2013 Fiscal Year Research-status Report
ユリネの腸内環境改善と生活習慣病予防作用に関する研究
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24700845
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
岡崎 由佳子 藤女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80433415)
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Keywords | ユリネ / 高脂肪食 / 腸内環境 / ラット |
Research Abstract |
我が国の伝統的食材であるユリネは,加熱して食されることが多い。そこで,加熱処理したユリネ摂取が高脂肪食摂取ラットの腸内環境に及ぼす影響について,未加熱のユリネと比較検討した。4週齢のSD系雄ラットを1週間予備飼育後,高脂肪食(30%牛脂)を基本食として,未加熱あるいは蒸し加熱したユリネ粉末を7%添加した飼料を与え,21日間飼育した。その結果,食餌摂取量と体重増加量は本食餌組成による影響を受けなかった。糞と盲腸内容物中のMucin含量は未加熱および蒸し加熱ユリネ群で顕著に増加し,糞中IgA含量も同様にユリネ関係2群で増加した。また,Mucin分解酵素である糞中Mucinase活性は,蒸し加熱ユリネ摂取によって有意に低下した。盲腸内容物中の乳酸,プロピオン酸,酢酸及び酪酸は,未加熱及び蒸し加熱ユリネ群で有意に増加し,特にコハク酸については蒸し加熱ユリネ群で顕著に増加した。盲腸内容物のLactobacillalesは,生ユリネ群で有意に増加し,蒸し加熱ユリネ群で同様の傾向が認められた。炎症性サイトカインである血清IL-6,TNF-α,大腸の発ガンに関連する酵素である糞中β-グルクロニダーゼ活性は3群間で変化していなかった。以上の結果より,蒸し加熱ユリネは,未加熱ユリネを摂取させた場合とほぼ同様に,高脂肪食摂取ラットの腸内環境を改善する可能性が示された。 脂質代謝について検討を加えたところ,腸間膜脂肪組織重量は,蒸し加熱ユリネ群で有意に減少し,副睾丸周囲脂肪組織重量も同様の傾向を示した。血清および肝臓脂質含量への影響は認められなかったが,蒸し加熱ユリネ群において糞中の中性脂肪量は有意に増加することが認められた。一方,未加熱のユリネ摂取による脂肪組織重量や糞中中性脂肪量への有意な影響は認められなかった。これらの結果より,蒸し加熱ユリネは糞中への脂肪排泄を高め,内臓脂肪の蓄積を抑制することが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画に沿って,ユリネの腸内環境と脂質代謝への影響について検討することができたため。当該年度の研究結果において,蒸し加熱処理したユリネは,生ユリネを摂取させた場合と同様に,腸管免疫賦活作用や腸管バリア機能改善作用,腸内発酵作用および腸内細菌叢改善作用を有することが新たに見出され,加熱処理したユリネが腸内環境を改善する可能性が示された。さらに,加熱処理したユリネは,ラットの脂質代謝を改善する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,ユリネの腸内環境への影響について検討を加える。今年度は,ユリネのエタノール抽出物およびその残渣物が高脂肪食摂取ラットの腸内環境に及ぼす影響を調べ,腸内環境改善に関与する画分について検討する。実験試料として,ユリネの凍結乾燥粉末, 乾燥粉末の70%エタノール抽出物及び70%エタノール抽出残渣物を用いる。70%エタノール抽出物は,抽出液を減圧下で濃縮乾固し,粉末化したものを試料とする。4週齢のSD系雄ラットを用い,高脂肪食(30%牛脂)を基本食とし,7%ユリネ粉末,0.9%エタノール抽出物及び6.1%エタノール抽出残渣物を添加した飼料を与え,数週間飼育する。腸管IgA,Mucin,大腸の発ガンに関与する酵素活性および盲腸有機酸含量への影響を検討するとともに,腸内細菌叢への影響についても検討する。前年度の研究結果より,ユリネ摂取による腸管Mucinの増加には,Mucinの分解抑制が関与している可能性が示唆されたため,遺伝子解析により腸内のMucinの分解菌の割合についても検討を加える。 ユリネの有効成分について検討するために,ユリネのレジスタントスターチおよびイヌリン含量の分析を行う。 さらに,ユリネの大腸炎への影響についても検討を行う。5週齢のSD系雄ラットを用い,高脂肪食(30%牛脂)を基本食とし,7%ユリネ粉末を添加した飼料を与える。デキストラン硫酸(DSS)を脱イオン水に添加し1週間程度投与(自由飲水)することにより,大腸炎を誘発させる。DSS投与期間中,体重増加率,Disease Activity Index (DAI)スコア,大腸の組織重量(g)/長さ(cm) などを用いて大腸炎の重症度判定を行う。また,盲腸有機酸含量,腸内細菌叢,糞中酵素活性,炎症性サイトカインについて分析を行い,大腸炎に対するユリネの作用機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の計画に沿って直接経費を使用した結果,端数金額(709円)として生じた。 翌年度分として請求した助成金と合わせ,試薬類の購入に使用する計画である。
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