2012 Fiscal Year Research-status Report
肺がん脳転移に対する非ステロイド系抗炎症薬による免疫学的予防法の確立
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24700998
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グリオーマ / マイクロ RNA / がん免疫 |
Research Abstract |
がん治療において転移性脳病変が臨床上の大きな問題となっているにも関わらず、これらに対しては現在においても直達手術あるいは放射線治療が行われるのみである。しかしこれらの治療法の侵襲度・副作用は無視しえず、治療に関連して高頻度に神経症状が出現しうる。そこで本研究では、がん抗原ワクチンをベースとしたがん特異的免疫治療に NSAID を併用することで、転移性脳腫瘍に対する効果的な予防法の確立を試みる。今回申請する研究計画は、1) これまで十分注力されていなかった転移性脳腫瘍の予防を試みること、2) 疫学研究の結果を分子生物学的・免疫学的に検証すること、3) 世界で広く用いられ、近年再注目されている薬剤 NSAID を用いることで、速やかな臨床応用が期待できることを目的としている。その中で平成 24 年度はマイクロ RNA miR-146a の腫瘍形成および免疫抑制機構への影響について評価を試み、大変有意義な結果を得た。 平成 24 年度は野生型 C57B6J および同バックグラウンド B/T 細胞依存的 miR-146a 欠損マウスを入手し、SPF 環境下で系統維持した。次いで SB トランスポゾンおよびトランスポーズ型がん遺伝子 (NRas・shP53・EgfrvIII) をコードするプラスミドを生後 0-2 日 の新生児マウス脳室内に注入し、腫瘍形成を確認した。平成 24 年度はこれらの脳腫瘍組織の解析を主として行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型 C57B6J および同バックグラウンド B/T 細胞依存的 miR-146a 欠損マウスを入手し、SPF 環境下で系統維持した。Sleeping Beauty (SB) トランスポゾン誘導型マウスグリオーマモデルの作製 SB トランスポゾンおよびトランスポーズ型がん遺伝子 (NRas・shP53・EgfrvIII) をコードするプラスミドを生後 0-2 日 の新生児マウス脳室内に注入した。生体遺伝子導入には InVivo Jet-PEI を用いた。miR-146a 欠損マウスにおいても SB トランスポゾン誘導型グリオーマは誘導された。これらをルミノイメージで測定した 。腫瘍増殖速度は個体によってさまざまであったが、はプラスミド導入後 40 日前後で可視化されるようになり、100 日以降に全マウスにて致死的サイズにまで増殖した。一部の腫瘍組織は以後免疫学的評価に用いた。グリオーマ担がん状態の miR-146a 欠損マウスは野生型マウスと同条件の野生型マウスに比し著明に平均生存日数が低かった。また NSAID 継続投与により miR-146a の生存率延長がみられた。以上の結果より、脳腫瘍形成初期に miR-146a が NSAID 感受性に影響を及ぼしていることが示唆された。 マウス実験に加え、肺がん患者から臨床検体 (末梢血、原発組織片、脳転移巣組織片) を入手し、COX-2 および PGE2 発現量を定量的リアルタイム PCR あるいは免疫組織染色による評価を開始した。こちらの結果は現在臨床経過をモニターしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
愛知県がんセンターの臨床データベース HERPACC (Hospital-based Epidemiologic Research Program at Aichi Cancer Center) を解析し、NSAID服用歴、COX-2 関連 SNP、および転移性脳腫瘍発生率との関連についての評価を先日より開始した。また同時に肺がん患者から臨床検体 (末梢血、原発組織片、脳転移巣組織片) の入手も開始し、COX-2 および PGE2 発現量を定量的リアルタイム PCR あるいは免疫組織染色にて評価する予定である。同様に、培養肺がん幹細胞株に生理学的濃度の NSAID を投与し、同様のサイトカイン測定を行い、COX-2 阻害によるがん微小環境の免疫学的変化を in vivo/in vitro に評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下のものを購入予定である。 - マウス脳定位手術用フレーム (120 万円) - マルチプレックスアッセイ用プローブ (100 万円) - 単色フローサイトメーター (90 万円) - 培養用試薬 (30 万円)
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Research Products
(3 results)