2012 Fiscal Year Research-status Report
自然共生型博物館における野外由来微生物の浮遊真菌濃度予測に関する研究
Project/Area Number |
24700931
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
間渕 創 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 客員研究員 (80601195)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保存環境 / 文化財 / 生物被害 / 博物館 / 自然共生 / 浮遊真菌測定 / IPM |
Research Abstract |
自然共生型博物館の施設内における浮遊真菌濃度予測が本研究の目的であり、三年間の研究期間を計画している。三年計画のうち第一年次である本年度は、自然共生型博物館の施設内において検出されるカビを主とした浮遊真菌のうち、大きな浮遊真菌の発生源である、施設周囲の里山など、野外を由来とするものの判別が必要となる。本年度は植生や環境をもとに選定した地点の、浮遊真菌測定によるモニタリングを継続的に行い、浮遊真菌濃度の推移と菌叢の比較を行うことで、博物館を囲む野外微生物環境の標準化を行った。 野外浮遊真菌測定を行う地点として、自然共生型博物館を目指す①現在再生中の新三重県立博物館里山、里山同様に「人が管理する雑木林」である三重県津市内神社の②鎮守の森、人の手が加わっていない山間部の③森林、モデル施設とする新三重県立博物館は比較的海に近いため、その影響を判断するための④海岸及び、参考地として博物館の最寄の⑤市街地の計5地点を選定し、これらの地点において年間を通じた浮遊真菌測定を毎月行った。 コロニー数とサンプリング容量から浮遊真菌濃度を求め、各地点の浮遊真菌濃度の年間推移について相関係数を算出し比較を行った。また捕集されたカビについて単離・培養し、形態観察による属レベルの菌種同定を行い、各地点の菌叢の比較を行った。この結果、a)①新博里山⑤市街地、b)②鎮守の森③森林、及びc)④海岸の3タイプに分類された。 自然共生型博物館を囲む里山などの野外微生物環境の標準化として、b)鎮守の森や山間部森林の浮遊真菌濃度年間推移と菌叢のタイプがベースとなるという成果が得られた。また現在再生中の新博里山は、c)海岸からの影響は少なく、a)市街地の影響を強く受けているが、次第にb)鎮守の森や森林に近似した微生物環境へ遷移していくものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は3年計画の第1年次であり、自然共生型博物館の施設内において検出される微生物のうち、野外由来微生物であることの判別を可能にするため、複数の里山や鎮守の森において、微生物モニタリング、植生調査、気象モニタリングを継続的に行い、野外微生物環境の標準化を行うことを当該年度の目標とした。なお、この標準化作業は平成26年度まで継続した測定を行い、年毎の気象による影響を軽減することとしている。 地理的条件や植生などの条件を設定したうえで浮遊真菌測定の実施場所の選定し、継続的な浮遊真菌測定の実施した。浮遊真菌濃度推移の相関、微生物フローラ解析による野外浮遊真菌の標準化を行い、本研究で次年度以降の研究を行うモデル施設とする新三重県立博物館の里山における野外微生物環境を設定することができた。これらのことから、当初の計画通り研究を進めることができたと考えている。 ただし、培養に適さない菌種も多く捕集されていることから、再現性の高い標準化のためには、計画の最終年次である平成26年度までの継続的な測定と共に、浮遊真菌濃度算出や菌種同定については、手法を含め引き続き検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
三年計画のうち第二年次となる次年度は、引き続き野外微生物環境の標準化行うと共に、計画通りモデル施設内での野外由来微生物の浮遊真菌濃度(実測値)と気流測定による浮遊真菌予測濃度(計算値)の比較・評価を行い、最終年次には、実際の博物館活動が行われている状況での検証を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り研究は進捗し、その成果が得られているが、研究進捗に伴い培養に適さない菌種が多く捕集されており、さらに再現性の高い野外微生物環境の標準化のためには、浮遊真菌濃度算出や菌種同定の手法について検討が必要であったため、研究費使用を一部延期した。この課題を解決するために、次年度は当初計画していた同定委託とともに、個別の菌種同定を見込んだうえで同定委託費を執行する。
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