2015 Fiscal Year Annual Research Report
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24700934
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Research Institution | The National Museum of Western Art, Tokyo |
Principal Investigator |
高嶋 美穂 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 研究補佐員 (80443159)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エライザ / ELISA / 展色剤 / 膠着剤 / 蛋白質 / 植物ガム / 抗体 / 絵画材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体の検討:植物ガム検出用の抗体2種について、その反応性(どの種の植物に反応するか)を確認した。また動物膠用、魚膠用の抗体については、新しくいくつかの抗体を試したが、これまで使用してきた抗体よりも適切な抗体を見つけることはできなかった。 経年した絵画レプリカサンプルの分析:動物膠を展色剤とするサンプルの一部は抗体への反応が弱くなった。顔料や経年がどのように影響しているのかは今後の課題だが、実試料でも動物膠の検出がうまくいかないケースがあることが予想された。 実試料の分析:バーミヤーンなどの仏教壁画から採取した試料25点(サンプル数としては30点)を分析し(前年度、今年度2年間の合計)、17点において卵白、動物(魚)膠、カゼイン、植物ガムを検出した。これらの試料はGC/MSやSR-μFTIRによる分析により、ごく一部の試料において動物(魚)膠や卵黄が存在する可能性が指摘されてきたが、今回のELISA分析により、多数の試料において初めて蛋白質の種類が同定でき、さらに植物ガムの存在も確認できた。ミルクカゼインと植物ガム(トラガカントではない)の検出数が多かったことが特徴である。これらの試料は5~8世紀後半のものであるので、今回の結果は、経年したサンプルにおいてもELISAを用いた膠着剤の分析が有効であることを示している。分析に使った試料は500 μg~1 mgである。これらの試料は微小であり層を分離せずに分析しているため、今回検出した蛋白質や植物ガムがどの層に含まれるのかは不明だが、バーミヤーンなどの壁画は乾性油(GC/MSにて確認済)、蛋白質、植物ガムの層を重ねた複雑な重層構造をしていることが改めて確認できたことは、材料・技法の解明や文化の交流などを考えるうえでも重要な意味をもつ。 GC/MS分析については機器の調子が悪く、検討を進めることができなかった。
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Research Products
(3 results)