2013 Fiscal Year Research-status Report
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24710004
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
橋濱 史典 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (80535807)
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Keywords | ヒ酸塩 / リン酸塩 / 西部北太平洋 / 亜熱帯海域 / 高感度分析 |
Research Abstract |
亜熱帯外洋域表層にはリン酸塩が極度に枯渇した領域が存在する。リン酸塩枯渇域ではヒ酸塩濃度がリン酸塩濃度よりも高くなる場合があり、一般的に毒性を有するヒ酸塩が微生物の同化を介して生物生産に影響を及ぼしている可能性が推察される。本研究では、西部北太平洋に広がるリン酸塩大規模枯渇域に着目し、物質循環におけるヒ酸塩の役割を高感度分析法を導入した現場観測により明らかにすることを目的とする。 平成25年度は、前年度得られた現場観測データの解析を中心に行い、ヒ酸塩添加に対する微生物群集の応答機構について明らかにした。太平洋亜熱帯外洋域における表層混合層内のヒ酸塩およびリン酸塩の濃度分布を解析したところ、リン酸塩が<10nMに枯渇していた西部北太平洋においてヒ酸塩:リン酸塩比が5を上回る領域が認められた。太平洋亜熱帯外洋域において空間分布の観測と併せて実施したヒ酸塩添加培養実験のデータを解析したところ、大部分の海域で100nMのヒ酸塩およびリン酸塩添加に対する正味のヒ素およびリン同化は認められなかった。一方、夏季の西部北太平洋でのみリン酸塩添加に応答した正味のリン同化が認められた。夏季の西部北太平洋では微生物群集がリン制限を受けており、ヒ酸塩取り込みによる生物生産への影響が推察されたが、ヒ酸塩添加区において正味のヒ素同化および微生物現存量の増減は認められなかった。以上より、太平洋亜熱帯外洋域における微生物群集はヒ酸塩の毒性に対して強い耐性を持つことおよびヒ酸塩を利用して増殖するわけではないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、高感度分析法の導入により得られた現場観測データを解析し、ヒ酸塩添加に対する微生物群集の応答機構を明らかにすることが主目的であった。実際に太平洋亜熱帯外洋域で実施したヒ酸塩添加培養実験の解析結果から、微生物群集はヒ酸塩の毒性に対して強い耐性を持つことおよびヒ酸塩を利用して増殖するわけではないことが明らかとなった。これらの解析に加え、西部南太平洋亜熱帯外洋域においてヒ酸塩の空間分布およびヒ酸塩添加培養実験に関する現場観測も実施した。以上より、当初の計画通り、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、夏季の西部北太平洋亜熱帯域において現場観測を実施し、ヒ酸塩の空間分布およびヒ酸塩添加に対する微生物群集の応答機構について明らかにする。特に、現場でのヒ酸塩添加培養実験に重点を置き、異なるヒ酸塩濃度添加に対するヒ素同化、有機物生産量、微生物群集組成の変化について解析し、物質循環におけるヒ酸塩の役割について総合的に明らかにする。得られる成果は、学会発表および論文執筆を行い随時公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を予定していた物品が安価で入手できたため少額余った。 次年度の助成金と併せて有効に使用する予定である。
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