2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700961
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白川 龍太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50581039)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低分子量GTP結合タンパク質 / Ral |
Research Abstract |
Ral(Ras-like)は、Rasファミリーに属する低分子量GTP結合蛋白質であり、細胞の増殖、生存、小胞輸送の制御など様々な機能を担っている。近年の多くの知見は、発癌性Rasにより誘導されるヒト正常細胞の癌化にはRasシグナリング下流でのRalの活性化が必須であることを示している。しかしながら、Ralの活性化がどのようにして細胞の癌化につながるのか、その分子メカニズムについては明らかでない。本研究ではRalによる細胞癌化の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究により申請者はラット脳細胞質中にGTP型Ralに特異的に結合する新規キナーゼ活性を見いだした。 本年度はオートラジオグラフィーによる本キナーゼp50の自己リン酸化を指標として、連続カラム分画法によりp50キナーゼを単一にまで精製し分子同定することを目標とした。予備精製実験により、本キナーゼ活性は、硫安沈殿分画、陰イオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、陽イオン交換カラム、およびゲル濾過カラムにより収量を損なうことなく分離できることが明らかとなった、これらの精製過程を組み合わせることで本キナーゼをほぼ単一にまで精製することが可能になったと考えられる。 また、膀胱癌ではRalの不活性化因子Ral GTPase-activating protein(RalGAP)α2サブユニットの発現が喪失しており、その結果Ralが異常に活性化していることを見いだした(Saito et al, Oncogene, 2013)。Ralは膀胱癌の悪性化に関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くのキナーゼは、活性化の過程でホモ2量体化し自己リン酸化することが知られている。申請者はGTP型RalA結合蛋白質中に自己リン酸化能をもつ分子量50 kDaの分子(p50)を見いだした。本キナーゼは、GDP型RalAには結合しない。また、GTP型RalBや他のGTP結合蛋白質Ras、Rap、Rho等にも結合しないことからRalA特異的な標的分子であることが明らかである。 本年度はオートラジオグラフィーによるRal結合キナーゼp50の自己リン酸化を指標として、カラム分画法によりp50キナーゼを精製することを目標とした。予備精製実験により、本キナーゼ活性は、硫安沈殿分画、陰イオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、陽イオン交換カラム、およびゲル濾過カラムにより収量を損なうことなく分離できることが明らかとなった、これらの精製過程を組み合わせることで本キナーゼをほぼ単一にまで精製することが可能であると考えられる。 p50キナーゼのゲル濾過での見かけの分子量は約600 kDaと巨大であり、ペプチド鎖長より予想される分子量の10倍以上であることから、p50は他の蛋白質と何らかの複合体を形成していると予想される。カラム分画法によりp50キナーゼ活性を完全に精製することで、p50複合体を構成する因子を全て同定することが可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Ral結合キナーゼが同定されれば遺伝子クローニングを行い、リコンビナント蛋白質あるいは合成ペプチドを用いて抗体の作製を行う。p50キナーゼおよび、その複合体の構成要素を大腸菌発現系、あるいはバキュロウイルスを用いた昆虫細胞発現系より精製し、GTP型Ral存在下での自己リン酸化反応をin vitroで再構成する。ペプチドマッピング、質量分析、変異体解析等により、p50の自己リン酸化部位を特定する。リン酸化部位が同定されればリン酸化ペプチドを用いてリン酸化p50特異的抗体を作製する。自己リン酸化部位に変異を入れた変異体は、活性化型あるいは不活性型変異体としての利用が可能であると考えられる。また、p50の欠失変異体等を用いてRalAの結合部位、結合に必須なアミノ残基を決定し、RalAと結合しない変異体を作製する。 活性型変異体H-RasG12Vにより癌化させたヒト不死化細胞を用い、RNA干渉法によるp50キナーゼの発現抑制や、活性型、不活性型p50キナーゼ変異体の発現が足場非依存性増殖(軟寒天培地中での基質との接着に依存しない増殖)、およびヌードマウス皮下での増殖に与える影響を検討する。レンチウイルスを用いたRNA干渉発現系、H-RasG12Vの発現系、軟寒天培地やヌードマウスを用いた実験系は既に確立している。同様の実験をヒト癌細胞株を用いて行い、ヒト癌におけるRalA/p50キナーゼシグナリングの重要性を検討する。 p50キナーゼおよび、その複合体構成要素を用いたアフィニティークロマトグラフィー法により基質候補の探索を行う。また、RalAやp50キナーゼを抑制した細胞を32Pにより代謝ラベルし、その細胞抽出物の2次元電気泳動/オートラジオグラフィーにより基質を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Journal Article] Downregulation of Ral GTPase-activating protein promotes tumor invasion and metastasis of bladder cancer2013
Author(s)
Saito R, Shirakawa R, Nishiyama H, Kobayashi T, Kawato M, Kanno T, Nishizawa K, Matsui Y, Ohbayashi T, Horiguchi M, Nakamura T, Ikeda T, Yamane K, Nakayama E, Nakamura E, Toda Y, Kimura T, Kita T, Ogawa O, Horiuchi H
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Journal Title
Oncogene
Volume: 32巻
Pages: 894-902
DOI
Peer Reviewed
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