2013 Fiscal Year Annual Research Report
明治・昭和三陸津波に関する知識・情報・記憶―科学史・科学技術社会論的分析
Project/Area Number |
24700925
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 凡性 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (30419337)
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Keywords | 津波 / 記憶と忘却 / STS |
Research Abstract |
本研究の目的は、科学史及び科学技術社会論(STS)の研究方法を用いて、災害に関する知識・情報・記憶の歴史的なダイナミズムについて考察することである。災害の忘却と関連しては「記憶の風化」という観点から論じられる場合が多いが 、本研究は、災害体験の忘却を単に時間の経過による「記憶の風化」としては見なさず、忘却が実際に行われる社会・文化的な文脈に注目する点に特徴がある。昨年度は主に三陸沿岸の津波がローカルな文脈においてどのように伝えられてい(なかっ)たのかについて調査を行ったが、本年度は知識生産の側面をも射程に入れて分析を行った。agnotology(無知に関する研究)によると、科学に関する知識や記憶も社会・文化的な文脈の中で起きるダイナミックなプロセスである。本年度はこのような観点に注目しつつ、特に地震学者の今村明恒(1870~1948)に対する評価について考察した。今村は一般に「関東大震災の預言者」や「地震予知の先駆者」として語られる傾向があり、また三陸海岸の津波被害を軽減する方法を模索したことでも知られているが、彼に対する科学者コミュニティの評価は必ずしも肯定的なものではない。このことは、災害の軽減をライフワークとしていたある科学者が忘却されていくとともに、当該科学者が生産した知識も忘却されていった可能性を示唆している。なお本研究は、瀬戸口明久「境界と監視のテクノロジー」『情況』第4期2巻第6号、2013年12月、43-57頁で引用されている。
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Research Products
(5 results)