,ユリネの腸内環境への影響について検討を加える。日常の食生活を考慮した場合,ユリネは加熱して食される場合が多いため,今年度は加熱処理したユリネの影響についても併せて検討を加える。ユリネは,未加熱あるいは電気蒸し器で加熱したものを凍結乾燥後,粉末化し試料として用いる。実験動物としてSD系雄ラット用い,1週間予備飼育後,高脂肪食(30%牛脂)を基本食として,未加熱あるいは蒸し加熱したユリネ粉末を添加した飼料を与え,数週間飼育する。腸管IgA,ムチン,盲腸有機酸含量および腸内細菌叢への影響を検討するとともに,大腸内発がん関連酵素(β-グルクロニダーゼ,β-グルコシダーゼ,トリプトファナーゼ,ウレアーゼ,アゾレダクダーゼ,ニトロリダクターゼなど),腸内で生成される腐敗産物(アンモニア,硫化水素,p-クレゾールなど)および炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6)の分析を行う。これらの因子との関連から,大腸疾病に及ぼすユリネの生理機能について検討を行う。 またユリネの脂質代謝への影響と検討するため,脂肪組織含量,肝臓および血清の脂質含量,脂肪酸合成系および分解系酵素活性,糞中への脂質排泄量および血中のアディポネクチンへの影響を調べるとともに,脂質代謝に関連する遺伝子解析も行う。 ユリネの有効成分を明らかにするために,食物繊維類,難消化性タンパク質およびその他の非栄養成分などの分析を開始する。 さらに,前年度に引き続きユリネのガラクトサミン肝障害への影響を検討するため,肝臓の抗酸化系酵素活性(カタラーゼ,スーパーオキシドジスムターゼ,グルタチオンペルオキシダーゼなど)を測定する。肝障害時には消化管内の内毒素であるエンドトキシンが血液中に出現する。そこで本研究では,血中エンドトキシン濃度についても調べ,腸内環境との関連から肝障害予防に対するユリネの作用機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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