2016 Fiscal Year Research-status Report
初等中等教育における道徳性の発達段階や学習者特性を考慮した情報モラル指導法の開発
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24700892
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
梅田 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70345940)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報モラル / 指導法 / 実践 / ルール作成 / オンラインコミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小学校高学年から高校生までの、発達段階や学習者特性を考慮に入れた情報モラルの指導法の開発と、授業実践による評価である。これに基づき平成28年度に行った研究の成果は次の通りである。 まず、指導法の開発と授業実践による評価に直接的に関連する研究として以下の2つの研究を行った。1.前年度より進めていたU曲線理論を用いたルール作成型の改善した指導法を提案し、それに基づいた高等学校における実践を7月に行った。そして、それまでの実践をまとめた研究発表と、論文投稿を行った。その結果、学会誌に資料として採録された。その後、12月にも視点の異なる新しい実践を行った。2.アサーション・トレーニングやその中で採用されているDESC法を、対面だけでなく非対面となるオンラインコミュニケーションへ取り入れた前年度の実践研究結果について、研究発表を行い、紀要としてまとめた。また、10月にこの研究を進捗させた予備実践を行った。 次に、指導法の開発の基礎的な研究として以下の2つの研究を行った。3.中国の小学校で情報科の教員をしている教員研修留学生を受け入れ、中国の小学校における情報モラル教育について、国際学会で研究発表を行った。また現在、それらをまとめた論文を投稿中である。4.これまでに発表されている情報モラルの論文をCiNiiから収集・分析し、大まかな傾向を明らかにした。継続して詳細な分析を続ける予定である。 上記の結果は、情報モラル教育を上で役立つものと考えられる。また、当初の計画でも挙げたように、これらの研究は教員養成の学生や現職の教員と行っている。そのため、研究科結果だけにとどまらず、彼らが研究したことを教育現場で活用していく可能性があるという点でも意義や成果があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の方法は、指導法を設計・実践・検証・改善するサイクルを繰り返す、実践的、開発的な研究アプローチをとっている。昨年度も2つの研究で上記のように進めることができた。さらに平成28年度は研究をまとめる方向で進めることを目標としていた。その結果、それぞれにおいて論文や紀要にまとめることができ、目標を達成できたことが「おおむね順調に進展している」の理由としてあげられる。具体的な達成度は次の通りである。 1年半に渡り3回の実践を行ったU曲線理論を用いたルール作成型指導法に関する研究では、行動基準を立てるための学習プロセスを定義でき指導法として提案することができた。これらの成果をまとめて論文誌に投稿をし、資料として採録された。ただし、論文査読の過程で考え方の異なる助言を受けたため、それを反映させた新しい実践を12月に行った。今後も継続して研究を進めていく予定である。 また、アサーション・トレーニングに非対面ロールプレイを取り入れ、オンラインコミュニケーションの向上を目指す研究では、非対面ロールプレイを行うと描写が増えることが明らかになった。この前年度の実践の結果をまとめたものを全国大会で発表し、紀要として公表した。一方、ロールプレイの不十分さが見られたため、DESC法に力点をおいた指導法で、予備的な実践を大学生で行った。しかし、想定よりもかなり時間がかかる等の改善点が見つかったため、計画を再検討中である。 さらに、中国の小学校における情報モラル教育について2つの視点からまとめた。1つ目は小学校での情報科教育である。日本では高等学校に情報科があるが、中国では小学校から情報科の授業があり、その教育内容を明らかにした。次に、中国のInternet+行動計画が情報モラルの教育について与える影響を、プラスの側面とマイナスの側面から分析した。現在、これらをまとめた結果を投稿している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるため、本研究をまとめる方針で進める。まずは上記研究の成果3.に書いた中国の小学生を対象とした情報モラル教育に関する投稿中の論文を公表したいと考えている。 次に、アサーション・トレーニングのDESC法を非対面ロールプレイに適応し、オンラインコミュニケーションの向上を目指す研究については、昨年の後半に行った予備的な実践で明らかになった問題点を改善し実践を行う。具体的な問題点として、計画よりもかなり時間が必要であること、評価方法や評価観点のあいまいであることが明らかになった。時間に関しては、実践を複数回に分け、ロールプレイで使用する文章を事前に用意する仕組みを検討中である。評価の方法や観点に関しては、学習者が非対面でやり取りするコメントを、ポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかという感情特性という新しい指標を入れて考えていく予定である。これらの改善案を取り入れた授業実践を平成29年度前半に行いたい。場合によっては、まずは被験者を募り実験として計画を遂行することも考えている。いずれにせよ、平成29年度中には、DESC法をICTなどを介した非対面ロールプレイで行えるような指導法を提案できるようにしたい。 さらに上記研究の成果(4)で挙げた論文の分析も進めたいと考えている。特に実践研究の内容を分析するフェーズについては、一度大まかに目を通した段階であり、評価の方法や学習目標などに対して、一定のタグ付けができた状態となっている。これらに基づいて再度内容を検討し、論文分析の詳細を進めていきたい。 なお、この研究の継続研究として申請した科学研究費の課題が通ったため、単年度で終わらせるのではなく、少し視点を変えて、さらに深めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
旅費と謝金が予定していたよりも安くなったため、次年度使用額が生じた。理由としては、まず発表場所が近かったことが挙げられる。また、謝金に関しては、予備的な実践を行った段階で計画をやり直す必要性があったため、本格的な実践を延期したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の主な研究計画は、平成28年度に投稿中の論文と、実践を延期した研究の授業実践を行い、結果をまとめることである。 そのため、まずは、投稿中の論文が通った場合は、論文掲載費等に使用する。 次に、授業実践のための、教材費、交通費、謝金に用いる。また、実験のために謝金を支払う可能性もある。さらに、場合によってはオンラインコミュニケーションを行うためのソフトや通信費、関連するICT機器を購入する場合もある。また、研究成果を学会で報告し、最新動向の把握や意見交換を積極的に行う。また、紀要や論文誌等への投稿も行う。それらの研究成果の発表にかかる費用、別刷り代、場合によっては英語の論文の翻訳費や校閲費に使用する。
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Research Products
(5 results)