2015 Fiscal Year Research-status Report
初等中等教育における道徳性の発達段階や学習者特性を考慮した情報モラル指導法の開発
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24700892
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
梅田 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70345940)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 情報モラル / 指導法 / 授業実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小学校高学年から高校生までの発達段階や学習者特性を考慮した情報モラルの指導法の開発と、授業実践による評価である。これに基づき、平成27年度は教員を目指す学生とともに情報モラルに関する4種類の指導法を開発・提案し、実践と評価を行った。指導法の概要は、以下のとおりである。 1つ目は、電子商取引における作問演習を用いた指導法である。本年度では学習形態に着目し、協同で作問演習を行う群と個人で行う群を比較した。その結果、協同で作問をした方が、下位群の人数が有意に少ないことが分かった。2つ目は、情報モラル教材の題材に対するイメージの違いの研究である。具体的にはメールの差出人を保護者、先生、友人と変えて授業を行った。その結果、相手に対するイメージにより差が出る結果となった。ただし、複雑な結果となっているため、この結果を再分析したいと考えている。3つ目は行動指針を立てる支援システムの開発とそれを用いた実践を行った。実践において高校生は実現可能な行動指針を立てることができたが、具体性に乏しい行動指針も多くあり、目指す行動指針を定義する必要性が明らかになった。4つ目は、非対面ロールプレイが非対面のコミュニケーションに及ぼす効果に関する研究である。依頼の場面を取り上げ、アサーショントレーニングに非対面ロールプレイを取り入れ、DESC法の4ステップで依頼文を評価した。その結果、非対面ロールプレイを用いた群の方が依頼の描写の得点が高いことが分かった。 上記の研究ついては学会で発表をし、論文としても公表した。これらの結果は情報モラル教育を行う上で役立つと考えられる。また、当初の計画でも挙げたようにこれらの研究は教員養成の学生と行っており、既に小中学校の教員となった者もいる。彼らが研究したことを教育現場で活用していく可能性があるという点でも意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の方法として、指導法を設計し、実践し、検証し、改善するサイクルを繰り返す実践的、開発的な研究アプローチをとっており、それを着実に実行できていることが「おおむね順調に進展している」の理由としてあげられる。具体的な達成度は次のとおりである。 数年にわたり続けてきた商取引を対象とした作問演習を用いた指導法については、これまでの研究で、通常の問題解決演習に比べて関係的理解(一般的な関係から特殊な手続きを引き出させる力)を促進することが期待されることがわかった。これらの結果を全国大会で発表するとともに、学会へ論文として投稿し掲載されたことで一定の目標を達成したと考えている。 次に、情報モラルの題材の違いに関する研究は、前年度の研究で「身近さ」を感じる体験の方が授業後の態度が向上することが明らかになった。この結果を紀要として公表した。一方、身近さの定義が難しいため、それを改善し、題材に対するイメージの違いによる検証を中学校と高等学校で行った。当初の目標に挙げていた同じ実践を発達段階の異なる学校で行うことを実践できた。ただし、結果が複雑であるため、再度分析をする必要がある。 さらに、新しい観点からも、指導法を開発・実践した。情報モラルに対する行動指針を立てる研究では、オットー・シャーマーが提唱した「U曲線モデル」を用いて学習の流れを組み立て、それを支援するシステムを開発し、高等学校で実践を行った。この研究過程を学会でその都度発表した。また、アサーショントレーニングに着目し、通常は対面で行われるロールプレイに対し、非対面でのロールプレイを取り入れることの効果を検証した。平成27年度は大学生で実験的に実践を行った。平成28年度以降に結果を発表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は最終年度であるため、これまでの研究をまとめる方向で進めていきたい。いくつかの指導法については、今年度も実践と評価を行う予定である。 まず、作問演習については、前年度に論文としてまとめたため、今年度は実践は行わない予定である。また、題材のイメージに関しては、前述したとおり、複雑な結果となっているため、結果を再分析、再検討したいと考えている。U曲線モデルを用いた情報モラルの行動指針を作成する実践に関しては、まずは、目指す行動指針の定義を明らかにし、28年度前半に高等学校で実践を行う予定である。その結果をまとめて論文投稿を目指したい。また、アサーショントレーニングを用いた非対面ロールプレイに関する研究は、まずは再実験を28年度前半に行いたいと考えている。それからの結果をまとめて、発表をしていきたいと考えている。 さらに、近年多く発表されるようになってきた情報モラル研究の方向性を検討し、本研究においてこれまで行ってきた情報モラルの指導法の位置づけを明確にしたいと考えている。 尚、この実践や研究、評価は、当初の予定通り、本学の初等・中等教員養成の学生や大学院生と共に行う。また、さらに、全国大会や研究会、国際会議などで随時発表を行い、成果の発表と他の研究者からの情報収集を積極的に行う。また、論文や紀要への投稿を行い、結果の公表を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
旅費と謝金が予定していたよりもかからなかった。理由としては、発表場所が近かったことがあげられる。また、謝金に関しては実験よりも実践が多く、謝金が前年度よりもかからなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究計画は、平成27年度で実践をした指導法のうちの一部を再度検証することと、これまでの研究成果の位置づけを明らかにするため、近年の情報モラル研究の方向性を検討することである。 そのため、近年の情報モラル研究に必要な文献収集や、調査を行うために使用する。次に、授業実践のための、教材費、交通費、謝金に用いる。また、新しい実践校になる可能性もあるため、学校に合わせた物品を購入する。さらに、本研究では、学生や卒業生の教員と行うため、謝金に用いる。なお、授業実践に参加する人数によってはバスの借り上げ等も行う。また、実験のために謝金を支払う可能性もある。さらに、研究成果を学会で報告し、最新動向の把握や意見交換を積極的に行う。また、紀要や論文誌等への投稿も行う。それらの研究成果の発表にかかる費用、別刷り代、場合によっては英語の論文の翻訳費や校閲費に使用する。
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Research Products
(6 results)