2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700986
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
サンペトラ オルテア 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50571113)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 幹細胞 / グリオブラストーマ / 悪性脳腫瘍 |
Research Abstract |
グリオブラストーマにおける腫瘍形成能を規定する因子の同定を最終目標として本年度は以下の実験を行った。 まずInk4a/Arf -/-、H-RasV12過剰発現の脳腫瘍起源細胞よりsingle cell cloningを用いて樹立したクローンのフェノタイプを解析した。その結果、いずれのクローンも脳腫瘍幹細胞の性質を維持しながらも、その代謝経路には差異がみられることを見出した。グルコース消費量、乳酸及びATP産生量の計測より、エネルギー産生における使用代謝経路は、クローンAがより解糖系に傾いているのに対し、クローンBが酸化的リン酸化を主に用いていることを明らかにした。また、それぞれのクローンのメタボローム解析により、上記の違いを代謝産物レベルでも確認したと共に、クローンAがペントースリン酸経路を有意に使用することによって核酸を合成し、高い増殖能を維持していることがわかった。さらに、メタボローム解析よりどの腫瘍起源細胞も正常の神経幹細胞と異なる代謝経路を利用していることが明らかとなったため、その代謝の違いが治療のいい標的になりうると考え、以降代謝経路の解析を中心に行った。 それぞれのクローンのマイクロアレイ解析により、代謝経路に関連した酵素で遺伝子発現が有意に高いものを同定し、同定したものについてはタンパクレベルで発現確認を行った。その結果、クローンAでは解糖系の促進を制御するヘキソキナーゼII及びピルビン酸キナーゼM2アイソザイム(PKM2)が有意に上昇しており、またTCA回路を能動的に抑制しているピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ 1(PDK1)も上昇していることが明らかとなった。さらに、クローンAでは上記酵素の発現を制御する低酸素応答転写因子 HIF-1及びc-mycの発現も上昇していることが確認され、クローンにおいて代謝経路の主要な制御因子となっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではGBMにおける腫瘍形成規定因子を探索すると同時に、GBM起源細胞の特性の解析を行うことが最終目標としていましたが、本年度ではまず起源細胞の特性の解析により代謝経路の差異を明らかにし、腫瘍形成規定因子を探索する入り口を確定した。 また一年目の具体的目標であったInk4/ARF ノックアウト正常神経幹細胞と脳腫瘍起源細胞のクローンの遺伝子プロファイリング、蛋白レベルの発現解析、代謝分子の網羅的解析(メタボローム解析)が完遂でき、規定因子の絞込みに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では前年度同定した因子(代謝酵素及びそれらを制御する転写因子)を中心に、腫瘍組織レベルでの発現解析を行い、腫瘍形成群・腫瘍非形成群に特異的に発現している因子をさらに絞り込む。また、有力な候補分子・遺伝子の役割及び機能解析をマウスモデルで行った後、それらの因子を各クローンでノックダウン/過剰発現させ、腫瘍形成能を規定する因子を同定する。 具体的に、以下の手順で研究を推進する: まず、同定した複数の腫瘍形成能規定因子候補の発現を移植後早期の腫瘍塊で確認する。RT-PCR,ウエスターン・ブロット、組織切片の免疫染色を用いて、一次腫瘍で高発現を示すものを同定する。さらに、免疫染色及びレーザーマイクロダイセクションを用いて腫瘍内の高発現部位を評価し、起源細胞の局在について検討する。また、二次腫瘍についても同様な解析を行う。浮かび上がった有力な候補分子・遺伝子の役割及び機能解析をマウスモデルで行う。クローン細胞を各因子に対するRNAi及び抗体で処理し、マウス脳に移植を行い、腫瘍形成能を再評価する。また、フローサイトメトリーによるソーティングが可能な場合、Ras-NSCを陽性細胞、陰性細胞に分け、各グループをマウスの脳に移植し、腫瘍形成能を確認する。さらに、病理標本・髄液・血液サンプルの定性的・定量的解析を行い、同定した因子がバイオマーカーとして適しているかどうか検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主にマウスモデルを用いて解析を行うため、動物購入料・飼育量、実験用材料及び試薬の消耗品に研究費を使用する予定である。また、日本癌学会学術総会、日本脳神経外科学術総会、日本脳腫瘍学会などにおいて成果の学術発表を行い、また、専門分野における情報収集を行う予定であり、その旅費として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)