2013 Fiscal Year Research-status Report
生存時間解析における樹木構造接近法によるがん患者の予後予測モデルの検討
Project/Area Number |
24701042
|
Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses |
Principal Investigator |
伊藤 ゆり 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60585305)
|
Keywords | 予後予測モデル / がん / 生存率 / 樹木構造接近法 / がん登録 |
Research Abstract |
本研究はがん患者のがん登録資料や各種データベースを用いて、がん患者の予後予測モデルを作成することを目的としている。2年目は、初年度に共同研究者が開発した分析ツールを用い、データベースから洗い出していた予後因子の候補変数を用いて、樹木構造接近法を適用し、がん患者の予後を分類する樹木構造を推定した。 院内がん登録と生活習慣アンケートをリンケージしたデータベースを用いて非小細胞肺がん患者について分析した。2004-2008年に診断された患者475例を3-5年追跡したデータを分析したところ、診断時の臨床進行度、喫煙の有無、がんの組織型(扁平上皮がん)で5群に分類された。症例数および死亡イベント数が少なかったため、10年以上追跡されている1993-2001年に診断された700例の非小細胞肺がんのデータについても同様の分析を行った。診断時臨床進行度、組織型、治癒切除の有無、補助療法の有無などの項目で分岐し、7群に分類された。上記二つの分析結果を日本癌学会において報告した。また、共同研究者が開発した方法論の例示として国際学会(International Society of Clinical Biostatistics)において報告された。 しかし、院内がん登録の項目は限られているため、臨床上役立つ予後予測モデルを推定するためにも、診療科データベースとリンケージする必要があると考え、倫理審査委員会に申請・承諾の上、データを入手し、より臨床応用可能な樹木構造を推定すべく、分析を開始した。また、膀胱がん再発データや、進行大腸がんのデータを用いた予後予測モデルの構築にも取り組んだ。 実際の患者情報に基づき、予後を予測するモデルを視覚的にわかりやすい樹木構造として提示することは、がん医療従事者のみならず、がん患者やその家族にも有用な情報となり得る。引き続き、利用可能なデータを最大限に活用し、現実に合致した予後予測モデルの推定を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に確立した方法論及び分析ツールを用い、2年目は実際に樹木構造接近法を適用し、非小細胞肺がん患者の予後を予測する樹木構造モデルを構築した。生活習慣の情報をリンケージしたデータベース(2004-2008年診断患者475例)に基づく予後予測モデルにおいては、進行度が限局(早期がん)の患者において喫煙の有無が予後を左右する因子として抽出されたことは興味深い。また、喫煙者においても、主に喫煙が原因とされている扁平上皮がんの患者においては、それ以外の患者と比べ、早期であっても予後が悪いことが示唆された。また、より長期間追跡したデータ(1991-2001年診断患者700例)に基づく樹木構造モデルにおいては、臨床進行度、がんの組織型に加え、治療情報(治癒的切除や補助療法の有無)も予後を分類する項目として選択された。この樹木モデルでは生存率が大きく異なる7群に分類された。上記研究結果を国内学会(日本癌学会)や国際学会(ISCB)において、結果を報告し、臨床医、疫学者、生物統計家からの有用な助言を得た。方法論の論文を共同研究者が執筆中であり、本研究で推定した非小細胞肺がんにおける予後予測の樹木構造を例示として提供した。 2年目までの時点で利用可能であったデータベースにおいては項目の種類やイベント数などの限界があり、臨床に役立つ予後予測モデルにはまだ至っていない。そのため、呼吸器外科データベースの利用を倫理審査委員会に申請し、リンケージが終了している。また、肺がん以外にも、膀胱がんの再発データや進行大腸がんのデータベースの利用も可能な状況となった。 このように研究をおおむね順調に達成できているのは、統計の専門家および臨床医とのコミュニケーションを通し、直面した課題にその都度対応しているためであると考える。本研究の主旨を理解し、データ利用や結果の解釈など様々な協力をしてくれる共同研究者の支援によるものといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
臨床上、有用な予後予測モデルを作成するために、院内がん登録資料だけでは不十分であったため、呼吸器外科の診療科データベースとのリンケージを行った。このデータベースを用い、より現実に即した有用な予後予測モデルを作成する。その際には、実際に患者の治療を行っている臨床医の意見を予後予測モデルに反映する予定である。また、作成した予後予測モデルの外的妥当性に関する検討も必要であるため、外部データの利用に関しての方策を検討したい。 また、非小細胞肺がんだけでなく、膀胱がん再発や、進行大腸がんデータへの適用も順次進め、本研究手法の有用性を報告する予定である。異なるタイプのデータに適用することで、方法論上の課題も生じてくると思われる。生存時間解析における樹木構造接近法(Survival CART)の実データへの適用結果に関する報告はまだあまり多くない。様々な部位のデータへ適用し、臨床上有用な予後予測モデルが完成した折には、専門領域の国際学術誌に発表し、方法論の活用事例として報告したい。本研究を通じて、Survival CARTの適用の実際について、様々な統計的あるいはデータ適用上の問題点などを精査し、今後の活用事例に役立つように研究成果をまとめていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助等の人件費や論文の発行費用や英文校正費用を平成25年度に見積もっていたが、研究補助は使用せず、また、論文発行は次年度に持ち越すこととなったため。 平成26年度には論文を2本程度投稿するため、英文校正費用に数万円、投稿料、発行料に10万~30万円程度かかる予定である(投稿先の雑誌により異なる)。
|
Research Products
(17 results)