2013 Fiscal Year Research-status Report
絵画修復と絵画制作に使用される膠の物性に関する基礎的研究
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24700933
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
楠 京子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, アソシエイトフェロー (20609820)
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Keywords | 膠 / 剥落止め / 接着力 / 柔軟性 / 絵画修復 / 絵画制作 |
Research Abstract |
収拾した膠の水分、灰分、油脂分、不溶解分の測定および膠水溶液の粘度、融点、凝固点、pHの測定を、昨年度に引き続きJIS規格6503に定められている手法に基づいて行った。各膠に対して、膠の接着力・柔軟性の評価をするために、万能試験機(オートグラフ)を用いた圧縮強度試験、3点曲げ試験、さらに付着性(クロスカット)試験の物性試験を行い、JIS規格による膠の化学組成分析結果と物性試験結果の関連性について考察を行った。 また、膠の使用感等の官能試験を行うために、紙本絵画を想定して作成したサンプルを用いて、各膠の接着力や水への再溶解性、柔軟性などについて試験を行った。今後絹本絵画や板絵等を想定した絵画サンプルを作成し、同様の試験を行う予定である。 さらに、絵画書籍の修復を行っている修復工房の協力を得て修復作業の現場を拝見させていただき、膠の使用状況についての知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に予定していた実験作業のうち、絹本絵画や板絵等を想定した絵画サンプルの作成が行えず、膠の接着力や水への再溶解性、柔軟性などについての試験が行えなかった。その他の調査、実験作業についてはほぼ予定通り行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行うことができなかった絹本絵画や板絵の絵画サンプル作成を、修理技術者、絵画制作者の協力を得て早期に作成し、膠の接着力や水への再溶解性、柔軟性などの試験を行う。 また、各試験を行ったそれぞれの絵画サンプルについて、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて、試験箇所での膠の剥離状態、溶解状態等について表面観察、断面観察を行う。 これまでに行った、化学組成試験、物性試験、絵画サンプルを用いた官能試験の結果をまとめ、絵画修復、絵画制作に膠を使用する際の使い分けの基準について考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験作業の遅れによって、平成25年度に予定していた絹本絵画や板絵等を想定した絵画サンプルの作成を行うことができなかった。そのため、絵画サンプル作成のための材料費や役務費用に繰り越しが生じた。 平成25年度に行うことができなかった絹本絵画や板絵の絵画サンプルを、修理技術者、絵画制作者の協力を得て早期に作成し、膠の接着力や水への再溶解性、柔軟性などの試験を行う。
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