2012 Fiscal Year Research-status Report
動画像を布置した遠隔相談場面における感情情報の伝達に関する実証的検討
Project/Area Number |
24700890
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岸 俊行 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (10454084)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 信頼形成 / 遠隔カウンセリング / 感情情報 / 信頼 |
Research Abstract |
本研究課題では、近年の情報通信ネットワークの整備を背景に,心理臨床場面や相談業務場面において,ネットワークを利用した援助活動を有効に行うための基礎研究を行うことを主たる目的としている。その目的遂行のため、以下の3つのステップで研究課題を促進させていく事としている。まず、第一段階として、相談場面における感情表出や感情の伝達、さらには信頼感の形成がどの容認されているのかを明らかにすること、第二段階として、疑似的遠隔カウンセリング場面を構築し、それらの場面で感情表出や感情の伝達がしっかりと行われているかの検証を行う。また、そのような状況において、信頼感が対面と同様に形成されているのかの検討も行う。第三段階として、実際のカウンセリングを遠隔で実践することで、その問題点や課題等を明らかにしていく。 研究課題の初年度は、感情の伝達がどのように行われているのか、また、それらを基にした信頼感の形成がどうおこなわれているのかを、実験と質問票を用いた調査によって明らかにした。その結果、対面場面においては、人は意識的,無意識的にかかわらず表情をはじめとするノンバーバルコミュニケーションを手掛かりにして、対面者を判断していることが明らかとなった。しかし、信頼形成に関しては、人によって信頼の意味するところが異なることが明らかとなった。また、その信頼を形成するまでの間に必要とするステップが個人の特性により影響されることも明らかとされた。本研究で明らかとなった点は、従来の対面カウンセリングにおいては、自明のことと思われていたことであり、あまり研究テーマとして取り上げられることの少ないテーマであった。しかし、本研究で明らかになったように、カウンセリングや相談業務において重要になる信頼の形成に関して、まず、何がその形成要因になるのかを明らかにしていく事は非常に意義のあることといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、以下の3つのステップで行うこととしている。まず、第一段階として、相談場面における感情表出や感情の伝達、さらには信頼感の形成がどの容認されているのかを明らかにすること、第二段階として、疑似的遠隔カウンセリング場面を構築し、それらの場面で感情表出や感情の伝達がしっかりと行われているかの検証を行う。また、そのような状況において、信頼感が対面と同様に形成されているのかの検討も行う。第三段階として、実際のカウンセリングを遠隔で実践することで、その問題点や課題等を明らかにしていく。 研究初年度では、基礎研究である第一段階と遠隔カウンセリングの実験を行う第二段階の準備を行う予定となっていた。実際に基礎研究である第一段階は簡単な対面コミュニケーションの実験及び質問紙を用いた調査を計画通りに行った。しかし、並行して行っていた遠隔カウンセリングの準備に関しては、若干の遅れが生じている。東京の早稲田キャンパス及び帝京短期大学のキャンパスを結んで行う予定であるが、インフラの整備でいくつかつまずいており、まだしっかりとネットワークが構築できていない。それぞれの学内でのLANの設定に起因していることが明らかになっているため、次年度に早々、実施する必要がある。しかし、ネットワークの構築以外における遠隔カウンセリングの準備はおおむね順調に進んでおり、ネットワークが福井と東京との間で結び次第、実験が可能な状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、ネットワークインフラの整備拡大を背景に、遠隔カウンセリング・遠隔相談を実践すること、さらには、その実践のために検討しなければいけない課題を明確化することを目的としている。研究課題の2年目に当たる今年度の研究課題は、遠隔での擬似的なカウンセリング環境下でのコミュニケーションにかかわる基礎実験を行うことを主課題としている。具体的には、福井と東京という物理的・空間的に離れた2地点でそれぞれに実験協力者を募り、実際に両地点をネットワークで結んだ状態でコミュニケーション活動を行う。そのコミュニケーション活動の中で、感情をどのように表出するのか、感情情報がどのように相手に伝わるのか、信頼感が形成されるのかの3点に焦点化して、対面でのコミュニケーションと比較することによって明らかにしていく。また、今年度は前年度の課題である、福井-東京間のネットワーク環境の構築に関して、完了していないため、本年度、早々に行う必要がある。そのため、早急にネットワーク環境の整備を行う。来年度は、今年度の研究知見で明らかになった、遠隔カウンセリング(遠隔相談)の問題点について、まとめ、それらを踏まえたうえでの遠隔カウンセリングの実践の方法および限界の提案を行う。また、実際に行っている相談業務をネットワーク上で行うことを試みる。実際に遠隔での相談業務を行い、相談後にクライエントおよびカウンセラーへインタビューを行うことで、遠隔カウンセリングおよび遠隔相談の実施に関する課題を明確化していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は当初、予定していたインフラの整備に若干の遅れが生じ、本来テストを行う予定だった実験が行えなかった。その影響で、24年度の予算に残余が生じてしまった。25年度は、6月までには、24度に行う予定であったインフラの整備を東京側(早稲田大学側)で行い、実験環境を整える。残余の金額はそのための旅費に充当する。 25年度の実験計画では、主に2つの実験を行う予定である。1つ目の実験は、福井‐東京という物理的に離れた2地点間を結んで、遠隔でのコミュニケーション活動を通じて、どのように信頼感が形成されるのかを明らかにするものである。もう一つの実験は、福井内で、同様の実験計画によって、対面におけるコミュニケーション活動を通じ、どのように信頼感が形成されるのかを明らかにし、その結果を遠隔コミュニケーションと比較を行う。 それらの実験を行うため、月1回、定例の会議を東京の早稲田大学で行う予定である。そのための旅費として充当を予定している。また、2回の実験を東京,福井で予定している。被験者を60人予定しており、更に、その実験データの整理をする人の雇用として謝金の充当を予定している。その他、著作権つきの尺度の購入(物品費)や実験の際に利用する消耗品に充当する予定である。
|
Research Products
(1 results)