2012 Fiscal Year Research-status Report
がん研究の多角的展開における既存人体試料の利活用に関する法制度研究
Project/Area Number |
24701040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 悠輔 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30378658)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん研究 / 既存試料 / 研究倫理 / 法制度 |
Research Abstract |
初年度にあたる平成23年度の目標は、既存試料の再利用・転用に関する北米・欧州圏の法制度を整理し、関連する法制度のリストおよび内容骨子の比較表を作成することにあった。各国の立法資料などから情報を収集し、この領域に関する立法等の作業の動向を分析した。特別な法規定を持つ場合が中心ではあるが、主要な制度についてのリストを作成し、次年度以降の作業の土台とする見通しが立った。なお、この領域における議論は90年代から2000年代に一つのピークを見たが、現在、各国のレポジトリーの設置に向けた機運が一段落し、これらをインフラとして研究活動への活用のあり方へと議論の重点が移ってきたこと、またこれらの連携や合理化に関する問題点への関心が高まっていること、この間の技術的環境の変化やこれがもたらした新たな問題への対応が迫られていることなどが全体的な所見であり、こうした背景が各国における議論の展開、および一部の欧州諸国に見られるような法改正作業を支えていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、全ゲノムシークエンスの影響が提起する問題点や国境を越えた試料のやり取りに関する点を中心として、北米・欧州圏における既存試料の再利用・転用に関する制度を把握する作業を主に行った。なお欧州については、議論の中心である西欧や北欧が検討の中心に位置づけられた。当初の計画書にあるとおり、おおむね作業は順調に進んでいると考える。採用した作業の手法は、主に文献研究であり、医事法・研究政策関連の国際雑誌、主要医学雑誌、各国の立法府や行政府の議論、主要国際プロジェクトの情報媒体やウェブサイトなどを通じて、既存試料の利用についての国際規範・各国の法制度の再編、およびこれらが研究活動に及ぼしている影響についての情報を収集することができた。また、あわせて関連する法制度や検討すべき運営ポリシーのリストと内容骨子の比較表を作成するものであり、おおむね達成することができた。いずれも次年度以降の活動の基礎作業であり、状況を踏まえて逐次改良を加えていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目に作成したリストを踏まえ、またこれを更新しつつ、法制度の内容分析を重点的に行う。また、この年度では、国内外の有識者へのヒアリングや現地視察を行い、制度と現場との間で生じる諸問題についての検討を進める(検討課題としては、懸念の大きい問題として、全ゲノム情報管理や機関外への持ち出し、提供者・患者への説明、倫理審査体制の検討を予定している)。手法としては、資料を内容分析するために、各国の法制度再編における「試料保管の長期化に特有の問題の検討」「本人の同意範囲を越えうる問題の検討」を軸に、論点を整理する。また主要プロジェクトに関する運営ポリシー・運営手順書(SOP)を整理し、その構成や運営手順、同意手続きや倫理審査に関するうち、特に既存試料に関する概念や実務規定を抽出し、比較検討する。成果は随時公表するほか、特に運営手順書やヒアリングから得られたもののうち、実用性の高いものについては、随時情報発信を行う予定である。国内外の有識者との情報や意見の交換を踏まえて作業の妥当性を点検するほか、得られた成果について適宜公表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主たる調査の手法が文献、および対面での意見・情報の交換であることから、次年度も引き続き、高額の機器や設備を購入する予定はない。一方、2年目の次年度は、初年度の成果を活用しつつ、調査や成果の暫定的な報告などの作業が予定されており、これらの経費が計上される。国内外の有識者へのヒアリングや現地視察を行い、制度と現場との間で生じる諸問題についての検討を進める観点から、国内外の必要分の旅費を計上する。学会報告の機会との調整や、特に双方の予定の調整にもよって回数は若干前後するが、それぞれ1~2回程度の機会があるものとして予算を計上している。英論文の校正や非英語圏の作業に関連して、翻訳・校正の経費を計上する。これらの経費の執行は、作業の進捗を踏まえつつ、2~数回分の機会があるものと考えている。なお、前年度に引き続き、文献収集を図る観点から、文献の入手に関連した経費を計上している(10万円程度)。これらを総合して、おおむね予算額の執行を予定している。
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Research Products
(4 results)