2012 Fiscal Year Research-status Report
限界集落再生をめざした博物館を核とする地域資源ナレッジマネジメントに関する研究
Project/Area Number |
24700938
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
青柳 かつら 北海道開拓記念館, 学芸部, 学芸員 (30414238)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地域資源 / ナレッジマネジメント / 博物館 |
Research Abstract |
過疎・高齢化により日本の中山間地域では、住民の社会生活の維持や地域資源の管理が危機に瀕している。地域の人材と知識を活用して、住民がそこに暮らす誇りを生み出す、博物館を核とした地域資源管理システムの手法を明らかにすることを目的に、北海道のA町郷土資料室をモデルとして、以下を実施した。 1 地域資源の抽出とマップ化:資料室ボランティア(24 名)内に作業チームを組織して、「地域資源マップ」の体裁や内容を検討した。合わせて、同ボランティアと協働で、地域の魅力を再認識する現地踏査会とワークショップを開催して、同町の地域資源をリスト化し、マップ案をまとめた。同マップは平成25年夏期に印刷・配布予定である。 2 地域ナレッジの形式知化:農林業と結びついた地域ナレッジ変容の把握のため、町内の農林業経験者(60 代~80 代)を対象に、生業暦や自然利用に伴う知識について聞き取りを行った。合わせて、博物館資料と地域ナレッジの関連付けのため、同ボランティアによる技術の再現によって、鋸や斧、紡毛機といった資料室資料の手入れ方法や使用法を映像記録した。 3 地域ナレッジを活用した地域活性化事業の展開と効果測定:資料室が行う中学校総合学習支援と生涯学習事業(計4回)に参画し、トビリシ宣言を応用して作成した評価指標にて、参加者とボランティアスタッフへのアンケート、中学校教員への聞き取りを行って事業効果を測定した。その結果、同事業は、生徒の地域への関心や楽しむ能力の定着、スタッフの地域づくりへの関心、参加意欲や実行力の向上等に効果があり、学習効果の持続には、事後学習を支援する人材・機関の継続的な協力の重要性が明らかになった。 4 支援ナレッジの形式知化:上記3の運営手法を記録したほか、次年度の予備調査として、先進事例岩手県宮古市(旧川井村)の地域づくりアドバイザーを対象に、支援ナレッジの聞き取りを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の各項目とも、ほぼ遅滞なく実施できている。 資料室ボランティアを対象に、本研究の地域活性化事業を評価するアンケートを行ったところ、「来年以降も子供達への教育活動を続けたい」「A町の地域資源について学ぶ活動にもっと参加してみたい」が80~90%を占めたり、「地域資源マップづくりに参加して新たな世界を知った」「多くの人に同町の良さを知って欲しい」といった回答がみられた。当該研究の効果として、地域づくりへの意欲や達成感が高まってきている。 また、早期から情報発信や人脈づくりを行った結果、研究代表者は、「道北の地域振興を考える研究会」および、日本森林学会テーマ別セッションより講演依頼を受け、研究成果を話題提供する機会を得た。道北天塩川流域の地域づくり関係者や環境教育分野の研究者との討論を通じて、限界集落化をとどめ、地域づくりを継続的に行う方策の一つとして、若者の雇用先や定住志向の基盤となる地域の個性を再生すること、楽しみや遊び心を大切にすること、そして経済効果が得られ現役世代が参画できることなどが重要であり、その展開手法の1つとして、地域ブランドの確立や山村ツーリズムといった視点を得ることができた。住民協働による地域資源ガバナンスの仕組みを明らかにする当該研究は、これらの展開の基盤となるものであり、研究の重要性や成果について、情報発信・意見交流できた。加えてこの「道北の地域振興を考える講演会」には、資料室職員やボランティア会員がほぼ全員参加し、流域内の関係者と意見交流を行うことができた。このように次年度以降に予定した流域内の交流や成果の情報発信についても、計画に先駆けて着手することができた。 先進事例調査については、当初計画と比べて若干実施が遅れているが、予備調査によって岩手県下の調査対象の絞り込みや情報収集ができた。 以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1 地域ナレッジの形式知化:農林業と結びついた地域ナレッジ変容の把握のため、モデル地であるA町にて、引き続き、地域内の高齢者、現役農家・林家への聞き取りを行い、両者の差異を把握する。博物館資料と地域ナレッジの関連付けについても、データベース整備を継続して実施する。 2 地域ナレッジを活用した博物館による地域活性化事業の展開: 平成25年度夏期を目標に「地域資源マップ」を完成させる。完成したマップ(2,000部予定)は町内外に配布して、秋期以降はこのマップを活用しながら、他セクターおよび流域内の他地域と連携して、教育事業、生涯学習事業を実施する。事業の効果測定については、スタッフアンケート、参加者アンケートを継続して実施して、学習活動の主体、客体の意識変容について明らかにする。 3 支援ナレッジの形式知化:中山間地域における地域資源活用事例調査として、北海道下川町、岩手県宮古市北上山地民俗資料館と野外エコミュージアムである「木の博物館」、山形県朝日町等を訪問し、支援ナレッジを把握する。モデル館であるA町郷土資料室の支援プログラムについても継続して記録する。 4 研究成果の公開・普及:流域内への情報発信を継続して行うほか、エコミュージアム研究会での研究発表、札幌市など道内都市部で研究成果の公表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、調査消耗品一式(CD-RW、SD カード、USBメモリー、野帳、書類整理用チューブファイルなど)の購入のため、5万円を使用する。 旅費については、札幌-士別について、ナレッジ聞き取り、地域活性化事業打合わせ・開催(2 泊3 日×5 回)のため17.1万円を使用する。次に先進事例調査について、札幌-下川町、札幌-山形、札幌-岩手県(2 泊3 日×3 回)の調査のため、19.9万円を使用する。最後に学会参加旅費について、札幌-東京(2 泊3 日)、8万円を使用する。ゆえに旅費として計45万円を使用する。 人件費・謝金等については、資料整理のため、1 人×20 日間、15万円を使用する。 その他については、印刷製本費(地域資源マップ2,000 部:9万円)、学会参加費(0.5万円)、車両借上費(1 台×2 日間:1.5万円)のため、計11万円を使用する。 以上より、次年度は、直接経費として総計76万円を使用する。
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Research Products
(3 results)