2012 Fiscal Year Research-status Report
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24701036
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
田中 裕子 東京医科大学, 医学部, 助教 (70449130)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | sphingosine1phosphate / multiple myeloma |
Research Abstract |
脂質メディエーターであるsphingosine1-phosphate(S1P)は、がん細胞に関しては、増殖や転移などとの関連が示唆されている。しかし、多発性骨髄腫におけるS1Pの動態、役割に関しては不明な点が多いため、本研究では骨髄腫の病勢進展や増殖との関わりを調べていく。本年度は、S1Pのバイオマーカーとしての意義を検証するため、市販されているELISAキットを用いて骨髄腫患者や骨髄腫の前段階とされる意義不明のM蛋白血症患者でのS1Pを測定し健常者との比較を行った。その結果正常検体と比較し骨髄腫患者のS1P血中濃度が有意に低下していることが判明した。また骨髄腫の病期が進展した例では初期の症例と比べS1P量が有意に低下した。S1Pが新たな骨髄腫の病勢進展や予後因子のマーカーとなり得るか今後は症例を増やし検討していく。 一方、骨髄腫細胞株を用いたS1Pの動態に関する研究も並行している。骨髄腫細胞株のMM1R、MM1S、RPMI8826を購入し、血清での測定と同じキットを使用し細胞株上清などのS1P量を測定することで、細胞からの分泌の有無などを現在検証中である。また骨髄の間質細胞にてS1Pを測定し骨髄環境の中でのS1Pと骨髄腫細胞の関わりを考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ELISAによるS1P測定では、患者検体収集に関する研究の承認を得るための倫理委員会への手続きにおいて、不慮の事務的な問題が発生したため今年度は充分な検体の収集ができず、S1Pのバイオマーカーとしての意義を充分に検証するにはいたらなかった。 またS1Pの測定が実験ごとでの変化が大きく、同一検体で複数回の測定が必要なためデータの解析などが進まず結果の考察などに時間を要した。これは細胞株でも同様で、細胞株のS1P濃度のばらつきが大きく十分に実験が遂行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
S1Pのバイオマーカーとしての意義を確立するため、今年度は症例数を増やしS1Pが骨髄腫患者の進行や予後などのマーカーとなり得るか、既存の予後因子(染色体や他の血液データ)と比較してその有用性を検証していく方針である。 また、骨髄腫細胞株におけるS1Pの動態やその役割を検証していく。具体的には、骨髄細胞との関わりや、他の細胞増殖に関するシグナル伝達系とのクロストークについて研究する。また現在開発中のS1P受容体の阻害剤やS1Pの合成に関わるsphingosine kinase(SK)阻害剤なども用い、骨髄腫細胞の増殖を抑制する効果があるかなどを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
患者検体のS1P測定のためキットを購入する。 細胞株を用いた実験では、骨髄腫細胞株を追加で購入しS1Pの定量や発現を検証していく。またSKやS1P受容体の阻害薬などを調達し、腫瘍細胞への抗腫瘍効果などを検証する。更に前年度の研究成果を国内外の学会で発表する予定である。
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