2012 Fiscal Year Research-status Report
p53を制御する新規長鎖ノンコーディングRNAの機能解析
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24700975
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
神武 洋二郎 近畿大学, 工学部, 准教授 (90531963)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | p53 / 長鎖ノンコーディングRNA |
Research Abstract |
近年の大規模な哺乳類トランスクリプトーム解析の結果、膨大な数の長鎖ノンコーディングRNA(long noncoding RNA: lncRNA)が存在することが明らかとなったが、その機能は不明であった。しかし、ここ数年の申請者を含む複数のグループの研究によって、いくつかのlncRNAが細胞制御において重要な役割を担っていることが明らかとなり、脚光を浴びている。最近申請者は、網羅的解析によって同定した新規lncRNAの一つが、癌抑制遺伝子p53のタンパク質を安定化させる機能を持つことを見出した(POLOPと命名)。lncRNAがタンパク質安定性に寄与する例は初めてで、本研究では、POLOPによるp53タンパク質制御の作用マシナリーを解明し、さらにこの制御機構の破綻が癌化に関与するか等、POLOP発現の生理的意義を追求することを目的とした。 本年度の解析により、POLOPはp53のタンパク質を安定化する機能を持つ事が明らかとなった。しかし、POLOPはp53分解に関与する各種ユビキチンリガーゼの発現調節には関与しないことから、未知のp53タンパク質調節機構に関与する可能性が示唆された。さらに本年度の解析から、POLOPはアポトーシスを制御することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の解析により、POLOPのp53タンパク質調節機構の作用機序解明の突破口となるデータを得る事ができた。また、POLOPの細胞内生理機能を明らかとする事ができた。よって、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)癌細胞の増殖・浸潤・転移におけるPOLOPの機能の解析 ①POLOPはp53を正に制御することから、癌抑制因子としての機能を持つ可能性が考えられる。これを検証するため、癌細胞でPOLOPをノックダウンあるいは過剰発現し、機能解析を行う。p53遺伝子が正常であるヒト肺癌細胞A549及び骨肉腫細胞U2OSに、レトロウイルスベクター(過剰発現用;pBabe-puro, ノックダウン用; pSUPERretro_puro)を用いてPOLOPを過剰発現あるいはノックダウンさせ、細胞増殖速度、細胞周期への影響を検討する。さらにPOLOP過剰発現あるいはノックダウンによる癌形質の変化を、フォーカス形成率、ソフトアガーコロニー形成能、マトリジェルを用いた転移能、ヌードマウスにおける腫瘍形成能及び転移能、腫瘍摘出後の再発頻度(予後)の解析を行い検討する。 2)POLOPの標的遺伝子・タンパク質の網羅的同定 ①最近、一つのlncRNAが複数の標的遺伝子を持つことが報告された。従ってPOLOPもp53以外の標的を持つ可能性が考えられる。これを検証するため、POLOPの標的遺伝子・タンパク質を網羅的に探索する。POLOPを過剰発現あるいはノックダウンした細胞とコントロール細胞からmRNAとタンパク質を抽出し、DNAマイクロアレイ解析(Agilent Technologies)及び癌関連因子抗体アレイ解析(コスモバイオ)を行い、発現変動するものを網羅的に同定する。②同定した標的遺伝子を過剰発現あるいはノックダウンし、POLOPの下流として機能しているかを2)と同様に検討する。 3)個体レベルでのPOLOPの機能解析 4)POLOPによるp53タンパク質制御の臨床病理学的解析
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費が大きな割合を占める。消耗品のうち、ピペット、チューブ、培養ディッシュ類等のプラスチック消耗品は各種容量のものが必要である(5万円)。細胞培養用試薬は、培地5万円(約50 L分)、血清20万円(500 ml×10)を予定している。一般試薬には、各種抗体25万円、siRNAオリゴ20万円、Q-RT-PCRに必要な試薬20万円(プライマー代も含む)、各種キット65万円、トランスフェクション試薬5万円を予定している。本年度は、研究成果を学術論文に投稿するため、投稿料5万円を予定している。
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[Journal Article] The amelioration of renal damage in Skp2-deficient mice canceled by p27 Kip1 deficiency in Skp2-/- p27-/- mice2012
Author(s)
Suzuki S, Fukasawa H, Misaki T, Togawa A, Ohashi N, Kitagawa K, Kotake Y, Liu N, Niida H, Nakayama K, Nakayama KI, Yamamoto T and Kitagawa M.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7
Pages: e36249
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Skp2ノックアウトマウスで見られた腎障害の軽減はSkp2-p27ダブルノックアウトマウスで解除される
Author(s)
鈴木小由里,深澤洋敬,三崎太郎,戸川証,大橋温,北川恭子,神武洋二郎,Liu Ning,丹伊田浩行,山本龍夫,北川雅敏
Organizer
第35回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
福岡国際会議場・マリンメッセ福岡(福岡市)
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