2013 Fiscal Year Annual Research Report
保存処理された遺跡出土木材の正確な放射性炭素年代測定法の確立
Project/Area Number |
24700930
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
西本 寛 愛知大学, 法学部, 助教 (40609757)
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / PEG / ラクチトール / 熱分解GC/MS / 保存科学 |
Research Abstract |
保存処理された遺跡出土木材は、これまで放射性炭素年代測定の対象として捉えられてこなかった。それは、保存処理時に木材に含浸させる薬剤が有機化合物であり、保存処理は放射性炭素年代測定にとって炭素汚染となるためである。本研究では、保存処理された木材の正確な放射性炭素年代測定を目的とした。対象とした保存薬剤は、国内で出土木材の保存処理に用いられることの多いPEGとラクチトールである。まず、PEG及びラクチトールが木材の年代にどのような影響を与えるのかを知るために、年代の明らかな木材にPEG及びラクチトールを含浸させ、その放射性炭素年代を測定した。PEG含浸木材は真の年代よりも古い年代を示し、ラクチトール含浸木材については真の年代よりも新しい年代値が得られた。両者ともに、遺物の放射性炭素年代を狂わすことが確認された。PEG含浸木材については、各種洗浄方法を用いてPEG除去処理を行ったうえで再度放射性炭素年代を測定した。しかし、いずれの洗浄方法でも測定値は真の年代よりも古い値を示した。これまでに試した方法・条件では、年代値に影響を与えないレベルでの薬剤除去を行うことはできなかった。残存する薬剤を定量化することができれば、たとえ薬剤が残存していても年代補正をして正しい年代を算出することができる。そこで、Py-GC/MSによる薬剤の定量分析を行った。まず、PEGのパイログラムを測定し、ピーク面積から検量線を作成した。PEG濃度とピーク面積には正の相関がみられた。この検量線を用いて実際にPEGが2%残存する木材試料のPEG濃度を求めたところ、残存量は約1%であった。数千年前の試料に適用することは難しいが、約1万年前以前の試料であれば実際に利用することのできる手法と考えられる。
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