2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞周期と協調した上皮極性の形成維持機構とその破綻に伴う発がん
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24700980
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 浩二 熊本大学, その他の研究科, 助教 (70457290)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞運動 / 前後極性 / MAP7ファミリー / 微小管動態 / Wnt5aシグナル |
Research Abstract |
細胞極性の形成・維持機構は、動物発生における組織や器官形成に必須であり、また、細胞極性の破綻は発がんやがんの悪性化における重要な要因となりうる。細胞極性の形成・維持には、細胞骨格(アクチンフィラメント・中間径フィラメント・微小管)による細胞の形態維持や細胞骨格を介した細胞内での物質輸送等の関与が知られているが、細胞極性の形成・維持における微小管動態制御機構の詳細は依然として不明な点が多い。 私共は、プロテオミクス解析により新規微小管結合蛋白質を網羅的に同定し、その機能解析により細胞極性の形成・維持における微小管動態制御機構を理解すべく研究を進めている。本研究では、微小管-アクチン骨格の相互作用が重要な役割を果たす、異なった細胞周期で観察されるふたつの細胞極性、「細胞運動時の前後極性(間期)」と「紡錘体軸の方向性(有糸分裂期)」に着目し、それぞれの細胞極性に関与する新規微小管結合蛋白質を同定すべく、新規微小管蛋白質をコードする遺伝子に対し、siRNAライブラリーを用いた表現型スクリーニングを実施した。表現型スクリーニングにより、細胞運動や紡錘体軸の制御に関わる候補遺伝子を見出し、今回は特に、「細胞運動時の前後極性(間期)」に関与する因子として、MAP7(Microtubule associated protein 7)ファミリーに属する蛋白質、Map7とそのパラログであるMap7D1について詳細な解析を行った。その結果、Map7とMap7D1は、細胞運動時において微小管-アクチン骨格との相互作用を制御するWnt5aシグナル経路の因子Dvl2と複合体を形成し、Wnt5aシグナル経路を介して細胞運動時における微小管-アクチン骨格の相互作用を制御する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施した表現型スクリーニングにより、「細胞運動時の前後極性(間期)」に関与する因子として、Map7とそのパラログであるMap7D1を、また、「紡錘体軸の方向性(有糸分裂期)」を制御する因子として、蛋白質X(未発表につき分子名は割愛)を同定することができた。さらに、細胞運動時の前後極性におけるMap7とMap7D1の分子機能を明らかにするべく、詳細な解析を行った結果、Map7とMap7D1が、細胞運動時において微小管-アクチン骨格との相互作用を制御するWnt5aシグナル経路の因子Dvl2と複合体を形成し、Wnt5aシグナル経路を介して細胞運動時における微小管-アクチン骨格の相互作用を制御する可能性を見出した。本研究成果の一部については、日本分子生物学会・年会等で学会発表を行った(学会発表の項参照)。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細胞運動時の前後極性におけるMap7とMap7D1の分子機能解析:Wnt5aシグナル経路におけるMap7とMap7D1の分子機能の詳細を以下の方法により確認する。 ①Map7とMap7D1がDvl2の上流もしくは下流で機能するか否かを、Map7/7D1ノックダウン細胞におけるWnt5aに依存したDvl2のリン酸化、及び、Dvl2の細胞内局在により確認する。②Dvl2と複合体を形成する微小管プラス端集積因子APCとMap7、Map7D1の複合体形成を免疫沈降法により確認する。 (2)上皮極性の形成におけるMap7とMap7D1の機能解析:イヌ腎臓尿細管上皮細胞MDCKIIを用いて、上皮極性の形成におけるMap7とMap7D1の機能を解析したところ、Map7/7D1ノックダウン細胞では、3次元培養下での嚢胞形成過程において上皮極性の異常が認められた。そこで、上皮極性の形成におけるMap7とMap7D1の機能の詳細を以下の方法により確認する。 ①嚢胞形成におけるMap7/Map7D1-Dvl2-APCの連関を明らかにするために、Dvl2ノックダウン細胞とAPCノックダウン細胞における嚢胞形成能を確認する。②嚢胞形成により極性化したMDCKII細胞におけるMap7、Map7D1、Dvl2、APCの細胞内局在を確認する。 (3)紡錘体軸の制御に関与する蛋白質Xの機能解析:紡錘体軸制御における蛋白質Xの分子機能を以下の方法により確認する。 ①免疫染色法により有糸分裂期における蛋白質Xの細胞内局在を確認する。②紡錘体の形態や星状糸の安定性をα-Tubulinの免疫染色により評価する。③紡錘体軸の制御に関与する既知の因子群との連関を明らかにするために、免疫染色法により有糸分裂期における因子群の細胞内局在を確認する(蛋白質Xの細胞内局在を指標に解析対象の因子を選択する)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では下記に示す消耗品が大量に必要となるため、次年度に繰り越す研究費は消耗品の購入に充てる。 ①哺乳類動物細胞を培養する際に使用する大量の牛胎児血清や培地、培養用器具、②タンパク質の発現やsiRNAによるノックダウンに使用するトランスフェクション用試薬、③ウエスタンブロットや免疫沈降法、免疫染色法といった生化学的及び細胞生物学的手法に必須である、抗体及び免疫沈降法に用いるビーズ等、④3次元培養に使用する細胞外基質ゲル、⑤siRNA等の核酸合成受託サービスの費用
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Research Products
(10 results)