2014 Fiscal Year Research-status Report
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24700934
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Research Institution | The National Museum of Western Art, Tokyo |
Principal Investigator |
高嶋 美穂 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 研究補佐員 (80443159)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エライザ / ELISA / 展色材 / 膠着材 / メディウム / タンパク質 / 植物ガム / 絵画材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
手法の改善:ブランクの吸光度の低減のため、一部の抗体はブロッキング液をBSAに変更した(他はSea Blocking)。また、一部の抗体は1次抗体の濃度を低下させた。さらに、基質添加後、吸光度を測定するまでの時間を抗体によって変えた。 分析:昨年未着手であった2種の抗植物ガム抗体(Jim13、Mac285)について検討。検出限界は数ng~50 ng/100μLであった。 市販の膠製品について、選択した複数の抗コラーゲンⅠ抗体の反応を調べた。膠製品にはラベル記載の動物種とは異なる種を原材料とした製品が多数あることがわかっていたので、奈良女子大学においてMALDI-MS法により実際の原材料を明らかにしてもらった。そのうえで各抗体の反応を調べた結果、ヤギをホストとする抗体ab19811(抗原:ヒト由来コラーゲンⅠ)はウサギ、ブタを原材料とする膠に対して感度が高いが、羊皮紙膠に対して感度が低かった。一方でウサギをホストとする抗体ab34710(抗原:ヒト由来コラーゲンⅠ)は羊皮紙膠を検出できるが、ウサギを原料とする膠は検出できなかった。これは自己抗原に対して免疫寛容の作用が働いているためと考えられる。原材料を確認する前は、原材料動物種と抗体の反応の間に整合性が見いだされなかったので、膠の製法により抗体の反応が左右されているのかと考えていたが、それは商品名と実際の原材料動物種が異なっていたためであって、やはり原材料動物種によって抗体の感度が左右されるようである。また、卵黄の検出のために抗ホスビチン抗体を試してみたが、3.5~4年しか経年させていないレプリカサンプルにおいても卵黄の検出はできず、ひとまずあきらめた。 アフガニスタン情報文化省および東京文化財研究所文化遺産国際協力センターより提供を受けたアフガニスタン・バーミヤーン壁画の試料から、卵白、植物ガム、カゼインなどを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エライザ法は、米国・ゲッティ保存研究所で用いられているプロトコールをもとにしているが、手法や判定法の改善により実験の再現性、同定の精度が上がっていると考えられるため。また、今年度は自作の絵画レプリカ試料の分析により、エライザ法で膠着材が正しく同定できていることを確認でき、さらにバーミヤーン遺跡から採取したサンプルの分析を行ったところ、タンパク質と植物ガムの同定に至ったため。
しかし、エライザ法と併行して行う予定であったGC/MSによる分析については、機器不調のためや時間不足でほとんど行えず、来年度に持ち越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
美術作品や遺跡から採取した経年したサンプルの分析数をふやして、エライザ法で同定可能なケース・不可能なケースを把握するとともに、同定に必要なサンプル量を明らかにしていく。
選択した抗コラーゲンⅠ抗体がどの動物種の膠に反応するのか/反応しないのか、どういった製法の膠には反応するのか/あるいは反応しないのかを明らかにしていくために、原材料が明らかな膠製品を用いたり、自分で動物の骨や皮からコラーゲンⅠを抽出して抗コラーゲンⅠ抗体の反応を調べていく。現在使用している抗コラーゲン抗体は羊皮紙、シカ膠、ウシを原料とする膠の一部に反応が弱いので、適切な抗体を検討する。また、アイシングラスに反応する適切な抗体を検討する。
GC/MSを稼働させ、分析を進める。最終的には脂肪酸、蛋白質、植物ガムの同定をGC/MSとエライザ法の併用で行うことが目標だが、第1段階として、来年度は脂肪酸(油、樹脂、蜜蝋)同定ができるようにする。
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Causes of Carryover |
H25年2月28日から6月30日まで産前産後の休暇と育児休業を取得した。これに伴い補助事業期間を1年延長してH27年度までに延長したため、実験の計画と予算の使用計画を変更したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
補助事業期間1年間延長したため、翌年度分の助成金はなし。 H27年度はエライザ法の実施のための抗体や試薬の購入と、GC/MSのメンテナンス、バイヤルなどの消耗品の購入を行う。抗体は半年から1年間しか保管することができないため、現在手元にある抗体が期限切れを迎えており、買いなおす必要がある。
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Research Products
(3 results)
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[Book] Scientific Studies on Conservation for Uzumlu Church and Its Wall Paintings in Cappadocia, Turkey2015
Author(s)
Piao Chunzu, Shunsuke Fukakusa, Ryo Higuchi, Chiemi Iba, Kazuki Kawahara, Keigo Koizumi, Natsuko Kugiya, Shigekazu Mizukoshi, Takeshi Nakazawa, Ayako Ogawa, Katsuhiko Sano, Mina Shibata, Yoshiko Shimadzu, Tamaki Suzuki, Miho Takashima, Yoko Taniguchi, Jennifer Porter, Kunio Watanabe
Total Pages
175
Publisher
Maeda Printing co.