2012 Fiscal Year Research-status Report
乳癌幹細胞およびニッチにおけるEGFシグナル伝達制御の解析
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24700968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水谷 アンナ 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30615159)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 |
Research Abstract |
癌幹細胞の維持にEGFシグナルやFGFシグナルが重要であるといわれているが、未解明な部分も多い。本研究は、EGFシグナルやFGFシグナルに加え、iPS細胞において幹細胞性の維持との関わりが示唆されているTGF-betaシグナルをはじめ、Wntシグナルや癌において炎症との関わりがあるTNF-alphaなどのシグナルに着目し、幹細胞様の性質との関わりについて明らかにすることを目的とする。 本研究について、本年度の進展は、癌幹細胞様の性質を評価できる実験系の構築として、スフィア培養の系を立ち上げ、またスフィア培養できるヒト乳癌細胞株の選定を行った。Luminal型のヒト乳癌細胞株としてMCF7細胞を、Basal型のヒト乳癌細胞株としてMDA-MB-231細胞を用いて、スフィア培養を行った。また、TGF-betaシグナルは乳癌の転移において、上皮―間葉転換に関わり転移を促進していることが言われている。この上皮―間葉転換が、癌幹細胞の維持に関わっていることが示唆される報告がある。これを踏まえ、TGF-betaにより上皮―間葉転換を起こすことが知られているマウス乳腺上皮細胞であるNMuMG細胞を用いて、スフィア培養を行った。スフィア培養では、スフィアの数は癌幹細胞の数を表し、スフィアの大きさは娘細胞の増殖を表していると考えられている。TGF-betaまたはTGF-betaの阻害剤であるSB431542を添加して、スフィア培養したところ、TGF-beta刺激下でスフィアの数が増加し、スフィアのサイズが大きくなった。SB431542添加により、スフィアの数が減少した。このことから、TGF-betaシグナルは癌幹細胞の数にも、娘細胞の増殖にも関与していることが示唆され、TGF-betaシグナルが癌組織の階層性に関わることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スフィア培養の実験など細胞株を用いたin vitroにおける検討の一部は順調に進行している。しかしながらin vivo実験については、乳癌細胞株のヌードマウスの乳腺脂肪組織への同所移植については、移植が難しい細胞があり、実験に使用する細胞株と移植モデルの変更をしなければならなくなった。その結果、アウトプットとしての評価も変更が必要となった。具体的には、MDA-MB-231細胞の皮下移植等では、ヌードマウスへの生着が難しいため、MDA-MB-231-D株を使用することとなった。MDA-MB-231-D株はMDA-MB-231派生株から、さらに高骨転移株として樹立された細胞である(Ehata et al. 2007)。MDA-MB-231-D株はヌードマウスの左心室に注入すると、血行性の骨転移が認められる。評価系を同所移植モデルから、骨転移モデルへと変更することになり、動物実験に関しては、現在、ヌードマウスの左心室への細胞懸濁液の注射の手技の獲得を行っている。細胞株を用いたin vitro実験の検討より得られたデータから、新たに乳癌幹細胞に重要であると思われる因子に着目し、研究を進めており、研究は伸展している。NMuMG細胞を使ったスフィア培養の結果から、TGF-betaシグナルが、乳癌幹細胞の維持に関わっていることが示唆された。NMuMG細胞でTGF-betaリガンド刺激を行うと、TGF-beta刺激に応答して発現が著しく上昇する転写因子としてZEB1とZEB2がある。MDA-MB-231細胞では転写因子ZEB1/2の発現が高い。これに着目し、MDA-MB-231細胞を用いて、抗ZEB1抗体によるChIPを検討している。これらより、動物実験では予定を変更する必要があったものの、細胞株を使ったin vitroの実験データから新たなことが示唆され、研究は伸展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、ヌードマウスの同所移植で得られた原発巣から癌細胞を単離し、実験に用いる予定であった。しかしながら、MDA-MB-231細胞の同所移植でのマウスへの生着が認められないため、現時点で、移植モデルをMDA-MB-231細胞株由来であり高骨転移株であるMDA-MB-231-D株を用いた乳癌骨転移モデルに変更した。このモデルでは、原発巣がないため、当初計画していた原発巣から癌細胞を単離しFACS解析や発現マイクロアレイ解析をすることができなくなった。しかしながら、乳癌の転移と乳癌幹細胞の関わりという視点から、研究を進めることにした。転移についてはin vivoイメージングによる継時的な評価を行う。また、新たに得られた知見から、癌幹細胞の維持にTGF-betaシグナルの関与が示唆された。このことから、TGF-betaシグナルの下流で誘導される転写因子として重要であるZEB1に着目して研究を進めることにした。さらに、当研究室で、ZEB1が転写レベルで制御している分子であるESRPについて着目することにした。ESRPはスプライシングに関わる因子である。ESRPは上皮系の細胞で発現している。TGF-betaによる上皮―間葉転換においては、TGF-betaによって誘導されたZEB1がESRPの発現を抑制するということがわかっている。ESRPについては、各種癌で予後との関わりが示唆されているが、癌幹細胞との関わりは報告がない。ESRPは上皮系の細胞で発現していることから、癌幹細胞では発現が低下していることが予想される。ESRPが癌幹細胞の維持に対し関与があるのかどうか、乳癌の癌幹細胞を標的とした治療も視野に入れ、乳癌幹細胞との関わりを詳細に検討していくことにした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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