2012 Fiscal Year Research-status Report
溶存酸素の安定同位体比解析による懸濁粒子内部での新しい酸素消費過程の解明
Project/Area Number |
24710002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 典子 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (60431772)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 溶存酸素 / 酸素消費プロセス / 懸濁粒子 |
Research Abstract |
「海水中の懸濁粒子内部で同位体分別が非常に小さい、もしくは分別を伴わない酸素消費プロセスが存在する」という新たな酸素消費プロセスについての仮説を検証するために、本研究では海水中の溶存酸素濃度とその安定同位体比(δ18O)の関係から得られる同位体分別係数と、懸濁粒子の粒子分析から得られる粒子物理化学特性との関係を明らかにすることを目的とした。3年計画の初年度として、海水中の溶存酸素安定同位体比の高感度分析手法の確立、および大型の懸濁粒子の生成とその海水添加実験の2点を主として実施した。溶存酸素安定同位体比の高感度分析手法の確立のために、バブリング法による海水中溶存ガス抽出ラインを製作し、これを現有の同位体比質量分析計(Thermo, DELTA Plus XP)と連結した。試料導入量、キャリヤーガスの流量等を調節し、酸素安定同位体比についての分析条件を最適化した。現在の測定精度はδ18Oについて0.12‰である。次に懸濁粒子の粒径および粒子数、体積や化学組成などの物理化学的特性と溶存酸素の酸素消費プロセスにおける同位体分別係数の変化との関係の定量化に取り組んだ。大型の懸濁粒子を生成するために、実験室でローリングタンクを用いて人工的に粒子の凝集を生じさせる実験を行ったが、大型の懸濁粒子は空隙率の高い非結晶の不定形であり且つ構造的に非常に脆いため生成することが困難であった。そこでまずは懸濁粒子が多く存在する沿岸海水について、懸濁粒子の粒子分析と溶存酸素濃度とその安定同位体比(δ18O)の測定を行うために、近場である東京湾の沿岸海水試料の採取を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海水中の溶存酸素安定同位体比の高感度分析手法の確立については、バブリング法による海水中溶存ガス抽出ラインを製作し、同位体比質量分析計(Thermo, DELTA Plus XP)への試料導入量、キャリヤーガスの流量等を調節して分析条件を最適化することで、測定精度をδ18O=0.12‰まで達成させることができた。しかし実験室実験による大型の懸濁粒子の生成は当初計画したよりも難しく、生成実験の方法を再検討行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に採取した東京湾沿岸海水を用いて、海水中の溶存酸素の濃度と安定同位体比の変化を測定する。これにより求められる同位体分別係数の変化と、同海水試料についての懸濁粒子の粒径および粒子数、体積や化学組成などの物理化学的特性の分析との関係について定量化を行う。海水中の懸濁粒子は、接眼マイクロメーター顕微鏡を用いて粒子径を測定し、海水を濾過して捕集を行い、粒状有機体炭素・窒素を高温燃焼酸化法により、無機物質(ケイ酸塩・炭酸Ca・鉱物組成)についてはX線回折分析により、重量を乾燥重量法により計測する。再度実験室で懸濁粒子の生成実験を行い、生成した懸濁粒子の海水添加を行い、その系内の溶存酸素濃度およびδ18Oの時間変化を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海水中の酸素濃度およびその安定同位体比(δ18O)と、懸濁粒子の粒径別粒子数と体積、化学組成などについて計測する。これに関して必要となる海水試料のサンプル瓶等の実験用消耗品、試薬類、一般消耗品、同位体質量分析計(IR-MS)の稼働に必要なキャリヤーガスおよび標準ガス等実験用消耗品に研究費を使用する。また溶存ガスをIR-MSに導入する前に試料を生成するために必要な前処理ラインは、海水を導入するために劣化が激しいため、この補修に関わる各種パーツ類が必要であるため、これに研究費を使用する。国内外における成果報告の費用として旅費と、外国語論文の校閲および投稿料を必要経費として計画している。
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