2014 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫賦活作用をターゲットとした米抽出物によるアレルギー予防の研究
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24700863
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川上 賀代子 就実大学, 薬学部, 助教 (00505935)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食品機能 / 生理活性 / 免疫学 / IgA / パイエル板 / 腸管免疫 / 米 / Th1/Th2 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管免疫系は、体内に侵入した有害微生物、病原菌などを認識し、生体を守る役割を果たしている。腸管にはパイエル板のような特殊な免疫組織が点在し、パイエル板から産生される免疫グロブリンA(IgA)が、腸管免疫において重要な役割を果たしている点に着目した。一方で、日本では食生活の欧米化により、1960年代中頃から米の生産量が消費量を上回るようになってきており、米の高付加価値化と有効利用が急務である。このため本研究は、米由来のタンパクや酵素分解ペプチドの腸管免疫系に関わる機能について、IgA産生亢進作用を指標として評価を行い、最終的には、米由来の機能性食品素材の開発を目指している。 昨年度の結果から、分子量30,000以上の玄米タンパク抽出物に活性成分が含まれていることが明らかとなった。また、玄米タンパク抽出物について経口摂取した時の腸管免疫賦活作用について検討を行い、玄米タンパク抽出物摂取によりパイエル版細胞のIgAの分泌が上昇する傾向が見られた。分子量で分画した結果、玄米タンパク抽出物の約70%が分子量3,000以下の成分であることが明らかとなった。そこで本年度では、活性成分を含む分子量10,000以上のサンプルを調製し、腸管免疫賦活作用がみられるか検討を行った。 マウスに玄米タンパク抽出物の分子量10,000以上の画分を2、20、200 mg/kgの投与量で3週間経口投与を行った。糞中とパイエル板細胞培養上清中のIgA量を測定した結果、コントロールと比較して有意な上昇はみられなかった。一方、脾臓細胞上清中のIFN-γ産生量はコントロール群に比べて濃度依存的に上昇しており、Th1/Th2バランスが有意に上昇した。この結果から、玄米タンパク抽出物の高分子画分摂取により、アレルギー改善効果が期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は産前産後休暇取得のため研究期間が短かったが、下記の内容で実験を行い研究は概ね順調に進展している。 1.分子量10,000以上の玄米タンパク抽出物の調製 サンプルを大量調製するために、透析膜を用いた。玄米タンパク抽出物を脱イオン水に再溶解させ、透析チューブ(SnakeSkin Dialysis Tubing, MWCO 10, 000)を用いて透析を行った。透析液を凍結乾燥し、分子量10,000以上の画分を調製した。 2.マウスを用いた腸管免疫賦活作用の評価(in vivo) 5週齢の雌性BALB/cマウスを1週間予備飼育後、3群(n=10-11)に分け、コントロール群には生理食塩水、玄米タンパク抽出物の分子量10,000以上の画分投与群には、2、20、200 mg/kgの投与量で3週間経口投与を行った。体重の群間差は認められず、玄米タンパク抽出物摂取による体重への影響はなかった。糞中とパイエル板細胞培養上清中のIgA量を測定した結果、コントロール群に比べて有意差はみられなかった。一方、脾臓細胞上清中のIFN-γ産生量はコントロール群に比べて濃度依存的に上昇しており、Th1/Th2バランスが有意に上昇していることから、玄米タンパク抽出物の高分子画分摂取により、アレルギー改善効果が期待できると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、米国産玄米タンパク抽出物の分子量10,000以上の画分に免疫賦活作用があることが動物実験により明らかとなった。次年度はアレルギーモデルマウスを用いた抗アレルギー作用の評価を行う。 食物アレルギーモデルマウスに対する影響の評価 BALB/cマウスに米タンパク抽出物を28日間経口投与する。投与開始14日目と21日目に卵白アルブミン(OVA)を腹腔内投与し、アレルギーを惹起する。経日的に糞を採取し、最終日には採血と解剖を行う。パイエル板細胞、脾臓細胞を培養し、培地上清中のIgA、IgEや各種サイトカイン(IFN-γ、IL-4、IL-12、IL-6)、糞中のIgAや血中のIgA、IgE、OVA特異的IgEをELISA法により測定し、アレルギー症状の改善がみられるか評価する。 さらに、これまで得られた研究成果を取りまとめ、学術論文に投稿する。
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Causes of Carryover |
産前産後休暇取得に伴い、研究期間延長を申請したため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国産玄米タンパク抽出物に免疫賦活作用があることが示唆されたため、本年度はアレルギーモデルマウスを用いた抗アレルギー作用の評価を行う。BALB/cマウスに米タンパク抽出物を28日間経口投与する。投与開始14日目と21日目に卵白アルブミン(OVA)を腹腔内投与し、アレルギーを惹起する。経日的に糞を採取し、最終日には採血と解剖を行う。パイエル板細胞、脾臓細胞を培養し、培地上清中のIgA、IgEや各種サイトカイン(IFN-γ、IL-4、IL-12、IL-6)、糞中のIgAや血中のIgA、IgE、OVA特異的IgEをELISA法により測定し、アレルギー症状の改善がみられるか評価する。
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