2013 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病の改善効果を評価するための新規指標物質の開発
Project/Area Number |
24700859
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
奥田 徹哉 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (20443179)
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Keywords | O-GlcNAc / ob/obマウス / 高血糖 / 糖尿病 / 栄養指標 / バイオマーカー / ケトジェニックダイエット / 糖タンパク質 |
Research Abstract |
糖尿病発症への関与が示唆されているO-GlcNAc化タンパク質と高血糖が惹起する耐糖能低下や代謝異常などの慢性的な組織病変とが、どのように相関するのかを明らかにするため、食餌により血糖値を慢性的に高低にコントロールしたモデルマウスを用いて、体内におけるO-GlcNAc化タンパク質の発現動態の解析を進めた。本年度は、昨年度より引き続き確立したモデルマウスの肝臓において、その発現量が血糖値の変化に応じて変動するO-GlcNAc化タンパク質についての解析を進めた。検討の結果、インスリンシグナル経路の細胞内メディエーターであるAktキナーゼタンパク質が、高血糖下の肝臓にてO-GlcNAc化されていることを見いだし、慢性的な高血糖と相関して肝臓に蓄積していることを明らかにした。一方で、高血糖を持続的に改善したマウス肝臓では、O-GlcNAc化Aktがほとんど検出されなくなることを見いだした。AktのO-GlcNAc化は、Aktの活性化に必要なリン酸化修飾を妨害することが細胞レベルでの研究にて示唆されていいたため、Aktのリン酸化修飾についても解析したところ、O-GlcNAc化Aktが蓄積する高血糖下の肝臓では、高濃度のインスリン存在下であってもAktのリン酸化がほとんど起きていないことを見いだした。本成果は、肝臓のインスリン抵抗性とO-GlcNAc化Aktの蓄積が相関して起きることと、見いだしたO-GlcNAc化Aktの蓄積が目標とする糖尿病関連病態の改善効果を評価するための有用な指標候補であることを示している。また、O-GlcNAc化タンパク質の実用的な定量的評価系についても検討したが、市販抗体では高感度な定量化法の構築が困難であったため、新たに抗体の作製を検討したところ、糖タンパク質に対して効率よく抗体を誘導する方法の確立に成功した。この方法にて開発した抗体を用いて解析したところ、新たな指標候補物質としてシアリル化糖タンパク質を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最終年度の目標としていた指標候補O-GlcNAc化タンパク質の病態との関連について、昨年度中に成果が得られた。具体的には、有力な指標候補物質としてO-GlcNAc化Aktを同定することに成功し、O-GlcNAc化Aktの蓄積が肝臓のインスリン抵抗性と相関していることを明らかにした。本成果は2件の論文(Okuda T, et al. Nutr. Diabetes. 2, e50, 2012年、Okuda T, et al. Glycoconj. J. 30, 781-789, 2013年)として成果公表も達成した。一方で、O-GlcNAc化Aktだけでなく新たな指標候補物質としてシアリル化糖タンパク質を発見するなどの予期せぬ成果もあり、その検出に必要な抗体の開発や検出系の確立についても特許出願や学会等における成果公表を達成している。以上のように、当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、指標候補物質として見いだしたO-GlcNAc化タンパク質やシアリル化糖タンパク質の測定のための実用化に資するレベルの定量的評価法の構築と、その実用性の検証について検討する。定量化法の構築の課題として、糖タンパク質を感度よく検出するための抗体が開発されていないため、その開発を検討課題の一つとする。新たに見いだしたシアリル化糖タンパク質については、構造解析や病態との相関性について検討を進める。一方で、より高精度な指標物質開発のため、確立したモデルマウスを用いた新規指標候補物質の探索も引き続き検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の検討課題としていた指標候補物質の定量的評価系確立について、指標候補物質(O-GlcNAc化Aktタンパク質)を同定したところ、実用化に資するレベルでの評価系の確立のために高性能な抗体を新たに作製する必要があることが判明した。抗体作製は免疫実験に時間を要するため、次年度まで継続して検討する必要が生じた。また、シアリル化糖タンパク質などの新規指標候補物質を予期せず見いだしており、これらの解析のための検討が新たに必要となった。 次年度に繰り越して使用する予算は、理由欄に記載した抗体作製や開発した抗体を用いた定量的評価系の確立と、シアリル化糖タンパク質などの新たな指標候補物質の解析に使用する。新たに請求する経費は、当初の計画通り確立した定量的評価系の実用性の検証のために使用する。
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Research Products
(10 results)