2012 Fiscal Year Research-status Report
保存処理された遺跡出土木材の正確な放射性炭素年代測定法の確立
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24700930
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
西本 寛 愛知大学, 法学部, 助教 (40609757)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / 保存処理 |
Research Abstract |
本研究は、保存処理された遺跡出土木材の放射性炭素年代測定を可能とすることを目的としている。特に、polyethylene glycol(PEG)及び糖アルコールの一種であるラクチトールを保存薬剤とした場合の年代測定を可能とするための方法論の開発を主眼に置いている。平成24年度は、PEG含浸木材の放射性炭素年代測定を可能とするため、PEG除去方法の開発及び除去処理後の残存PEGの検出・定量方法を探るための実験を実施した。その結果、PEGは洗浄処理によって約1.0wt%まで除去することができた。また、1.0wt%と極微量にPEGが残存している状況であっても、Py-GC/MSによって得られるマススペクトルから、PEGと木材成分とが明確に分離できることが明らかとなった。すなわち、洗浄処理後の試料にPEGが残存しているか否かを検証するための手段として、Py-GC/MSが有効であることが示された。これに加えて、Py-GC/MSによるPEGの定量分析のための基礎データを集積した。ラクチトール含浸木材についての分析は、平成25年度中に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、主にPEG含浸木材をターゲットとして、最適な洗浄方法の選定およびPy-GC/MSによる検出・定量化を予定していた。現時点では、洗浄方法については水に加えて有機溶媒、特にベンゼンによる洗浄が効果的であることが確かめられた。検出については、Py-GC/MSによって1.0wt%のPEGを検出することができた。これは、当初の計画通りの成果であり、本研究がおおむね順調に進展していることを示す。定量分析については検量線を作成している段階であり、やや計画よりも遅れている。 ラクチトール含浸木材については、各種条件下での試料の洗浄作業を終えているが、洗浄効果を見積もるための放射性炭素年代測定が完全に完了していない。ラクチトール試料の分析は当初から平成25年度を中心に進めることを想定していたので、大きな遅延は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の現在の問題点は、残存薬剤の定量分析である。平成24年度はPEGの定量分析に向けた検量線を作成したが、PEG残存濃度既知の試料をもとに定量試験を行うと、約1.0wt%のズレが生じる結果となった。この原因として考えられるのは、残存薬剤の木材への浸透状況の違いであろう。すなわち、検量線作成用に木材に添加したPEGと、元々木材に含浸していたPEGでは熱分解の容易さに差異が出るのだと考えている。熱分解温度を上げるか、熱分解促進試薬の添加によって、この問題は回避できる可能性が高い。そこで、平成25年度は計画通りラクチトール含浸試料の分析を進めるとともに、PEG及びラクチトール定量化のための最適な測定パラメータを探ることに重点を置いた研究を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な物品は平成24年度に購入しているため、国内・国外での学会発表や国際誌への論文投稿費といった研究成果報告が、平成25年度に計画している研究費の主要使途である。その他の予算としては、放射性炭素年代測定やPy-GC/MSを実施するための消耗品代への支出を予定している。
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