2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700867
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
稲田 結美 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 講師 (30585633)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教師教育 / 女子教育 / 理科学習 / 男女差 / 意識調査 |
Research Abstract |
本研究は,中学校段階において理科学習に対する女子の意識・態度が急速に低下する「女子の理科離れ」を改善するために,教師教育の観点からアプローチする方法を検討するものである。なぜなら,「女子の理科離れ」が,教師のもつ理科に対するイメージや固定観念から表出される言動によって引き起こされる可能性が少なくないからである。諸外国の先行研究においても,「女子の理科離れ」をくいとめる方法として,学習内容や環境,教授方法等の改善以上に,教師の意識の変革が最も重要であると指摘されている。 研究の初年度である平成24年度においては,教師教育の具体的方法を検討する前提となる教師の意識調査を実施した。理科授業を担当している公立の小・中学校教師約80名を対象とし,児童・生徒の理科好きの割合や,理科授業への取り組み方や態度,そして理科学力に関する男女差の認識を問う質問紙調査を実施した。調査後,その教師たちを対象に,女子の理科学習の問題点,改善の必要性,効果的な指導法等に関する1時間程度の研修を実施し,意識変容が起きたかを自由記述から調査した。その結果,研修前の教師については,理科学習における男女差に無自覚であることが多く,理科指導において女子に特に配慮することは少なく,教師の多くが男女平等に指導することの正当性を顕示する傾向にあることが明らかとなった。そして,研修後には,8割以上の教師が,理科学習における男女差を認識し,女子の理科学習に関心をもったことが明らかとなった。さらに,少数ではあるものの自らの「理科=男性」という固定観念を認めたり,女性の理科教師の増加の必要性に気づいた教師もいた。 研究実施計画において予定していた教員養成課程の学生に対する意識調査については,対象人数が300名近くになるため,平成24年度は予備調査を実施し,次年度の本調査に向けて質問紙を修正・改良する機会とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「女子の理科離れ」を改善するための教師教育の方策を検討する最初の段階として,小・中学校で理科を教える教師を対象とした質問紙調査を実施した。このような視点での調査研究は,これまで日本ではほとんど行われておらず,しかも事前の想定以上の人数を対象とすることができたため,大きな成果を上げることができた。この調査の結果は,日本理科教育学会の全国大会において発表し,他の研究者と有意義な意見交換をすることができた。しかし,その一方で,これから小・中学校の教師になろうとする教員養成課程の学生に対する理科学習の男女差に関する調査については,調査計画段階において,対象者の人数及び実施に必要とされる時間を考慮し,質問の内容を十分に検討する必要が出てきたため,本調査の前に予備調査が必要となった。そのため,当初予定していた教員養成課程の学生に対する調査は実施にいたらなかったものの,その事前準備までは完了させることができた。これらのことを総合すると,研究全体としては,おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,前年度に修正・改良した教員養成課程学生に対する質問紙調査を実施し,理科学習の男女差に関する学生の意識を明らかにする。その際,意識について男女差があるかどうかも分析する。そして,前年度の教師に対する意識調査の結果と合わせて,女子の理科学習促進のために変容すべき教師の意識および言動を指摘する。さらに,最終年度に向けて,教師の意識や言動の変容を促す方策を,諸外国の実践的研究を参考にしつつも,日本の実情に合わせて開発することを目指す。方策の開発にあたっては,女子の理科教育に関する研究のみならず,教師に起因する見えない(latent)カリキュラムや,効果的な教師教育の方法に関する先行研究についても広く収集する。また,初等教育段階の女性教師が,自身のふるまいが児童へのロールモデルとなることを自覚し,実験技能や理科指導に自信をもてるような研修プログラムを考案する。 平成26年度には,教員養成系大学の授業に,前年度に考案した方策を導入し,学生の意識や言動に変化が見られるかを調査する。方策の評価方法としては,方策の導入前後における学生の意識を質問紙や面接によって調査し,態度については授業での言動を観察・記録して分析する。 研究成果については,理科教育関連の学会にて発表するとともに,地域の教員研修会等を積極的に引き受け,研究テーマと成果を現職の教師に理解いただけるよう努力する。さらに,教師向けの教育雑誌に本研究の成果を執筆することも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)