2013 Fiscal Year Research-status Report
限界集落再生をめざした博物館を核とする地域資源ナレッジマネジメントに関する研究
Project/Area Number |
24700938
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
青柳 かつら 北海道開拓記念館, 学芸部, 学芸員 (30414238)
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Keywords | 地域資源 / ナレッジマネジメント / 博物館 / 映像 / 教育評価 / 地域資源マップ |
Research Abstract |
過疎・高齢化により日本の中山間地域では、住民の社会生活の維持や地域資源の管理が危機に瀕している。地域の人材と知識を活用して、住民が暮らす誇りを生み出す、博物館を核とした地域資源管理システムの手法を明らかにすることを目的に、北海道のA町郷土資料室をモデルに、以下を実施した。 1 地域資源の抽出とマップ化:マップ製作作業チームでの作業を継続し、会議と関連行事13回を経て2013年7月、地域資源マップが完成した。マップ4000部を町内外に配布した結果、マップ製作を担ったボランティアへの注目が集まり、新聞報道などを通じて、地域資源を活用した活動実績を情報発信する機会を得た。マップを入手した地域づくり関係者からは、評価や期待を得ることもできた。マップは郷土資料室への来室者を増やす効果もあった。同町公民館らの発案により、完成したマップの普及のため、研究代表者を講師に、同町住民対象の講演会を実施することもできた。 2 地域ナレッジの形式知化:農林業、森林資源利用と結びついた地域ナレッジの把握のため、町内の農林業経験者(60 代~80 代)を対象に、生業暦や資源利用に伴う知識の聞き取りを行った。同ボランティアによる技術再現によって、トビなど運材道具の使用法、山菜の調理法を映像記録した。 3 地域ナレッジを活用した地域活性化事業の展開と効果測定:2012年度から継続して資料室が行う中学校総合学習支援と生涯学習事業(計4回)に参画し、参加者と指導者へのアンケート、中学校教員への聞き取りを行って事業効果を測定した。 4 支援ナレッジの形式知化:上記1のマップ製作経緯と支援ナレッジは論文にとりまとめ、研究成果を発信した。上記3の運営手法を継続して記録したほか、先進事例調査として、岩手県宮古市の資料館、北海道下川町のNPO法人を対象に、地域資源を活かした地域づくり活動の運営手法の聞き取りを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の各項目とも、ほぼ遅滞なく実施できている。 資料室ボランティアを対象に、地域資源マップをはじめとする本研究の地域活性化事業を評価するアンケートを行ったところ、異世代交流や地域交流に役立つ点、町の魅力を再発見できた点などで、マップを高く評価していた。ボランティアの地域づくりへの参画意識は、特に関心の獲得に向上が見られたほか、マップ製作前後で高く保持された。完成したマップを普及する講演会には、A中学校全校生徒28名を含む70名の聴衆が得られた。講演会に参加した中学生の感想文には、地域資源への訪問意欲や町の歴史を評価する価値観の形成が見られた。このように、本研究の地域活性化事業は、知恵の蔵運営委員や中学生の朝日町への関心や愛着を高めたり、知恵の蔵運営委員の地域づくりへ参画意識などを高く維持するなど、「暮らしの質」を向上させる部分で効果が認められた。 先進事例調査においては、地域の住民との連携により、地域資源を活かした「体験型展示」を運営の主眼に据えた博物館活動、そして森林資源を教育やセラピーの題材としてソフト開発を行い、多様かつ継続的に活用する地域づくりの活動事例の知見を得ることができた。 本研究の成果は、第125回日本森林学会大会(さいたま市)での口頭発表、市民団体と連携しての成果報告会(札幌市)のほか、士別市(2件)で講演したり、『北海道開拓記念館紀要第42号』『山つくり 平成25年度号』『北海道北部の地域振興no.14』『第125回日本森林学会大会 学術講演集』掲載論文としてとりまとめ、道内外の博物館・資料館関係者、森林・林業関係者、地域振興関係者、森林教育関係者などに幅広く普及を図っている。 以上より研究は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1 地域ナレッジの形式知化:農林業と結びついた地域ナレッジ変容の把握のため、モデル地であるA町にて、引き続き、地域内の高齢者、農家・林家への聞き取りを行い、両者のナレッジを把握する。博物館資料と地域ナレッジの関連付けについても、情報整備を継続して実施する。 2 地域ナレッジを活用した博物館による地域活性化事業の展開:完成した地域資源マップを活用しながら、他セクターおよび流域内の他地域と連携して、教育事業、生涯学習事業を実施する。事業の効果測定については、スタッフアンケート、参加者アンケートを継続して実施して、学習活動の主体、客体の意識変容について明らかにする。 3 支援ナレッジの形式知化:中山間地域における地域資源活用事例調査として、岩手県宮古市北上山地民俗資料館にて継続して情報収集を行い、支援ナレッジを把握する。モデル館であるA町郷土資料室の支援プログラムについても継続して記録する。 4 研究成果の公開・普及:流域内への情報発信を継続して行うほか、日本森林学会等での研究発表等、足寄町など道内山間地域で研究成果の公表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、他業務との兼ね合いで旅費及び謝金が計画値よりも少額となったことが理由である。しかし、既述のように、研究計画の各項目とも、ほぼ遅滞なく実施できており、口頭発表や講演、論文等によって、当該研究の成果が得られている。研究計画は適正に遂行されていると考える。 物品費は、調査消耗品一式(CD-RW、SD カード、USBメモリーなど)の購入、統計解析ソフト購入のため、10.9万円を使用する。旅費は、札幌-士別について、ナレッジ聞き取り、地域活性化事業打合わせ・開催(2 泊3 日×5 回、1泊2 日×2 回)のため21.5万円を使用する。次に先進事例調査は、札幌-岩手県(2 泊3 日×1 回)の調査のため10万円を使用する。最後に学会参加旅費は札幌市内0.2万円を使用する。ゆえに旅費として計31.7万円を使用する。人件費・謝金等は、資料整理、報告書作成のため、1 人×20 日間、15万円を使用する。その他は、印刷製本費(博物館・資料館向け研究成果報告書A4判24ページ30 部予定およびCD配布:20万円)、学会参加費(0.5万円)、車両借上費(1 台×4 日間:3万円)のため、計23.5万円を使用する。 以上より、次年度は、直接経費として総計81.1万円を使用する。
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Research Products
(5 results)