2012 Fiscal Year Research-status Report
microRNAを高効率に発現するVA欠失型アデノウイルスベクターの開発
Project/Area Number |
24701021
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 小貴 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80451871)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | アデノウイルスベクター |
Research Abstract |
microRNA (miRNA)はsmall non-cording RNAで、動物細胞における全タンパク質の約30%の発現制御に関わっているとされており、基礎研究のみならずがん疾患のマーカーや治療のターゲットとしても注目されている。miRNAの機能解析においてはRNAを細胞へ直接遺伝子導入する方法が簡便であるが、本研究ではより低コストで定量的な方法としてアデノウイルスベクター(AdV)によりmiRNAをはじめとするsmall non-coding RNAの高効率発現系を確立することが最終目的である。 AdVは様々な細胞種へ高効率に遺伝子導入が可能であるが、実はウイルスがコードしているsmall RNAであるVA RNAs (VA) は発現しており、近年VAがmiRNAとして機能していることも明らかとなった。そのためAdVを用いてmiRNAを発現するとVAにより本来のmiRNA機能がかく乱される可能性が高いと考え、VA欠失AdVの作製を進めている。 VA欠失AdVの力価は極めて低く従来法での作製は困難であり、VAをtransに供給する必要があるため、既にVA発現細胞株の樹立化を行っており、平成24年度はまず複数樹立化した細胞株の評価を行った。VAに特異的なqPCR用primerの設計に成功したため、各々の細胞株のVA発現量を測定した結果、VAを非常に高度に発現する細胞株の作製は困難であることが明らかになった。これはVAが細胞へ何らかの影響を及ぼしているためと考えられたが、VA発現量が多い細胞株を用いることで、従来のVA保持型AdVと比較して生成効率は劣るものの、VA欠失AdV作製に成功した。また、目的遺伝子発現量は従来のAdVと変わらず高発現していたことからVA欠失が遺伝子発現に影響を与えないことが確認されたため、今後はVA欠失AdVにmiRNA発現単位を挿入していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はVA欠失アデノウイルスベクター(AdV)作製に必要な細胞株の検討を行うために2種類のVA RNA (VAI, VAII)に特異的なreal-time PCR用primer/probeの作製に成功したため、予定通り細胞株の解析を終了した。その過程で、VAの高発現細胞株の樹立が困難であることを見いだしたが、得られた細胞株のうちVA発現量の高い細胞株を用いることでVA欠失AdV作製に成功した。 また、作製した複数のVA欠失AdVを用いた発現解析を行った結果、VA欠失AdVの目的遺伝子発現量は従来型と同等であることを確認していることから、VAを欠失しても発現への影響は無く、AdVとして十分に機能すると考えられた。現在はmiRNA発現AdV作製用コスミドDNAの構築を進めている。 以上より、本研究は予定していた通りおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までにVA RNA (VA)欠失アデノウイルスベクター(AdV)の作製に成功しているため、今後はVA欠失microRNA (miRNA)発現AdVを複数作製し、従来型AdVと細胞内での目的miRNA発現量の比較、定量を行っていく。また、導入ベクター量とmiRNA量の定量的解析、発現miRNAによる遺伝子制御を比較定量することで、本研究で作製したVA欠失AdVがmiRNA発現に優れているかの評価を進めていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の解析はmiRNA量を測定するためのqPCR用試薬やDNA/RNA抽出キットが必要である。VA欠失AdVの作製には一般的な遺伝子工学用試薬、プラスチック製品及び細胞培養用試薬が必要である。また、in vivoでのmiRNA発現VA欠失ベクター評価のためのマウスの購入も予定している。 更に本研究の成果を学会等で発表するための旅費も必要である。
|
Research Products
(9 results)