2013 Fiscal Year Research-status Report
初等中等教育における道徳性の発達段階や学習者特性を考慮した情報モラル指導法の開発
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24700892
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
梅田 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70345940)
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Keywords | 情報モラル / 指導法 / 授業実践 / インターネットリテラシー |
Research Abstract |
平成25年4月末まで育児休業を取っており、7月から研究を再開した。この期間に行ったことは次の4つである。 (1)情報モラルの指導により何の向上を目的にするかについて、関連する分野の文献調査を行った。その結果、特に知恵を磨く領域において、数学で考えられている道具的理解(記憶している規則を機械的に応用する力)と関係的理解(一般的な関係から特殊な手続きを引き出せる力)が、情報モラルにも応用できるのではないかと導き出された。 (2)前々年度から試行を繰り返している作問演習による情報モラルの授業実践を2013年11月と12月に別の高等学校で、上記(1)の関係的理解の向上を目指して行った。実践の結果、何を道具的理解と定義づけるか、また関係的理解と定義づけるかにあいまいさが残っていることがわかった。さらに、体験的学習と作問演習と関係的理解の3つの関係を整理する必要がわかった。 (3)平成25年度からの新しい実績としては、中学1年生を対象にタブレットPCを用いたレディネス調査を行った。なぜなら、子どもたちの携帯電話、特にスマートフォンの利用率は急激に増加しており、スマートフォンを使った問題は情報モラルの対象であるからである。また、タブレットPCは情報モラルの指導のツールとして用いる可能性もあるからである。一方、教育の情報化においては、小学校6年生までにコンピュータの操作の基本的なスキルを身につけるとしている。そこで、まずは、小学校過程を終えた中学校1年生を対象に、PCとタブレットPCを用いて、基本的操作がどこまで使えるのかの調査を行った。その結果、タブレットPCの方がPCよりも使用率が低いにも関わらず、基本的操作が行える場面が多いことが明らかになった。 (4)これまでの研究結果を、全国大会等で発表し、また紀要への投稿を行った。また、2014年度4月に行われる国際会議への投稿も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由としては次の二つである。(1)この研究は、設計したものを実践を通して評価し、改善するサイクルを繰り返す実践的な研究アプローチをとっている。それを着実に実行できている。(2)さらに、授業実践は、相手校が存在することから、制約も多くこちらの思い通りにならないことも多々ある。しかし、その中でも両者の実践において、次への改善点や知見が見いだせた。 具体的には、昨年行った実践と改善点は次の2つである。 まず、昨年もこれまでと同様に高等学校において2度の授業実践を行うことができた。そしてこの結果、研究実績の概要で述べたとおり、情報モラルにおける道具的理解と関係的理解の定義の明確化、さらに、体験的学習と作問演習と関係的理解の3つの関係を整理するという平成26年度に新しく改善すべき点が明らかになった。 次に、昨年は新しくタブレットPC利用に対するレディネスチェックを中学校で行えた。教育現場でタブレットPC等を使った教育をするにあたって、生徒らがタブレットPCに対してどのような意識や実技レベルを持っているかを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、これまでの研究結果から、指導法を作問演習と体験型学習に絞って研究を進めていく。作問演習では、まず学習目標となる情報モラルの関係的理解と道具的理解の定義を行う。そもそも基となる数学領域においても、この二つの理解の解釈は研究者によって異なる見解を持つ。まずは、どの見解を支持するかを決め、それらを情報モラルに応用させていきたい。これに基づいてテストを作成し、授業計画を立てる。一方、体験型学習についても研究を進める。体験型学習においては、知識のみならず、たとえばSNSに対する活用意識や利用不安などの意識や態度も研究対象に含める予定である。 さらに、両者において、学習目標となる概念の定義を進める中で、どのような学習者特性と関連があるかを探し、それを説明変数として挙げていく。そのうちのいくつかを取り上げて併せて調査を行いたい。どちらも12月を目途に授業実践を行い、次年度へとつなげていく予定である。尚、当初の予定通り、この実践や研究、評価は、本学の初等・中等教員養成の学生や大学院生と共に行う。 平成27年度は、本研究で対象とする学習者特性を絞り込み、それに合った学習者や学年を対象に実践を行う。必要であれば、異学年での実践を行い、比較も行う。さらに、平成26年度の定義に基づいて、学習目標の評価の仕方についても検討する。平成28年度はこれまでの研究成果のまとめと検証の年とする。 さらに、すべての年度に渡って全国大会や研究会、国際会議などで随時発表を行い、成果の発表と他の研究者からの情報収集を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
育児休業の取得に伴い、一時研究を中断していたため、残額が生じた。 平成26年度は、作問演習や体験型学習によって育成する学習目標の概念を定義、学習者特性の候補を挙げること、授業計画、実践、改善である。そのため、それらに関連する文献、特に学習目標の概念や学習者特性に関する文献調査のための費用に使用する。 次に、授業実践のための、教材費、交通費、謝金に用いる。昨年度からタブレットPCをツールとして使用することも始めているため、タブレットPC等の追加購入を行う。さらに、本研究は、学生や卒業生の教員とともに行うため、人件費や謝金等に用いる。尚、授業実践に参加する学生の数によっては、移動のためにバスの借り上げ等も検討する。 さらに、研究結果を国内の学会で報告し、最新動向の把握や意見交換等を積極的に行う。また紀要等への投稿も行う。そのため、研究成果の発表にかかる費用、別刷り代、場合によっては英語論文の翻訳や校閲費に使用する。
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Research Products
(4 results)