2013 Fiscal Year Research-status Report
文化財保護法の成立過程に関する研究―日本における文化財概念と史跡名勝天然記念物―
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24700932
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
境野 飛鳥 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, アソシエイトフェロー (80622092)
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Keywords | 文化財保護法 / GHQ / 史跡名勝天然記念物 |
Research Abstract |
日本の文化財保護法は、第2次世界大戦前に施行されていた国宝保存法、史蹟名勝天然紀念物保存法、重要美術品等ノ保存ニ関スル法律を統合し、新制度として1950年5月30日に公布、同年8月29日に施行されたものである。GHQの占領統治下の日本において、こうした新しい法律が作成された背景には日本側専門家の努力のみならず、GHQの影響もあったことが知られており、申請者はこれまでこれまで日本の国立国会図書館に所蔵されている『GHQ/SCAP資料』を中心にGHQ/SCAPの専門家の残した史料の調査を続けてきた。 平成25度は、これらGHQ/SCAPの専門家の背景を調査するため、アメリカ・ワシントンの国立公文書館(United States National Archives and Records Administration, NARA)にて史料調査を実施した。また、日本の文化財制度を研究している米国の研究者に対し聞き取り調査を実施し、これまでの研究成果を共有した。アメリカでの調査を通じて、多くの情報を得ることができたが、同時に平成26年度もアメリカでの調査を継続する必要があることが明らかとなった。 国内調査としては、昨年度に引き続き、「国家記念物保存法案」や国立国会図書館所蔵の『GHQ/SCAP文書』の調査を実施した。特に「国家記念物保存法案」はこれまで系統立てて分析はされてこなかったものであり、その位置付けを検討することにより、今後の研究の基盤を築くことができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本の文化財概念の成り立ちを一次史料に基づき改めて実証的に検証するものである。そのため、多くの史料調査を実施する計画を立てていたが、現在までのところ、予定していた調査項目を順調に達成している。 また、国外調査においては、当初想定していたよりも詳細なヒアリングを実施することができた。 さらに、科研申請時よりイタリア人研究者と共に戦後の文化財保護について研究を進めており、関連する論文が雑誌に掲載されることになっていたが、翻訳等の関係でこれまで出版が遅れていた。平成25年末にようやくこの出版が実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
国内調査、国外調査ともに、予定していた調査を実施しているが、依然として多くの調査候補地が残されている。また、調査先で新たな調査候補地が明らかになることも多く、取り組むべき課題は多い。平成26年度が最終年度であることを考慮し、優先順位を付けて、調査を進める必要がある。 国内調査については、国宝保存会、重要美術品等調査委員会、史蹟名勝天然紀念物調査会、文化財保護委員会等、文化財保護に関する戦前戦後の政府の諮問委員会に所属していた各委員の個人資料の調査を優先する。 国外調査については、平成25年度の調査では訪れることのできなかったアメリカ美術アーカイブズ(Archives of American Art)、アメリカ文化財保存修復学(American Institute for Conservation, AIC)を優先する。 こうした調査と並行しつつ、前年度までの調査で明らかになった、新史料の特徴と、当時の国内外の文化財概念を踏まえ、日本の文化財保護法において史跡名勝天然記念物が文化財と定義されるまでの成り立ちを分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の想定より、旅費が少なく済んだため。 時間の都合で行けていない遠方の調査を実施する。
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Research Products
(1 results)