2012 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫賦活作用をターゲットとした米抽出物によるアレルギー予防の研究
Project/Area Number |
24700863
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
Principal Investigator |
川上 賀代子 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, その他 (00505935)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食品機能 / 生理活性 / 免疫学 / IgA / パイエル板 / 腸管免疫 / 米 |
Research Abstract |
腸管免疫系は、体内に侵入した有害微生物、病原菌などを認識し、生体を守る役割を果たしている。腸管にはパイエル板のような特殊な免疫組織が点在し、パイエル板から産生される免疫グロブリンA(IgA)が、腸管免疫において重要な役割を果たしている。一方で、日本では食生活の欧米化により、1960年代中頃から米の生産量が消費量を上回るようになってきており、米の高付加価値化と有効利用が急務である。このため本研究は、米由来のタンパクや酵素分解ペプチドの腸管免疫系に関わる機能について、IgA産生亢進作用を指標として評価を行い、最終的には、米由来の機能性食品素材の開発を目指している。 日本産玄米、発芽玄米、米糠、米国産玄米タンパクを15hr、5%濃度で水抽出(40℃)し、抽出物を作製した。各抽出物の分子量分布をゲルろ過カラムを用いて測定した結果、各抽出物によってピークパターンが異なり、米糠抽出物に低分子のものが多く含まれていることが分かった。マウスパイエル板細胞のIgA産生誘導活性の評価は、BALB/cマウスから小腸パイエル板細胞を単離し、各抽出物を添加して培養を行った。培養7日目に培地上清を回収し、ELISA法によってIgA産生量を測定した。その結果、米国産玄米タンパク抽出物に強いIgA産生誘導活性があることが明らかとなった。さらに、米国産玄米タンパクの抽出方法の検討を行ったところ、抽出時間が長くなるほど分子量9800付近のピークが小さくなることが分かった。抽出方法の異なる米国産玄米タンパク抽出物のIgA産生誘導活性を調べた結果、15hr、5%濃度抽出物の活性が最も高かった。以上の結果から、米国産玄米タンパク抽出物に腸管免疫賦活作用があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は下記の内容で実験を行い、研究は概ね順調に進展している。 1.米タンパク抽出物、酵素分解物の調製 日本産玄米、発芽玄米、米糠、米国産玄米からタンパク抽出物の調製を試みた。食品用途かつタンパク質・ペプチドをターゲットとしているため、抽出は脱イオン水で行った。ゲルろ過カラムを用いて分子量分布を調べたところ、各抽出物によってピークパターンが異なり、米糠抽出物に低分子のものが多く含まれていることが分かった。また収率は約6%であった。玄米タンパクを各種酵素(ビオプラーゼ SP、ウマミザイム G、ペプチダーゼ R、フレーバーザイム、デナチーム)で処理し、玄米ペプチドを作成した結果、デナチーム処理ペプチドの収率が約60%と最も高かった。 2.マウスパイエル板細胞のIgA産生誘導活性の評価(in vitro) BALB/cマウスから小腸パイエル板細胞を単離し、1で調製した米タンパク抽出物と玄米ペプチドを0-100 g/mLの濃度で添加して培養を行った。培養7日目に培地上清を回収し、ELISA法によってIgA産生量を測定し、腸管免疫賦活作用を評価した。その結果、15hr、5%濃度で抽出した米国産玄米タンパク抽出物のIgA産生活性が最も高いことが明らかとなった。しかし、玄米タンパク抽出物を酵素処理した玄米ペプチドではIgA産生活性がみられなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、米国産玄米タンパク抽出物に腸管免疫賦活作用があることが明らかとなった。次年度は下記の2点について実験を行う。 1.活性成分の同定、構造解析 IgA産生誘導活性の認められた米国産玄米タンパク抽出物やゲルろ過カラムや透析膜によって分画し、活性成分の同定を行う。単一成分まで分画・精製できたら、NMRやMSおよびプロテイン・シークエンサーなどの各種機器分析を行い、構造解析する。分画、精製を行うことにより、活性がみられなくなることがあるため、分画したサンプルはマウス腸管パイエル板細胞のIgA産生誘導活性を順次評価する。 2.マウスを用いた腸管免疫賦活作用の評価(in vivo) 最も活性の高い米国産玄米タンパク抽出物をBALB/cマウスに21日間経口投与し、経日的に糞を採取する。最終日に採血と解剖を行い、パイエル板細胞、脾臓細胞を培養する。培地上清中のIgAや各種サイトカイン(インターフェロンガンマ(IFN-γ)、インターロイキン(IL)-4、IL-12)、糞中や血中のIgAをELISA法により測定し、腸管免疫賦活作用を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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