2012 Fiscal Year Research-status Report
キメラ抗原受容体発現T細胞を用いた養子免疫遺伝子療法における治療効果増強法の開発
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24700995
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
内堀 亮介 自治医科大学, 医学部, 助教 (20458285)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | キメラ抗原受容体 / 分子スイッチ |
Research Abstract |
キメラ抗原受容体が標的抗原と結合した際に生じる細胞活性化シグナルにより駆動するプロモーター(分子スイッチ)と、標的細胞へ遺伝子導入するためのレトロウイルスベクターを作製した。 ヒトIL-2プロモーター内に存在するNFATの結合領域(NFAT-RE)を4個、または6個連結し、その下流に同じくヒトIL-2のminimal promoterに連結したプロモーター(スイッチプロモーター)を作製した。[スイッチプロモーター]-[ZsGreen1]-[BGH pA]の順に配置したものを基本コンストラクトとした。さらに、一部の配列を除去したSV40 early polyAを2個連結したものをバックグランド低減配列(BR pA)としてプロモーターの上流に挿入し、これを改良型コンストラクトとした。これらのコンストラクトを、自己不活性化レトロウイルスベクターpQCXIXに、レトロウイルスゲノムの転写方向とは逆向きにサブクローニングした。シングルクローン化したCAR発現Jurkat細胞に、各分子スイッチコンストラクトを搭載した上記レトロウイルスベクターで遺伝子導入した。 遺伝子導入効率についてはコンストラクト間による差が認められず、何れにおいても単回の操作でほぼ全ての細胞に遺伝子導入することができた。NFAT-REを4個または6個連結した基本コンストラクト間の比較では、刺激後(TPA/Ionomycin)のZsGreen1の発現に大きな差は認められなかったが、4個連結の方が無刺激時におけるZsGreen1のバックグラウンドレベルの発現が低かった。改良型コンストラクトでは、刺激後の発現レベルを維持しつつ、無刺激時のバックグランドレベルの発現をさらに抑制することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画と実施状況は下記の通りである。 (1)分子スイッチプロモーターの作製、(2)分子スイッチ搭載型レトロウイルスベクターの作製、および(3)分子スイッチの機能比較(in vitro)については完了した。(4)分子スイッチの機能確認についは未実施である。 計画(1)(2)については、バックグラウンド低減配列を挿入することが可能となり、当初想定していた分子スイッチと比較して期待以上のものを作り上げることができた。これにより(3)についても、CARからの活性化シグナルに特異的な反応を示す結果を得ることが出来た。以上の点については当初の計画以上に進展していると考えている。しかし、(4)の項目については年度内に実施することが出来なかったため、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究実施計画は下記の通りである。 (1)分子スイッチの機能確認(in vivo) ヒト末梢血由来のリンパ球にCAR発現レトロウイルスベクターおよびswitch搭載型レトロウイルスベクターで遺伝子導入を行う。この遺伝導入リンパ球を担がんマウス(皮下腫瘍モデルを想定)に投与して、リンパ球の活性化がCARの標的細胞(腫瘍)が存在する部位でのみ生じていることを、in vivoイメージングで経時的に観察する。 (2)膜結合型IL-12を治療分子に用いた治療実験 単鎖型ヒトIL12のC末端にヒトCD8由来のヒンジおよび膜貫通領域を結合し、膜結合型IL-12遺伝子を作製する。これをwitch搭載型レトロウイルスベクターにサブクローニングしてCAR由来シグナルで発現誘導が起こるようにする。ルシフェラーゼを発現するRajiまたはDaudiをマウスの尾静脈に投与して全身転移モデルを作製し、この担がんマウスにswitch搭載型CAR発現T細胞を投与する。生体イメージング装置を用いて発光量を経時的に測定して抗腫瘍効果を判定する。投与するT細胞の量、回数、あるいは投与タイミングなどについても検討を行い、より効果的な治療プロトコールを確立する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品は既に整備されているため、研究経費は消耗品費が中心となる。 その内訳は、細胞培養に必要な試薬・器具、遺伝子導入に必要な試薬、動物実験に必要なマウスや解析用試薬などである。In vivoイメージング装置用の解析試薬(ルシフェリン)などは高価である。また、細胞培養実験が多く、プラスチック器具の使用頻度も高い。 その他、学術学会で研究成果を発表するための国内・外国旅費、論文発表のための経費などへの使用を計画している。
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