2012 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌臨床検体におけるレチノイン酸標的遺伝子の発現解析
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24701006
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
神吉 けい太 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10516876)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / レチノイン酸 / レチノイドシグナル |
Research Abstract |
本応募課題は、我々が独自に選び出した26種類のレチノイン酸(RA)標的遺伝子について、ヒト肝細胞癌臨床検体における発現解析を行い、肝細胞癌病態との関連や臨床病理学的意義を調べることで、肝細胞癌の発生・進展に関連する遺伝子を同定することを目的としている。 24年度においては、京都大学病院、鳥取大学病院より倫理委員会の承認を得てヒト肝細胞癌切除検体、またはそのRNAサンプル、および臨床データの提供を受けた。このうち171例の癌部・非癌部を用いてRNA抽出、cDNA作製、定量的PCR解析を行い、RA応答性遺伝子の発現解析を行った。解析値を臨床データとあわせたデータベースを作成し、統計ソフトを用いて生存期間などの臨床病理学的項目とあわせて統計学的解析を行った。単変量、多変量解析の結果、OTUD7B遺伝子の癌部における発現が患者の生存期間に影響を与える独立変数であることが示され、OTUD7Bの発現低下は予後不良と有意に相関していた。肝癌細胞株を用いたin vitroでの機能解析により、OTUD7BはNF-kBシグナルの抑制制御に働いていることが示された。siRNAによるOTUD7Bの発現抑制はNF-kBシグナルを促進し肝癌細胞の生存率を高め、反対にアデノウイルスによるOTUD7Bの強制発現はNF-kBシグナルを抑制し、肝癌細胞に細胞死を誘導することで生存率を低下させた。これらの結果はOTUD7BがRAの抗腫瘍効果の実行因子のひとつであり、肝細胞癌の治療標的分子としての応用の可能性を示唆した。 以上の成果は、学術論文としてJounal of Hepatology誌に投稿し、掲載受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では24年度において肝細胞癌臨床サンプルを収集し、mRNA抽出、cDNA合成、定量的PCR法による遺伝子発現解析を行うことを目標としていた。一部の臨床サンプルがtotal RNAの状態で入手できたこと等から、遺伝子発現解析が速やかに完了し 、臨床データと合わせたデータベースの作成および統計解析に移行することができた。さらに肝細胞癌患者の生存予後と関連するOTUD7B遺伝子を見出すことに成功し、in vitro実験系において強制発現系、発現抑制系を確立し、その機能解析も行うことができた。さらにこの研究成果を学術論文として査読付き学術雑誌に投稿し、現時点までに掲載受理されている。従って当初の計画以上の成果が上がっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究内容としては、26遺伝子の遺伝子発現解析の結果を受け、興味深い遺伝子について臨床検体の免疫組織化学によりタンパク質発現を解析することを目標にしている。研究代表者は肝細胞癌臨床検体の遺伝子発現解析の結果から、癌部で有意に発現変化する遺伝子を複数見出している。また生存期間との関連を示す遺伝子も複数見出している。この中から、レチノイン酸シグナルによって顕著に発現調節される遺伝子を選び出し、100例以上の臨床検体の免疫組織化学解析を行うことによって、タンパクレベルでの発現と肝細胞癌との病態の関わりについて検討する予定である。また興味深い遺伝子については24年度と同様に、肝癌細胞株を用いたin vitro系により機能解析を進めることを予定している。 またレチノイン酸シグナルと肝細胞癌との関わりをより詳しく調べるため、当初の26遺伝子のほか、レチノイン酸シグナルの転写調節因子や、レチノイン酸シグナル応答性のNon-coding RNA(miRNA等)、肝癌幹細胞マーカー分子等の発現、機能解析も含めて研究を展開していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度においては、組織切片作成、免疫組織化学を主に行う予定である。そのため、おもに一次抗体や二次抗体、検出用試薬の購入を予定している。また、遺伝子の機能解析に必要な細胞培養関連試薬、強制発現、発現抑制のための発現プラスミド、siRNA、遺伝子導入試薬なども必要に応じて購入する。旅費、成果発表に係る費用等は24年度と同様に使用予定である。 また次年度使用額として1,101,834円が発生したが、これは肝臓臨床検体がRNAで入手でき、RNA抽出の費用が削減できたこと、384穴リアルタイムPCRの利用により効率的にサンプル測定が行えたこと、試薬のバルク購入等により費用が抑えられたこと、抗体等の免疫染色関連試薬の購入を次年度に持ち越したこと等により発生した。これらは当初の予定通り25年度において免疫染色に必要な抗体試薬等の購入に充てる。またレチノイン酸シグナルと肝細胞癌との関わりをより詳しく調べるため、当初の26遺伝子のほか、レチノイン酸シグナルの転写調節因子や、レチノイン酸シグナル応答性のNon-coding RNA(miRNA等)、肝癌幹細胞マーカー分子等の発現、機能解析も含めて研究を展開していく予定であり、それらの発現解析、機能解析に必要な試薬、消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)