2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700879
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Research Institution | Fukui National College of Technology |
Principal Investigator |
西 仁司 福井工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (70413771)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 組み込みシステム |
Research Abstract |
経済産業省の報告書には、組み込みシステム開発者の育成が産業界から期待されていることが記載されている。本研究は、高等専門学校(以下高専)における組み込みシステム開発者教育の有効な手法を提案、開発することを目的としている。本補助金により、より高度な制御が可能な二足歩行ロボットを導入した。その際に以下の点に配慮し、機器選定を行った。 一つ目に、高度な情報処理能力を持つロボットを複数台導入することである。音声情報処理や画像認識が容易になることで、組み込みシステムにおける複雑なアプリケーション開発に関する演習を高専の高学年を対象として実施できると考えたためである。 二つ目に、高専の低学年学生でも容易に使用でき、なおかつ本格的なプログラミングも可能な開発環境が提供されていることである。組み込みシステムは制御対象のハードウェアが備わっているため、プログラムのアルゴリズムとシステムの挙動の関係を把握しやすい。これにより、組み込みシステム開発にも必須となるプログラミングの基礎教育を、プログラミング初心者である高専の低学年学生に実施する際に有効であると考えたためである。 なお、対象となる学生がなるべく多くロボットに触れる機会を確保するため、複数台のロボットを導入した。 実施計画にあるように、ロボットを利用した組み込み技術者教育の経験のある東京工芸大学の鈴木秀和講師から助言をいただいた。またシンポジウムFSS2012の「ロボットコンテスト」セッションに参加した。これら助言やシンポジウムでの知見を活かして具体的な実施内容を検討した。また機器導入後の開発環境整備にはTAを活用し、統一した環境を準備した。教育の実施の際には、学生の同意を得てその様子を撮影し、今後の研究のまとめの際に参考とする映像資料を確保した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおり、ロボットの導入、教育環境の構築が完了した。当初計画では、平成24年度に低学年対象の基礎実験を行うこととしていたが、機種選定に時間がかかってしまったため、本校の授業スケジュールを勘案し、高学年対象の応用実験をまず実施した。まず受講者モデルとして、手続き型プログラミング言語を理解した学生を想定し、その知識を用いて組み込みシステムのプログラムを開発する4週の演習を設計、実施した。 初めに対象となる二足歩行ロボットの制御プログラム開発環境を紹介し、簡単なサンプルプログラムを用意してプログラムの開発から実装、動作の評価までの一連の流れを教えた。次に、ロボットの無線ネットワークインタフェースを利用するプログラム、カメラ画像を取り込むプログラム、関節を動かすプログラム、それぞれの作成手法を演習にて紹介した。これらロボットの基本制御プログラムを組み合わせた高度な情報処理技術を実装させることを最後の演習とした。具体的には、ロボットの前でピンク色のボールを動かしたときに、それに追随してロボットを動かすという制御である。 以上の演習では、ロボットに実装されているアクチュエータやカメラ、ネットワークインタフェースなどのハードウェアを強く意識した制御プログラムを作成する必要がある。作成したプログラムを評価するためには、そのたびごとに実行ファイルをロボットに転送する必要がある。このような考え方や手順を通して、組み込みシステム開発への理解を促した。実験後の学生の感想には、「開発の大変さが身に染みた」「ハード側の動作条件がわからないとプログラム上では問題がなくても正常に動かないことが分かった」という記述があった。 このように1年目の研究では、高専の高学年学生に対して組み込みシステム開発者教育に関する本手法の効果をある程度確認できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
高専低学年学生に対する教育手法を設計する必要がある。高学年学生と異なり、プログラミングの知識がほとんどない受講者を想定し、ロボット制御を通してプログラミングの基礎を学習できる実験を計画する。具体的には、アルゴリズムの構築に必要な「遂次処理」、「条件分岐」、「繰り返し」という3つの考え方をプログラムに実装させる。通常これらプログラミング学習では、計算機の画面上に結果を表示させるプログラムを対象学生に作成させる。そして、所望の画面表示ができているかどうかでプログラム動作を検証することが一般的である。ロボットを利用したプログラミング学習では、プログラムの動作をロボットの物理的な動作や音声で検証することができる。そのため、アルゴリズムの流れを肌で体験することができ、初心者がプログラミングを学習する際の大きな助けになることが期待できる。プログラミングの基礎を学ばせる中で、組み込みシステムに関する基本的な知識と、その開発の特徴的な部分についても適宜解説を行う。一方、前述した高学年対象の実験は10月からの後期に配置されており、次年度の後期実験でも同様の実験を継続して実施する。 最後に、これまでの研究成果をまとめる必要がある。実験から得られた学生の提出レポートや撮影した実験の様子などから、組み込みシステムの理解がどの程度進み、どのような理解に効果があるのか検証する。特に高学年と低学年での理解の仕方、想定した受講者モデルに適した教育が実施できたかについて確認する。評価の際には、教育実施計画策定の際に助言いただいた東京工芸大学の鈴木講師にもご意見をいただく。これら研究結果をある程度まとめ、ロボットを利用した教育に関するセッションがある国内会議で発表を行い、会場から広く意見をいただく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)