2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞接着の安定化を用いたヒトがん細胞の直接浸潤抑制の研究
Project/Area Number |
24700962
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
栗山 正 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30398226)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 直接浸潤 / 遠隔転移 / 細胞接着 / 集団移動 |
Research Abstract |
細胞シートの変形・移動・浸潤を可能にする機構の解明を目指し、まず細胞接着を制御する遺伝子として新たに発見したLipoma Preferred Partner (LPP)遺伝子についてがん細胞における遺伝子機能阻害を行った。肺腺がん由来の悪性腫瘍細胞株PC14PE6のLPP機能阻害によってN-cadherin依存的な細胞接着が劇的に安定化することを見出した。LPPはアクチン結合タンパクであり、細胞移動などにもその機能が示唆されているが他方転写因子の補助因子としても働く事が報告されている。しかしながらがんにおける役割は解明されていない。 まず最初に細胞の特性の変化を調べるためにこの転写因子の機能について調べた。するとEts転写因子であるEtv5の転写及び局在変化を引き起こし、この遺伝子が機能しないように変化していることが考えられた。そこでLPPとEtv5の両方の機能阻害細胞を比較し、協調して制御されている細胞外マトリックスプロテアーゼMMP-15を発見した。MMP15は膜貫通型のメタロプロテアーゼ分子であり、類似の分子であるMMP-14 (MT1-MMP)は細胞外に分泌されるタイプのメタロプロテアーゼ分子MMP-2もしくは9の成熟に必要な分子であるのに対し、N-cadherinを直接切断していることを発見した。さらに培養条件下においてはコントロール細胞よりも細胞間接着の強いシートを形成するのでより静的な変化と思われたが、生体内での挙動はより強く組織に浸潤し、肺における原発巣から転移巣を形成する活性が高くなっている事が分かった。以上の結果をまとめて論文を作成中である。またこの結果は集団移動する細胞シートを形成する際にLPPが無くなる事が重要であることを示しており、さらに研究をすすめたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では移動しない細胞シート(Static/Stable)から集団で移動する細胞シート(Motile)への変化(SMT)を担う分子に注目して研究を進める予定であった。しかしながら、LPPの機能阻害の表現形は2次元培養条件下においては静的な細胞シートの特性を示していたものの、生体内における挙動は動的な細胞シートの様態を示す事が明らかになった。この点においてLPP増減の変化がSMTのトリガーそのものであることは少なくとも二次元培養下では無くなった。しかし生体内においてはその変化を反映している可能性がある。今後は生体内での細胞集団の挙動をうまく再現できる3次元培養を多用することによって研究を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
StableシートではなくMotileシートとしてのLPPノックダウン細胞 当初の予定ではLPPノックダウン細胞はStableシートとしての特性を持つと考えられていた。しかしながら生体内やがんを取り巻く間質細胞(CAF)の存在下では刺激によりMotileシートへ変化している可能性もある。そこで二次元培養条件下においてN-cadherinを取り巻く分子構造を明らかにしていき、二次元下でもMotileシートとして移動する条件を見つける。 細胞移動のライブイメージング 細胞接着の異常な安定化は立体狭窄における細胞集団の移動を阻害する。2つの接着モードが存在するかについてまず明らかにするために細胞移動のイメージングを経時的に行い、会合しているタンパクの機能評価系を確立する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画にあった細胞イメージング用の設備備品費に関しては大学の共通機器刷新が予定されているため、その形式に合わせてすすめる事にした。よって今年度の物品費の残額を平成25年度に執行される物品費と合算し、消耗品と予定していたイメージング用のツールを購入する設備・備品費に充当する。 その他の24年度予算の残額分も各項目毎の25年度予算に合算する。
|